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第2章 第7話(第53話) ~宴 会~

短い夏休み期間中に少しだけですが書き溜めましたので、新しい話をアップさせていただきます。


今回のポイントは、宴会で主人公がイベントリから取り出した〝原木〟でしょうか。


自分も昔この原木をパレタの方でしたが購入したことがありました。

最初は「美味しい、美味しい」と喜びながら食べていたのですが、いつまでたっても終わりが見えない大きな肉塊に、途中で嫌になったのを覚えています(汗笑。


あれは独り者や少人数家族で食べるものじゃないとつくづく感じました。

スーパーでスライスされているものを買った方が精神衛生的にも良いと思ってしまったのは、はたしてじぶんだけでしょうか・・・。


ちなみに原木は普通に部屋の中に置いていても、保管手順さえ守ればかなりの長期保存がききます。

(もともとは保存食ですからね)


お値段は、パレタで1本1万円台~2万円台。ハモンだと4万円前後くらいでしょうか。

今の時代はネットで手軽に専用台や専用ナイフとセットで購入することができます。

(このお話の主人公もネットで購入したことになっています)

興味がわいた人は、ぜひ買ってみてください。


ただし・・・

数カ月にわたって延々と生ハムを食い続ける事になると思いますが・・・(汗。

 この日の晩は、丘の上で野営をしながらの宴会となった。



 そろそろ空が暗闇に包まれようとしていた午後7時半ごろ、大勢の護衛を引き連れた商隊が街道を通り、野営を準備をしていた自分らを見つけて近づいてきた。

 ちなみに今の季節は夜が遅い時期らしく、空が完全に暗くなるのは午後8時くらいらしい。

 商隊はこちらがゴブリンやオークの討伐に派遣された騎士団の部隊だと知ると、一緒に野営させてほしい提案してきたので、宴会にはその商隊のメンバーも混ざっていた。


 彼らはメイベル商会が手配していた買い付け品の輸送班で、東の村々からの特産物などをロイドまで運ぶ途中だったらしい。

 移動途中の村で、ミロス平原にゴブリンやオークが集結している噂を聞いて護衛の冒険者らを増強してここまで移動してきたらしい。

 が・・・騎士団の人から集結していた魔物が600匹近い群れになっていたことを聞き、商隊の人たちはかなり青くなっていた。

 まぁ、大勢の護衛・・・とはいっても、20人にも満たない冒険者だ。

 しかも各々の装備は騎士団のものに比べかなり劣っている。

 そんな戦力であの大群に遭遇してしまったら、あっという間に全滅してしまっただろう。


 メイベル商会の社員でもある商隊のリーダと話をしたところ、運んでいた積み荷の中には酒や燻製肉などといった食料があった。なので、その一部(といっても結構な量なのだが)を俺が買い取って、宴会の食材として提供することにした。


 食材の買い付けは、自分がオーナーのメイベルさんから貰った紹介状があったことも幸いし、スムーズに進めることができた。

 この紹介状はロイドの店での買い物時にお店の人に渡そうとしたのだが「これはこの店だけでなく、王国中のメイベル商会でカオル様との優遇取引をお約束した社長直筆の書状です。なのでこのままお持ちください」と言われてそのまま持ってきたものだった。

