第2章 第4話(第50話) ~異世界初の爆撃戦闘、そして乱戦へ~
未だに愛車のレガシィが修理工場から帰ってこず、執筆のテンションが上がらないダメ筆者です・・・。
先日エンジンコンピュータを交換したものの不調直らず・・・。
本日はレガ子に会ってきたのですが、エンジン不調の原因が特定できず修理工場の整備士さんらも困り果てていました。
この連載を終えるまでは、今のレガシィから降りる考えはないので、自分も困り果てています・・・(汗。
しかも、愛車が入院している時に限って、数カ月前に申し込んだ燃料添加剤やボディコーティング剤のモニターキャンペーンが次々と当たるってどういうマーフィーの法則よ(汗笑。
という精神状態の中、なんとか50話目となるお話を書きあげました。
いましばらくの間は不定期投稿が続きますが、ご了承ください。
カウントダウンが終わると同時に、レガシィの天井部分から16発のロケット弾が噴煙を上げながら敵集団の方向へと飛翔していった。
最初の着弾まではほんの数十秒。
その場に居た全員が、ロケットの噴煙を目で追いながら着弾する瞬間を目撃していた。
敵集団の北側部分、街道に近い場所から順番にナパーム弾が炸裂し、その場に居たオークやゴブリンもろとも焼きながら、炎の壁を集団の外周部に作り出しつつあった。
その様子を見ていたダモン隊長が、周囲にいる部下らに檄を飛ばした。
「第5騎士団のひよっ子ども、ここからは戦争の時間だ!」
ダモン隊長が発した戦闘開始宣言に、全ての騎士の表情が引き締まり、全員が弓を構えた状態で丘の下のはるか先にある平原に群れているゴブンリンやオークを見つめていた。
前線にいる自分達が、こちらに向かって飛び込んでくる敵の姿を待ち構えている間にも、レガ子の操作によってレガシィの天井部分からは第2射、第3射の誘導ロケット弾が発射されており、敵陣の外縁部にナパーム弾の炎による包囲陣を完成させつつあった。
自分達が居るこの丘から敵が居るミロス平原までは3キロほど離れているのだが、ナパーム弾が撒き散らした油脂が燃えることで発せられた熱気が、この丘の上にまで伝わってくる。
敵陣の上空を旋回している偵察用ドローンからは、望遠カメラが捉えたリアルタイムの映像が俺の視界の中に拡張表示画面として送られてきているが、そこにはゲル化した油脂焼夷剤を浴びて全身が炎上したゴブリンやオークが火を消すために地面を転がりながら絶命していく様子が映し出されていた。
ちなみにナパーム弾に使用されているゲル化油脂焼夷剤は親油性の性質を持っているため、動植物などに付着すると落とすことが困難。しかも水をかけても消火することは難しい。
またナパーム弾の燃焼温度は1000度前後と高温なのに加え、その燃焼の際には大量の酸素が消費されるため、直接炎に包まれなかった周囲の敵も熱気による火傷や酸欠により倒れていく。
その様子は、まさに地獄絵図そのものといえた。
「レガ子、例の出現ポイントはその後どうなっている?」
炎の包囲陣が完成したのを確認したタイミングで、ゴブンリンやオークの出現ポイントとなっていた転送魔法陣の破壊が成功したかどうかを確認してみた。
「どうやら最初の2発で転送魔法の装置を壊すことができたみたいなの。今は新しい豚どもは1匹も沸いてきていないのっ」
出現ポイントの破壊成功に安堵したのもつかの間、ドローンから送られてきていた敵陣の映像に変化が現れたことに気がついた。
炎の壁の内側で存命していたゴブンリンやオークが、自分らが居る丘の方向に向かって突進を始めたのだ。
