第2章 第2話(第48話) ~急行~
すみません。
ちょっと投稿時間帯が遅くなってしまいました。
先日CPUクーラーを交換して修理した執筆用のパソコンが、昨晩マザーボードから昇天してしまい、電源を入れてもBIOS画面すら出てこない状態になってしまいました…(涙。
とりあえず今回の投稿は、予備・・・というか、スペック的にはメインマシンの方で行っているのですが、基本的にネット閲覧とかでしか使っていなかったため日本語変換辞書がダメすぎて、執筆作業的にかなり困ったことになってしまっています…(汗。
しかも、間が悪いことに、今回の投稿でストックの在庫が・・・・(滝汗。
極力、投稿ペースを乱さないようにしたいのですが、次回投稿のタイミングは未定という事にして、目途が立った時点で活動報告の方で告知したいと思います。
「ゴブリンとオークは俺が引き受けよう。
悪いが現地にいる第5騎士団を俺に貸してくれないか?」
俺の申し出に驚きの表情を浮かべるマロウさん。
「それはありがたい申し出だが、いったいどうする気だ?
玉砕覚悟の戦闘には大切な部下を貸せないぞ」
俺の頭の中には、昨日レガシィに武装を付けた時にレガ子が言った〝意味のある大量虐殺しかしないの〟という言葉が思い浮かんでいた。
「300匹全部を一気に燃やして片付ける!
燃やし損ないの残飯の整理を、第5騎士団には手伝ってもらいたい」
マロウさんは俺が提案した戦略に目を白黒させたあと、何かを思い出してニヤッと笑った。
多分、夕べ見た気化爆弾の爆発シーンでも思い出したんだろう。
「それなら、第5騎士団の若造らにも何とかなるな・・・。
あの部隊は実によく食う若い騎士が多いから、きっと役に立つぞ」
俺の話を聞いていたレガ子は「ナッパァァムッ♪ナッパァァムッ♪」と少しうれしそうにしていた。
なんでこの精霊は、こんなにも戦いが好きなんだろうか(汗)。
「オークさんって、焼くと美味しいんですか?」
突然、リーゼがこの場の空気も読まずに突拍子も無いことを言い出した。
そのため部屋に居た全員が「え?アレを食うの?」という、なんともいえない表情になっていた。
ナイスポンコツ!
お前の今の発言で、重苦しかった空気が一気に霧散したぞ。
「いや・・・さすがに不味いと思うぞ・・・」
リーゼのボケに、律儀にも返事を返すクリス。
ボケにマジレスはいくない。
しっかりと突っ込みを入れてあげないと。
「オークの丸焼きの味の評価は、すべてが終わった後で第5騎士団の若造らに聞くとしよう」
マロウさんのジョーク(だよね?)で、団長室の中には先ほどまでの重い雰囲気が無くなり、皆の顔には笑いがこぼれていた。
「とりあえずミロス平原までの距離と、街道の状態を教えてくれ」
「ミロス平原までは、だいたい約33トール(約200キロ)くらい。
街道の状態は、ベルドからここまでと大して変わらないはずだ」
今はまだ昼前だ。
今から出発の準備をすれば、今日の夕方には現地に着けるはず。
「わかった、俺たちは今から出発の準備をして、昼前にはロイドを出る。
日が沈む前にはミロス平原に着くはずだから、第5騎士団に連絡を頼めるか?」
マロウさんは「そんなに早く移動できるのか?」と驚きながら頭を掻いた。
「軍用の通信用魔道器を使って連絡してみるが、下手すればカオル殿の方が早く着いちまいそうだ。
俺直筆の指令書も出すから、それも持って行ってくれ」
「わかった。
で、アレはどうするんだ?」
〝アレ〟とは、レガ子が発見した、敵が潜んでいると見られる3箇所のことだ。
「もちろん潰すさ」
潰すと言った時、マロウさんはかなりうれしそうな顔をしていた。
あれは相当ストレスがたまっていると見た。
「帝国の兵士だとしたら、使い捨て式の魔導器とか持っていると思うが大丈夫か?