 まさかこんなにも早く役立つことになろうとは自分でも予想していなかった。


 ただ、あまりメイベルさんに借りを作ると、あとで厄介なお願い事をされそうな予感して怖い。



 俺はレガシィの横にキャンプ用のアウトドアテーブルを組み立てると、その上にイベントリから取り出した大きな木箱を〝ドスン〟と置いた。


「おにいちゃん、この箱は?」


 俺のすぐ横で夕飯の準備を手伝っていたアリシアが木箱を見て興味深げに訪ねてきた。

 その隣ではミャウが木箱に顔を近づけて、クンクンと匂いを嗅いでいる。

 こらこら、はしたないぞ。


「あんちゃん、なんかお肉のイイ匂いがするにゃっ!」


 すごいなネコ族・・・まさか匂いで中身を当てるとは・・・。


「これの中身はハモン・セラーノの原木なんだよ」


「「原木?」」


 意味がわからず頭の上に?マークを浮かべて僕と箱を交互に見つめるアリシアとミャウ。

 まぁ、そうだよね。

 元の世界でも、〝原木〟という単語を聞いて、すぐに正体が分かる人は少ないからなぁ。

 ましてや異世界人の彼女達にしてみたら意味不明でしかないだろう。


「この中身って、お肉じゃなくて木にゃの?」


 ミャウが意気消沈していきなりしょげる。

 心なしか耳やしっぽが垂れ下がったようにも見える。

 感情が素直に出るところは、本当にネコなんだよなぁ。


「〝原木〟って言うのは、俺の世界・・・故郷で足1本分の生ハムのことを指す言葉なんだよ。だからお肉で合っているよ」


「「生ハム??」」


「生ハムっていうのは燻製肉の一種で、豚の脚を長時間塩漬けにして、乾燥しながら発酵させて、低温で燻製したもなんだ。

 この箱の中に入っているのはハモン・・・つまり豚の後ろ脚の部分なんだ」


 ちなみに前脚の方は〝パレタ〟といい、だいたい1本4キロくらいの重さがある。

 〝ハモン〟だと1本8キロくらいの重さで、一人だと正直なところ1年かけても食べきれる量ではない。

 実家で購入した時は、俺、義妹、両親の4人でもハモンの原木1本を消費するのに4~5カ月かかった記憶がある。

 今回レガシィに積んでいた原木は、キャンプでの悪友らとのバーベキュー時に出す隠し玉のつもりで積んでいたものだった。


「燻製肉なら、さっき商人のおじさんからいっぱい買ったんじゃないの?」


 まぁ、そうなんだけどね・・・

 この世界の燻製肉って、元の世界でいえば中世以前の用途・・・つまり保存食という意味合いが強すぎるせいで、塩気が凄いんだよね。

 水につけたり、茹でたりすることでちょうどよい塩気になることを前提にしているため、基本的に生で食べることを考えていない。


「アリシアの疑問はもっともなんだけど、コレは生で食べることを前提にして作られた燻製肉なんだよ」

 