「ダモン隊長! 連中らがこっちの存在に気がついた。この丘の方向にある炎に向かって集団突撃を始めやがった」
「カオルさま、すぐに抜かれそうですか?」
映像を見ている限りではほとんどの個体が炎の壁を抜けることなく絶命していた。
まるでヒステリックな集団自殺を見ているようだ。
しかし、途中で息絶えた死体が炎の勢いを徐々に弱め始めていて、より遠くまで到達する個体が増えてきていた。
「レガ子、さすがにこの残敵数が抜かれるとまずい。壁の内側の面制圧を頼む!」
「もうやっているのっ!」
レガ子からの返事がくるよりも先に、炎の壁の内側で追加のナパーム弾と気化爆弾による混成爆撃が始まっていた。
それでも徐々に満身創痍の状態で炎の壁から飛び出してくる敵が少しずつ現れ始めていた。
その多くは全身に負った火傷や傷が原因でこちらの攻撃射程にたどり着く前に絶命しているのだが、やがて武器を振り上げて弓の射程内にまで突進してくる個体が出始めた。
この世界にある弓の実用射程距離は400メートル前後から。
しかも今回は丘の上からの射ち下ろしになるため、攻撃射程距離はもう少し伸びるそうだ。
一方、俺が手にしている魔銃の射程距離は、魔力弾の圧縮・加速呪文が施してあるサプレッサーを付けた状態でも100メートルくらいからが実用範囲だ。
なので、こちらに向かってきていた敵は、俺が攻撃するよりも早く騎士達が放った弓矢に射抜かれて倒されてしまっていた。
「次はレガ子に射程の長いスナイパーライフルを魔銃化してもらおう・・・」
活躍する場がなくて手持無沙汰だったので、少々腐りながら独り言のようにつぶやいたら、レガ子がその独り言に食いついてきた。
「まかせてなのっ♪
豚どもを大量に焼いたおかげで成長ポイント溜まりまくりだから、今なら薫さまに何でも作ってあげられると思うのっ♪」
どうやらレガ子の攻撃で倒れたゴブンリンやオークが多すぎて、経験値の貯まり方がパチンコのフィーバー状態らしい。
レガ子はこれまでに見たことがないくらいの上機嫌だった。
上機嫌なレガ子は、さらにロケット弾による攻撃をばら撒き、1発の攻撃で数十匹単位の敵を葬って経験値を上積みしていく。
それでも攻撃の合間を抜けて俺たちの居る場所に近づいてくる敵の数が徐々に増えてきていた。
騎士らが放つ弓の攻撃は長時間の連射攻撃には向いていないため、どうしても射ち漏らす数が増えてきていたのだ。
中には魔銃の有効射程内にまで近づいてくる敵も現れており、そうした敵には魔銃から放つ爆炎魔法を連射で撃ち込んでいた。
そして俺もマガジン4本分の攻撃を終えた頃、こちらに迫ってきている敵との距離が50メートルを切り始めた。
「カオルさま、そろそろ頃合でしょうかな」
隣で騎士団の指揮を執っていたダモン隊長が尋ねてきた
つまり、そろそろ近接戦闘に切り替えるタイミングだということだ。
俺はそれに頷いて返事を返すと、すぐ横に居るクリスから新たな交換用マガジンを受け取り、その手で彼女の頭を撫でて後方に退避するように告げた。
クリスは一瞬だけ身を強張らせ、何かを言いたげな表情を浮かべたが、すぐにいつもの偉そうな雰囲気の笑顔を浮かべると「無事に戻ってくるのじゃぞ」とだけ言って、後方のレガシィ横に設置された救護テントへと走っていった。
ダモン隊長はクリスが後方に退避したことを確認すると、部下らに対して大声で新しい指示を発した。
「ヒヨッコども狩りの時間はここまで、ここからは楽しいダンスの時間だ!。
総員、抜剣!!