今回は俺らは手伝えないぞ」
「こっちにも魔道師部隊くらいあるよ。
それに、ここまで正確な位置が分かっているんだ。
奇襲で一網打尽にしてやるさ」
「そうか・・・無事に片付くことを祈っているよ」
「ふん、そっちこそやり過ぎて近隣の村まで燃やすなよ」
俺とマロウさんは、拳を打ち合わせながら笑い合っていた。
なんか俺もすっかり体育会系のノリに毒されちまったかなぁ・・・。
「で、お前はどうするんだ?」
真顔になったマロウさんがクリスと向き合った。
「我はもちろんカオル殿に付いて行くが?」
予想していた答えだが、国のお姫様としてはそれでいいのか?
「伯父としても、また騎士団長としても、本来であればクラリス姫の行動をお諌めするべきなのだが・・・残念ながらわが国にはこの若造の力が絶対に必要だ。
なので姫様には、この若造に首輪をつけて、再度このロイドもしくは王都まで連れ帰るお役目をお願いしたい」
おいっ、首輪って何だよ!(汗)
「そのお役目、喜んでお受けいたす。
伯父上は、我とカオル殿の婚約発表パーティの準備でもして待っておれ!」
いや・・・もうロリコンでいいやと思っているから、今更クリスとの婚約を否定する気はないけど、パーティは勘弁願いたいぞ。
その後おれたちは大急ぎでフェルトン家の屋敷に戻り、侍従長のテオさんに事情を説明して、出発の準備を整え始めた。
とはいったものの、さほど補給する物資も無いので、出発の準備は小一時間ほどでできてしまった。
増えた荷物といえば、お屋敷で頂いた娘っ子たちの衣装や普段着くらいだろう。
レガシィの中で娘っ子たちが屋敷から出てくるのを待っていると、俺の元にクリスの祖父母がやってきた。
危険な戦場にクリスを連れて行くことをお爺さんに怒られるものと覚悟し、車から降りて祖父母の前に立った。
「クリスさんを危険な戦場に連れて行くことになり、申し訳ございません。
彼女を含め、子供たちの安全は、自分の身に変えても守りますので,どうかお許しください」
おれはクリスのお爺さんにそう謝罪し、頭を下げた。
「ふん、王族が民を守るために死地に赴くのは、王族であるがゆえの義務じゃ。
そんなことでは怒りはせん。
いいか、若造!
必ずクリスを連れて戻ってきて、ひ孫の顔を見せんと承知せんからなっ!」
目の前で頭を下げていた俺にそう告げたお爺さん。
俺が驚いて頭を上げると、お爺さんはすでに屋敷に向かって歩き始めており、その表情を見ることはできなかった。
あっけにとられている俺に、まだ俺の横に残っていたお婆さんが「あの人、素直じゃないから、照れているだけよ」といって笑っていた。
お爺さんのツンデレをゲットしても嬉しくは無いのだが、とりあえず少しは俺のことを認めてくれたことには素直に感謝しておくことにした。
やがて屋敷の中から最後の荷物を持って出てきた娘っ子たちを乗せ、レガシィをミロス平原に向けて走らせ始めた。
クリスたちは屋敷から出てきた時、メイドさんらが昼食にと作ってくれたサンドウィッチのほかに大きなバッグを持ってきていた。
バッグは何も考えずにイベントリに突っ込んでしまったため、走りながら彼女らに「何を持ってきたんだ?」と訊いたら、アリシアに「お兄ちゃんのエッチ!」と怒られてしまった。
どうやら旅で使う着替えの下着類をバッグに入れてきたらしいのだが、たかがお子様3人分の下着で何であんなにもバッグが膨れているんだ?
クリスが「その時がきたら、カオル殿にも見せてやるので、今は気にするでないぞ」などと言ってたのが逆に気になって仕方が無い。
〝その時〟って何なんだ?