「えっ?生で食べても平気なの?」

「それって、美味しいのかニャ?」


 アリシアとミャウで、〝生のまま食べる〟という部分への食いつき方が違って面白い。


 俺はふたりの前で木箱を開け、ビニールに包まれた豚の後ろ脚(原木)を取り出す。

 そして木箱の奥に収まっていた専用の固定台とナイフを取り出し、木箱をどけて専用台に原木をセットした。

 それを見て、肉塊であることを確かめるようにアリシアとミャウが原木の表面を指でつついていた。


「表面がカサカサで固いのニャ」


「表面は水分が飛んでいるからね・・・でも、乾燥した表面を削り取れば・・・」


 茶色く変色した表皮を削って表れた赤い肉の部分を専用ナイフで薄く削りだして、アリシアとミャウに手渡す。


「きれい・・・」


 鮮やかなピンク色をした生ハムの赤身部分を見てアリシアがうっとりとする。


「美味しいから食べてごらん。

 あと、試食の件はクリス達には内緒だぞっ」


 ちなみにクリスは今、本陣のテントでダモン隊長と今後の行動について打ち合わせをしている。

 お姫様で才女ともなると、10歳の女児でもイロイロと大人に頼られて大変みたいだ。

 リーゼは医療テントの後片付けに行っており、レガ子はレガシィの専用シートに座って周辺警戒のために飛ばしたドローンから送られてくる情報を整理している。


 生ハムの切れ端を渡されたアリシアとミャウ。

 アリシアは手にした生ハムをじっくりと眺めた後に、ミャウは躊躇うことなく一気に口の中に入れた。


「「すごく美味しい(ニャ)♪」」


「だろっ。

 生ハムも塩気は少し強いけれど、それが肉の旨味と脂の甘味を上手に引き立ててくれているんだよ」


 アリシアとミャウに説明しながら、俺も一切れだけつまみ食いをする。

 うん。

 やっぱ自分でスライスした生ハムの味は格別だな。


「さて、今晩はこの生ハムをこっちのバケット・・・長いパンに挟んでサンドイッチを作りたいと思う。

 アリシアはこのバケットをこれくらいの厚さで切って、さらに切ったパンの中央にこう切れ込みを入れてくれ。この切れ込みに後で生ハムやレタス、チーズを挟んでいくから。

 ミャウは、こっちのレタスをこれくらいの大きさにちぎって、そこのザルに入れてくれるか」


「「は~~い」」


 アリシアは見た目は10歳児でも実年齢は18歳だからな、包丁(パン切り包丁だが)を使わせても大丈夫だろう。

 逆にミャウは10歳児に見えても実年齢は6歳児だからなぁ・・・さすがに刃物を扱わせるのが怖い。


 生ハムはサンドイッチ用のほかに、おかずやお酒のつまみとしても使えるよう多めに切り出しておく。

 チーズはブロック形状のサムソーチーズをスライスして程よい大きさにカット。

 ちなみにサムソーチーズはデンマークの代表的なチーズで、ピザやチーズフォンデュ用としてよく使われるタイプだ。


 チーズもバケットも端っこの部分を使わずに残して、元のパッケージや袋に納めてイベントリに戻しておく。

 こうしておけば0時に起こる状態復元の加護で元通りに復元されるのだから便利なものだ。

 おそらくこのハモン・セラーノの原木も復元されて、一生食べ切ることはないんだろうな・・・。

 こんなことなら他の有名産地の原木も積んでおけばよかったよ。

 今度リーゼに元の世界から食材を調達してきてもらえないか頼んでみよう。

 美味しいお酒のつまみになるよ・・・といえば、喜んで買いに行ってくれそうな気がする。



 アリシアとミャウの手伝いもあり、ちょっとした数のバケットサンドとチーズを生ハムで巻いた簡単なおかずなどを短時間で作ることができた。

 そして商隊からこちらの世界のジャガイモが入手できたので、蒸したジャガイモに溶かしたサムソーチーズをかけた料理も作ってみた。

 自分たちだけでは食べ切れない量だが、今回は騎士団の連中もいる。

 宴会は互いに料理を持ち寄って行うことになっているので、余る心配はないだろう。



 夕食の準備が終わったころに、クリスとリーゼが戻ってきた。

 クリスからダモン隊長との打ち合わせで決めた内容を聞くと、このままゴブリンやオークの死体を放置しておくと伝染病の発生が心配になるため、明日から騎士団のメンバーらが死体をいくつかの場所に集める作業をするそうだ。

 そしてダモン隊長から、その集めた死体の山を再度レガ子によるナパーム攻撃で焼いてほしいという依頼があった。


 レガ子は「死体を攻撃しても経験値にはならないのっ」と最初は嫌がっていたが、「じゃあ、レガ子の炎撃魔法でちまちま焼くか?」と提案したら、「そんなめんどいことをするくらいなら、ナパームで一気に燃やした方が楽なのっ」と積極的(?)に協力してくれることとなった。


 ただ、平原にあれだけの数の死体があるので集めるのにも時間がかかるらしい。

 なので2~3日はこの場所に留まることになりそうだという。


 それと俺たちは明日、破壊した転送装置の様子を見に行くこととなった。

 破壊の確認と、装置の回収・調査が主な任務になるそうだ。

 これは魔導器製作者クリエイターを名乗っている以上、俺が責任者として抜擢されたのも分からないではないが・・・まぁリーゼもいるし、レガ子や俺がイベントリの機能を使って分析する手もある。

 簡単な報告書を作るくらいならなんとかなるだろう。


 あとジェネラル種と戦ったあの場所から騎士らが例の首飾りを回収していたので、ソレもクリスが預かってきていた。

 できればこっちも分析してほしいとのことだった。


 そういった分析は王国のお抱え魔導器製作者クリエイターに任せた方がいいのではないかとも訊いたのだが、そのお抱え魔導器製作者クリエイターへの発言力が強いグラム男爵が帝国と密通している可能性がある限り、現状では王国のお抱え魔導器製作者クリエイターの報告を信用できないという事だった。

 国のお姫様に信用されない中央の役人というのはどうなんだろうか・・・。


「我が今信用できる魔導器製作者クリエイターはカオル殿だけじゃ」


 などとクリスに真顔で告白されたことで舞い上がって、面倒な仕事を引き受けたわけじゃないからなっ。

 本当だからなっ。


 


 第5騎士団のメンバーや商隊の人たちも夕飯の準備を終えたという連絡が入ったので、宴会の場所となる広場へ作った料理を持って行くことにした。


 宴会は広場の中央に複数配置したキャンプファイヤーを囲むようにいくつかのグループに分かれて集まりを作り、それぞれの集まりが地面に敷物を広げて料理を囲むように座っていた。