ステーキになりそこなった豚どもを肉片に解体しろ!!」
ダモン隊長の号令と共に、すべての騎士が弓を投げ捨て、剣を抜いて丘を駆け下りていく。
騎士らの戦闘スタイルは、基本的に二人一組のツーマンセルになっている。
一人が敵の攻撃を剣や盾などで受け止めている隙に、もう一人が攻撃を仕掛けるパターンを基本にしており、各ペアがそれぞれの戦いを有利に進めていた。
ちなみに俺はまだ紅雨を抜かずに、魔銃による攻撃だけで敵を倒していた。
理由は、この世界の敵は銃という武器を見たことが無いため、銃口を向けても左右に避けようとしないだ。
結果として刀で切るよりも魔銃を撃った方が確実かつ効率的に敵を倒せている。
この様子では紅雨を抜くのは、本当に乱戦状態になった時になるのではないだろうか。
ゆっくりと丘を下りながら、近づいてくる敵を魔銃から放つ魔法攻撃で確実に倒していると、気が付けば戦線の先頭に自分が飛び出してしまっていた。
剣による近接戦闘では、決着がつくまでどうしても切り結んだ場所から大きく移動することが無くなるため、結果として前進しながら敵を撃ち倒していた自分が一番前に出てしまったようだ。
そのためナパームの壁を抜けてきた複数のゴブリンやオークが、一人で突出していた俺に狙いを定めて襲い掛かかろうとしていた。
「カオルさま前に出すぎです! 下がってください!!」
俺に向かって複数の敵が押し寄せようとしていた状況を見てダモン隊長が警告の声を上げる。
しかし俺は武器を振り上げて先頭を走っていた3体の顔面に魔銃による攻撃を当てて倒すと、そのまま銃をホルスターへと収めて紅雨を握って抜刀の構えをとった。
「ロード・スリー」
鞘に納めた炎の魔力結晶を3つ燃焼させ、最大熱量に達した炎を纏った紅雨の刀身を敵らがいる空間に向かって振り抜いた。
ナパームの炎の比ではない熱量をもった炎が、向かってきていたゴブリンやオークに襲い掛かり、一気に5、6体の敵を炭化した焼死体へと変えた。
その威力を見て前進の足が止まった敵集団のもっとも密集した部分へ、自分の魔力を刀に送り込んでさらに威力を高めた炎を叩きつけ、さらに7、8体の敵を消し炭に変える。
「わ~おっ」
「婿殿やるぅ~」
俺の救援に駆けつけようとしていた騎士らが、その様子を見て感嘆の声を上げた。
「あともう一発、炎の塊を敵の濃い部分に叩き込む。
その後は味方への誤爆の恐れがあるからこの技は封印することになるがいいな!」
自分のすぐ後ろに来ていた4人の騎士にそう告げ、紅雨の刀身を一旦鞘へと納める。
俺がやろうとしてることをすぐに察知した騎士らは俺のすぐ後ろで足を止め、俺の肩を笑いながら叩いてきた。
「では婿殿、あそこの集団にでかいの一発お願いできますか」
「その後の残敵数は普通に剣で相手しても余裕の数しか残りませんから、婿殿はゆっくり休んでいてもいいですよ」
「というか、我々の獲物を残しておいてください」
「まったくです、このまま終わったらロイドに帰った時に酒場で自慢話ができないじゃないですか」
掛けられた返事に後ろを振り向くと、それぞれが余裕の微笑みを浮かべて俺の方を見ていた。
どうやら強がりや意地などから出たセリフではなく、本心からの言葉のようだった。
「分かった、この一発を放ったら、俺は少しのんびりとさせてもらうからなっ」
俺も不敵な微笑みを浮かべて騎士らに言葉をかえす。
「一瞬だが、かなり熱くなる。できれば4、5歩ほど下がっていてくれ」
忠告に従って騎士たちが後ずさりする足音を聞き、紅雨の柄を握る手に魔力を込める。
「ロード・スリー!
そして、レジ○ンダリー・ファイヤー!!」
抜刀と同時に放たれた炎がまるで龍のような生き物と化して空中を移動し、30体ほどが密集していた敵の群れに襲い掛かる。
炎龍が飛び込んだ中心部の地面は溶けて赤く爛れたガラス状へと変化し、そこに居たゴブリンやオークをすべて焼け焦げたオブジェへと変えていた。
「後は任せてもいいんだよな?」
攻撃を終えて刀身を鞘に納めなおして振り返ると、騎士たちの笑い顔が若干引きつっていた。
ありゃ・・・もしかして調子に乗ってやりすぎたか?