もはや不安しかないのだが・・・。
ゆっくりとした速度で来たときに潜ったロイドの城壁門を出たレガシィは、城壁に沿って東側に回りこむ街道へと入り、一気に加速していった。
上空には、屋敷を出る直前に飛ばした2機のドローンが周辺警戒を行っている。
俺の勘では、おそらく街道のどこかにロイドを出兵した騎士団を察知するための偵察兵か、もしくは定期的に街道周辺を飛行する竜騎兵が居るのではないかとにらんでいる。
この推測については、マロウさんも似たような意見だった。
なのでそうした部隊を発見し次第、行きがけの駄賃に潰して行くことになっていた。
「薫さま、前方10キロ先にある左側の崖の上に、3匹のワイバーンが羽を休めている場所があるの。
その近くの横穴には、3人分の人間の生体反応もあるの」
レガ子からそんな報告を受けたのは、ロイドから80キロ近く離れたあたりを走行中のことだった。
この場所は左右に険しい崖がそびえ立つ渓谷のような地形になっており、渓谷の底を移動することになる旅人からは左右の崖の上は完全な死角となっている。
そのため盗賊などによる待ち伏せもよく起きる場所だということだった。
ドローンからの解析映像には、崖上の数箇所にかつては盗賊であったであろう骸が転がっているのが確認できたという。
おそらく任務の邪魔になると判断した竜騎兵によって始末されたのであろう。
「今飛んでいるワイバーンは確認できるか?」
「少なくとも、ドローンの索敵範囲内に飛行中のワイバーンは一匹も居ないの」
つまり、崖上で休息中の3匹がこの場所にいるワイバーンのすべてと見ていいのだろうか?
どのみちこのまま残しておくと後々面倒になるので、今のうちに潰しておいたほうがいいだろう。
「レガ子の攻撃プランは?」
「気化爆弾を打ち込んでワイバーンの頭上で爆破。
その後テストもかねてナパーム弾を3発くらい打ち込んで、周囲を消毒するの」
消毒・・・って。
脳裏に、ミサイルを撃つ時に「汚物は消毒なのっ!」と叫んでいるレガ子の姿が浮かんでしまった(汗)。
まぁ、確実性を重視すれば悪い選択肢ではない・・・よな?
「プランを承認するから、ちゃっちゃと片付けちゃってくれ。
レガシィの速度はこのままでも撃てるのか?」
ちなみに、今レガシィは時速45キロほどで走行している。
「気化爆弾もナパームもドローン観測による地点誘導で目標に当てるから問題ないの。
なので薫さまはこのまま走っていていいの」
そんな打ち合わせをしているうちに、レガシィはワイバーンが休息しているポイントまで約5キロの距離にまで近づいていた。
「気化爆弾を発射管1番と2番に装填。
ついで3番から6番にナパーム弾を装填。
発射タイミングは、気化爆弾発射の1分後に、ナパーム全弾を一斉発射にセット」
天井部分から〝ガコン、ガコン〟という小さな装填音が聞こえてきた。
「ドローンからの誘導波確認。
1番、2番発射なのっ!」
今度は天井の辺りから〝シュパッ〟という発射音が聞こえ、やがてフロントガラス越しに上空にロケット雲の線を引きながら飛んで行く飛翔物が見た。
そして時間を置いてさらに4発の発射音が鳴り、ハンドルを握る手に発射時の衝撃が伝わってきた。
「気化爆弾は目標に向け順調に飛行中。
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・
着弾今なのっ」
レガ子の着弾合図に合わせて、左上に見える崖上に爆風によるものと思われる砂塵が舞うのが見えた。
さらに時間差で鳴り響く爆音。
左崖上の方からは、おそらくナパームの炎によるものと思われる黒煙が上がっているのが見える。
俺は運転に集中しているため、ドローンから送られてきた現場の映像を見ることはできないが、その映像を見ていたクリスが「やり過ぎじゃ・・・」と震えた声で感想を漏らしていたことから、完全にオーバーキルだったことは想像できた(汗笑)。
「黒煙を見て、飛行中の竜騎兵がこっちに来るかもしれない。
ドローンによる全周警戒を密にしておいてくれ」
この逃げ場の無い渓谷内で、空から襲われるのが一番しゃれにならないため、レガ子には念入りな警戒指示を出しておくことにした。
「まかせてなのっ。
もし来ても、近づいた途端に焼き鳥にしてやるのっ」
レガ子は先ほどの戦果に上機嫌になっていた。
日本の八百万の神様って、戦闘民族だったっけ?