 キャンプファイヤーのそばにはダモン隊長が酒の入った金属製のカップを手に持ち、宴会前の挨拶を始めるところだった。

 そしてその横には、なぜか俺まで引っ張り出されて立っていた。

 皆から集まる視線が辛いので、早く座席に引っ込みたいのですが・・・。


「今回は、下に広がるミロス平原にゴブリンやオークが700匹近くも集まるという異常事態が起きたわけだが、そこにおられるクラリス姫の婚約者で、有能な魔導器製作者クリエイターでもある、このカオル・キサラギさまの助力により、魔物の軍勢を一瞬にして壊滅させることができた」


「「「「うぉぉぉぉぉ~~~!」」」


 騎士団の若者らだけでなく、宴会に参加している商隊の人たちも一緒になって歓声を上げている。

 しかもダモン隊長が俺のことを過剰に評価して持ち上げて紹介するから、商隊の人たちからの好奇心に満ち満ちた視線がかなり痛い(汗。

 マジでこの場から逃げ出したい。


「明日からは下に散らばっている魔物の後片付けが待っているが、今晩はそんな面倒なことは忘れて、今回の戦を称え合って、明日への英気を養おうではないか。

 なお今回の宴会の酒と食材は、なんとそのカオルさまの自腹による提供だそうだ。

 皆カオルさまに感謝しとけよっ」


「「「婿殿、太っ腹っ!」」」

「「「婿殿っ。第5騎士団は婿殿に付いていきますよ」」」


 お前らやたらとテンション高くないか?

 まさかリーゼみたいにもう飲んでいるわけじゃないよな?

 それとあまり〝婿殿〟を連呼しないでほしい。

 商隊の人たちがこの先立ち寄る街でその話をしまくったら、いつの間にか婿入りが決定してしまいそうで怖いぞ。


「本来であれば、ここで今回の英雄であるカオルさまに一言いただきたいところだったのですが、こういう場には慣れていないと断られてしまったため、乾杯の発声だけ戴きたいと思います。

 では、カオルさまお願いします」


 本当ならば乾杯の音頭取りも遠慮したかったんだけれどね。

 目立つの嫌いだから。

 でも頼まれてしまったからには仕方ない、これでも一応コンサル会社で企画・提案部門の課長をしていたんだ。

 会社を代表して宴会の場に出席して、この手の大任を仰せつかったことも何回かある。

 ええい、やってやろうじゃないか。


「え~今回は第5騎士団の皆さま、お疲れさまでした。大きな負傷をされた方も無く、自分も戦が無事に終了してホッとしております。この後の祝宴で大いに飲んで、食べて、今日の疲れをいやしてください。

 また、輸送中の商品を快くご提供してくださった商隊の皆さまにも感謝を申し上げるとともに、皆様の道中の安全を祈願して乾杯の挨拶とさせていただきます。

 乾杯!」


「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」





 疲れた・・・。

 乾杯の挨拶を言うだけで、オークジェネラルとの戦闘以上に疲れた・・・。


 自分たちの宴会スペースに敷いたレジャーシートの上でグッタリとしながらビールを飲む。

 横ではちびっ子たちが、生ハムをたっぷりと挟んだバケットサンドを美味しそうに頬張りながら、紙コップに注がれた炭酸ジュース(コーラ)を飲んでいた。

 ちなみにこの炭酸ジュースは小型のウォーターサーバーに詰め替えて、宴会の場に持ってきている。

 最初はペットボトルごと持って来ようとも思ったのだが、ペットボトルが商人らの目に留まると面倒だと感じたことによる措置だ。

 同じ理由から俺が飲んでいる缶ビールも持ってくるのを悩んだのだが、こっちは旅で使うつもりで開発した試作品の金属製飲料水保存器と嘘をついて持ってきてしまった。

 もちろんイベントリに残してきた缶ビールのケース(箱)には1缶だけ見本を残し、ジュースのペットボトルも少量だけ内容物を残してきている。なのでこれも0時になればケースの中は復活の加護で復元された缶ビールで、ペットボトルの中も新しいジュースで満たされていることだろう。