「お、おぅ!」
「む、婿殿は討ち漏らしが出たら対処を頼みます」
苦笑いを浮かべながら、他の隊員らと合流して残存敵の掃討に向かう騎士たち。
「おれ、ロイドに戻ったら飯屋のマリーちゃんに土産話と一緒に交際を申し込もうと思うんだ」
「ハンスにマリーはもったいないが、とりあえず応援させてもらうよ」
俺の横を小走りで通り過ぎた騎士の会話が耳に入ってきた。
「それ・・・死亡フラグにならないといいのだが・・・」
聞こえてきた会話にゲームやアニメでのお約束が頭をよぎり、そのハンスさんとやらの戦い方が気になってしまい、ついつい目で追ってしまっていた。
しかしその戦い方はかなりしっかりとしたもので、着実に対峙していたオークに傷を負わせて追い詰めていた。
「さすがに考えすぎか・・・」
そんなことを考えていると、レガ子からの念話が届いた。
「平原にいた豚どもは、ほとんど焼き殺しおわったのっ♪」
「物騒な内容を嬉しそうに言わない!。
偵察ドローンの生態スキャンで、生き残りがいないかどうか一応確認してくれ」
「わかったのっ。
しぶといのが居たら、追加で焼いておくのっ」
「あぁ・・・瀕死の個体にナパームは大げさすぎるから、もっと小規模な花火で対処をお願いしたいのだが・・・」
「喜んで大げさなパクリ炎技を使っていた薫さまには言われたくないのっ。でも確かに豚一匹にロケット弾は経験値がもったいないのっ。仕方ないから、重症だったら自然にくたばるのを待つことにするのっ」
「あははは・・・。重症以外のケースの対処はレガ子に任せるからよろしく」
血気盛んな八百万の精霊に冷や汗をかきながら苦笑いをしていると、俺の横にダモン隊長が近づいてきた。
「丘を登ってきたオークやゴブリンもあと数匹。カオルさまのご助力のおかげで、こちらには大した被害が出ることもなく今回の討伐任務を終えられそうです」
「そんなことはありませんよ。自分たちだけでは、あの爆炎攻撃を抜けてきた敵への対処が間に合いませんでしたから、第5騎士団の方々がこの場にいてくれたからこそ実行できた作戦です」
最悪、対応していたのが俺らだけだったとしても、レガシィに乗って移動しながら攻撃することで対処はできたと思うが、余計なことは言わずに騎士団にも花を持たせておく。
クリスには悪いが、必要以上にこちらの手の内を晒して王国の人たちに過剰な期待をされることを避ける意味合いも、まぁ・・・今のところはあるしな。
「どうやら全騎士が戦闘を終えたようです」
自分らの右前方で戦闘を行っていた騎士らがオークにとどめを刺したのを見て、ダモン隊長が戦闘の終結を告げ、騎士たちに集合を掛けた時、俺の頭の中に慌てた様子のレガ子からの念話が飛び込んできた。
「薫さま、気を付けてなのっ!
そっちに向かって、大型の個体2匹と通常個体数匹が向かっているのっ!!」
レガ子からの報告を受けて、魔銃を抜いて構えながら煙で霞んだ丘の下を凝視した俺を見て、ダモン隊長も改めて抜剣して丘の下に向かって戦闘態勢をとった。
またそれを見て、他の騎士たちも丘の下に向かって剣を構える。
「カオルさま、いったい何が・・・」
「どうやら下から大型の敵が2匹やってくるらしい・・・」
「大型の敵・・・まさか・・・」
ダモン隊長が敵の正体に思い当たることがある様子を見せた時、煙の中からその敵が姿を見せた。
見た目はどちらもオークとゴブリンなのだが・・・・
その体躯が通常のやつの3倍くらいとデカいっ。
「ジェネラル種か・・・やっかいだな」
その敵の姿を見てダモン隊長が額に流れた汗をぬぐいながら呟いた。
「オーク・ジェネラルにゴブリン・ジェネラル・・・こっちの世界にはこういった上位種も実在するわけか・・・」
ジェネラル種が放つ威圧感に、これまでの敵からは感じることができなかったプレッシャーを感じ、俺は魔獣のグリップを強く握りなおした。
レガ子「溜まったポイントで、何をゲットしようか悩むのっ」
作者「あまりにもパワーバランスを壊しかねない装備はやめようね・・・」
レガ子「すでに手遅れだと思うのっ。なので強くなることを選びたいのっ」
作者「そんなにも戦闘力を強化してどうするんだ?」
レガ子「その強力な武力で魔物らの巣を強襲して根こそぎ退治すれば、きっとレベル100なんてアッという間なのっ」
薫「生態系を壊すだけの、無意味な虐殺はやめような・・・(汗」