「焼き鳥・・・ワイバーンって、お酒のおつまみになるかしらぁ?」
リーゼは、相変わらずお酒のことしか考えていないようだ。
夕べあれだけ飲んでいながら、二日酔いすらしていないその体質はすごいと思うよ。
すぐに酔っ払うけれど、そういう意味では酒に強いといえるんだろうな。
「焼き鳥というよりも・・・焼きトカゲ?」
アリシアがリーゼのボケに、まじめに答えを返していた。
とういうか、ワイバーンをトカゲの項目にくくっていいのか?
「トカゲかぁ・・・美味しく無さそうだなぁ・・・」
焼きトカゲと聞いて、興味をなくすリーゼ。
俺が居た元の世界でも、ベトナムとかにトカゲ料理があった。
ベトナムへ海外出張した時に現地のビジネスパートナーが案内してくれたが、食いたいとは思わなかったな・・・。
それ以前に、トカゲの尻尾を切り落として、そこら抜いた生血をお酒で割って乾杯したときには、卒倒しそうになったのを覚えている。
トカゲの生血で割ったお酒・・・絶対リーゼには教えないでおこう。
興味を示された日には、こっちの精神安定が脅かされそうだ。
その後、しばらく経っても新たな竜騎兵の存在はキャッチでなかった。
街道の途中を見張っていたのは、あの3匹がすべてだったと見ていいかもしれない。
ロイドでの撃墜と合わせて、これで帝国は5騎の竜騎兵を失ったことになる。
「なぁクリス、帝国が所有している竜騎兵の数ってどれくらいあるんだ?」
「正確な数は不明じゃが、潜入させているスパイからの報告では200騎~300騎はあるのではないかと言われている。
おそらく、どこかにワイバーンの養殖場でも持っているのであろうな」
「げっ、そんなにあるのか?
それじゃ5騎くらい潰しても焼け石に水だなぁ・・・」
「現皇帝が即位してから、帝国は竜騎兵の育成に力を入れたそうでな。
30年ほどであの国の主力部隊にまで大きくなったそうじゃ」
さすが元アメリカ人の皇帝さんだ。
おそらく戦における制空権の重要性を知っているだけに、戦闘機や戦闘ヘリの代わりになる戦力として育て上げたんだろうな。
ただし、連中は三次元での戦略や戦術が組めるのは自分たちだけだと思い込んでいるはずだ。
なのでしばらくは、そこに付け入る隙がありそうだ。
ロイドの街を出て約4時間半。
休憩なしのぶっ通しで走ったおかげで、日暮れにはまだ時間がある午後4時半くらいに、俺たちはミロス平原が見渡せる丘に到着していた。
現場に居た第5騎士団ともすぐに合流することができ、第5騎士団のダモン部隊長にマロウ騎士団長からの指令書を手渡す。
指令書の内容を読んで、驚きと、戸惑いの表情を見せるダモン部隊長。
そりゃそうだろうな・・・
このレガシィの卑怯すぎる面制圧能力を知らなければ、無理としか思えない内容が其処には書かれているはずなのだから。
「カオルさまといいましたか。
本当に、ここに書かれているようなことが可能なのですか?」
「ああ、あそこに居る精霊のレガ子と、このレガシィという移動式魔導器があれば、連中の大半をステーキに変えてやるさ」
「しかし・・・
あの数ですぞ・・・」
ダモン部隊長が示した陸に広がる広大な平原には、すでに500匹は超えるであろうと思われるゴブリンとオークの軍勢が集結していたのだった。
まったくこいつら、どこから沸いて出てきているんだ?
レガ子「汚物は消毒だぁ! なのっ」
薫「挨拶の初めからそのセリフかよっ!」
クリス「丘の上から眺める500匹以上のオーク&ゴブリンの群れは壮観じゃのう・・・」
レガ子「あまりにも多すぎて、豚の匂いが丘の上にまで漂ってくるのっ」
作者「で・・・冒頭の叫び声が出たのか・・・(汗」