 ちなみに宴会で出たゴミ(空き缶)は、イベントリの精製炉モードを使ってアルミのインゴットへ作り変える予定だ。

 ロイドのメイベル商会で金属素材のインゴットを購入した時に気が付いたのだが、この世界にはアルミニウムという金属はまだ誕生していない。

 元の世界とこの世界は双子世界らしいので、おそらくこの世界でも探せばアルミの原材料であるボーキサイトがあるはずだ。しかし精錬がやたらと難しい事や、ボーキサイトが持つ毒性が強いことなどから、ほぼ間違いなくこの世界では手つかずの素材だと考えられる。

 なので空き缶をゴミとして残すのはあまりにもオーパーツ過ぎて危険だし、なによりもキャンプ地にゴミを残すことは俺のポリシーに反することから、インゴットに錬成しなおしてクリエイト素材として再活用しようと考えたわけだ。



 子供たちの相手をしながらチビチビとビールを飲んでいると、いつの間にかリーゼの姿が消えていることに気が付いた。


「あれ? リーゼはどこに行ったんだ?」


「リーゼお姉ちゃんなら、騎士さまたちが呼びに来て一緒について行っちゃったよ」


「美味しいお酒があるという言葉につられて、ホイホイ行っちゃたのっ」


 さいですか・・・。

 まぁリーゼさんも良いお歳(300億歳くらいだったっけ?)の女神さまだ。

 ダモン隊長の目もあることだし、たとえお酒に目が無くて、多少お酒にだらしなくても変な間違いは起きないだろう。




 その後、俺のところには騎士たちだけでなく商隊の人(メイベル商会の社員)や冒険者の人たちがやってきて、ゴブリンらの軍勢を倒した魔導器レガシィの事や、俺とクリスの関係などについてやたらと訊いていった。

 冒険者らは単純に戦闘談が聞きたかっただけのようだが、商人らは俺がお姫様クリスとくっついた時に備えてコネを作っておきたいという思惑がヒシヒシと伝わってきた。

 サラリーマンたるもの、宴会も商談の延長戦だからね。

 俺もちょっと前までは同じ立場だったから、その気持ちはわかるんだけどね。


 気になったのは、戦での俺の活躍が冒険者らにかなりオーバーに伝わっていること。

 話の出どころは一緒に戦った騎士たちが語っている武勲談らしいのだが、彼らが気持ちよく飲んでいる所に水を差すのも気が引けたので、冒険者らには軽く訂正をしておくだけにとどめておいた。

 はぁ・・・クリスとの婚約もそうだが、徐々に自分の立場が大事になってきている予感(悪寒)がして、あまり酔えそうになくなってきた。




 ちなみに俺が用意した生ハムは、ちびっ子たちだけでなく騎士たちや商人たちにも好評だった。

 しかもクリスが「このように旨い燻製肉など、王城でも食べたことがないぞ」などと言ったものだから、商人らは〝保存がきく燻製肉でどうやればここまで瑞々しく肉の旨味が出せるのか〟という製法に興味津々の様子だった。

 なので俺が知っているにわか知識でよければという前提で元の世界の生ハム製法を教えたのが、果たして役立つかどうか・・・。





 しばらくして宴もたけなわとなってきた頃、騎士たちの宴席に出張していたリーゼが泣きながら戻ってきた。

 服に土汚れをつけて、胸の部分を両手で隠すようにして戻ってきた姿に、一瞬「間違いが起きたか!?」と焦ってしまったのだが・・・。


「ふぇぇぇ~~ん。みんなの前で転んで、またパッドをばら撒いちゃったよぉ~~~(号泣)」


 という情けない泣き声を聞いて、一気に脱力してしまった。

 まさか、最後の最後でお約束を発動させてポンコツぶりを露呈させるとは・・・。


 ふと子供たちやレガ子の方を見ると、全員が何とも言えない微妙な表情を浮かべているのが分かった。

 たぶん俺も似たような感じで苦笑いをしているんだろう・・・。


 そんなこんなで、宴会の夜は更けていくのだった。

リーゼ「えぐ、えぐ、えぐ・・・・・このオチはなんなんですかぁぁぁ(涙」


作者「この宴会の話を書くにあたって、このオチだけが先に出来上がっていた(www」


クリス「それにカオル殿が第2章 第3話で、リーゼ殿の自爆予告をしていたのじゃ。伏線の回収は当然の流れだとおもうのだが?」


リーゼ「うわぁぁぁぁぁん」


レガ子「もう女神様も、貧乳を誇ればいいと思うのっ。偽乳を作って虚勢を張っていてもむなしいだけなのっ」

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