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第1章 第39.4話  ~番外編 ・ (ぽんこつ)女神リーゼの活動記録 その1~

今回も第1章の番外編になりますが、今回はちょっと毛色が変わって女神リーゼさん視点でのお話となります。

しかも2回に分けての、ちょっと長い番外編になります。

彼女の愛すべきポンコツぶりが皆さんに伝わればいいなぁ・・・(苦笑)。

 にゃうん・・・

 本格的に困った・・・。

 このままでは世界樹の根元付近にある大きな枝に、深刻なダメージが生まれてしまうかもしれない。


 まぁ、最悪あそこの枝が砕けて、その先にある100近い次元世界が消えてしまったとしても、私個人には何の影響もないし、世界樹もしっかり手当てさえすれば後遺症はない・・・はず。


 ただ、その100近い次元世界の中には、私が個人的に気に入っている面白い機械文明を築いている世界も含まれていて、単純にこのまま消してしまうのはかなり惜しい。

 あと、その世界のお酒がかなり美味しいのも、消してしまうには惜しい理由に含まれている。


 しかも、今回起きている問題の根本的な原因が、あそこに住まう人間らの時間感覚で数千年前に私がやらかしてしまった凡ミスであることも、このまま事態を放置しておくことがなんとなく後ろめたい理由にもなっていた。





 世界樹が生み出す幾千幾万もの次元世界に住む生物らは、私のことを〝神様〟とか〝女神様〟とか崇めてくれるが、世界樹と共に生まれて、世界樹を育てる事だけが目的である私たち管理者にとって、ここの次元世界やそこに生きる生き物らのことなどは、観察対象の実験動物と同じで管理者らが気にする事はほとんど無い。

 失敗だと思えば切り捨てるだけだし、有益だと思えば成長の手助けをするくらいの存在でしかない・・・・・はずなんだけれど、どうも私は他の管理者に比べ、そういった割り切り方が下手なようだった。



「だから他の管理者さんらに、〝変わり者〟とか言われちゃうんだろうなぁ・・・」


 そんなことを思いながら、無数の世界樹が浮かんでいる虚数空間の映像を眺める。

 何も無い暗闇が広がる果てしない空間に、光り輝く世界樹だけが幾万幾億と浮かんでいるその様子は、まるで〝世界樹の森〟とも呼べる壮大な風景だ。


 その世界樹の森の中心付近、古参の世界樹が集まっている空間に一つの異変が起きていた。

 それは、管理者が世界樹に住まう生命体によって殺害された事による世界樹の終焉・・・という、どの管理者も今までに経験した事が無い出来事だった。


 我々管理者は高次元精神体の存在であるため脆弱な肉体を持たない。

 管理している次元世界に下りる時に、一時的に肉体を生成することはあるが、その肉体が死んだとしても本体である高次元精神体には影響を受けない。

 そのため今回の出来事では、あの世界樹の管理者がどのような状況で死に至ったのかについて、同じ管理者らの間でさまざまな憶測が飛び交っていた。


 多くの管理者らが〝死の理由〟について興味を持っていたとき、私は〝死の原因〟となったあの世界樹に生きる殺害者について考えていた。

「なんで殺害者は自分の世界の神を殺してしまったのだろう・・・」

 いくら考えても、世界樹に生きる者達の気持ちが今ひとつ理解できない私には、それは無駄な事だと思い至り、とりあえず根元から徐々に光を失っていく世界樹の終焉を録画記録する事にして、私は自分が今抱えている問題の解決に向けて動き出す事にした。




 問題解決に必要な事は、実に単純で、やる事は一つしかない。

 〝1028a〟と呼称している次元世界に存在する、私の〝元忘れ物〟を回収するだけ。

 しかし、管理者が次元世界内に受肉するには、ほとんどの力を世界樹の中枢にある高次元精神体に置いて来なければならず、その存在はちょっと強力な魔力を行使できる人間程度になってしまう。

 そのため、その〝元忘れ物〟が国家という強大な組織の管理下に置かれている以上、私の力だけでは回収どころか近寄る事すらままならない。


 こんな時、他の管理者であれば、神様などと崇められている事を逆手にとって近隣の国家を神のお告げなどを使って先導し、目的のものを奪わせて神への貢物として回収するらしい。

 しかしながら、どうも私には〝神の威厳〟とやらがまったく無いようで、近隣国家の神官さんらの枕元に立ってお願い事をしても亡霊や亡者、ひどい時には悪霊と間違えられて追い返される始末・・・(にゃうん(涙)・・・)。


 仕方が無いので、作戦を変更してこの〝1028a〟と双子の関係にある〝1028b〟という世界に住む人間を〝1028a〟に送り込んで〝元忘れ物〟を回収させようとしたのだが、送り込んだ人間が欲望に負けてしまいその〝元忘れ物〟を自分の物にして〝1028a〟に居座ってしまった。

 途中まで、私の目論見どおりに動いていただけに、この結果にはションボリである。




 そこで今回は、〝1028b〟に住む人間とは別の生命体・・・。

 私の〝元忘れ物〟にまったく興味を示さないと思われる種族を〝1028a〟に送り込んで、その〝元忘れ物〟の回収作業をお願いする事にした。


 もちろん前回のような失敗を犯さないために、送り込む生命体には最初から大きな力は与えない事にした。

 〝1028b〟の世界には一定の経験を重ねるごとにレベルがアップし力が増す〝ゲーム〟という概念システムがあったので、この仕組みを利用して管理者が持つ加護の力を少しずつ生命体に付与することにした。

 これならば、もし生命体が私の意にそぐわないようであれば、それ以上力を付けないように加護を停止することもできる。




 送り込む生命体は、すでに目星をつけてある。

 以前〝1028b〟の世界に暇つぶしのためのゲームソフトを入手するために受肉して潜入した時に出会った、レガ子ちゃんという精霊だ。

 〝1028b〟の世界では〝八百万の神〟とか呼ばれている精霊だそうで、人間が愛用している物質に宿ることができるそうだ。

 このレガ子ちゃんも、クルマという人間が生み出した移動機械に宿った精霊の一人だった。


 〝1028b〟の中にあるアキハバラという街を歩いていた時に、駐車中だった彼女の本体とぶつかり倒れてしまった私に「大丈夫なの?」と優しい声をかけてくれたのが、レガ子ちゃんというこの精霊さんだった。


 最初は人間だと思っていた私に自分の声が伝わった事に驚いていたレガ子ちゃんだったが、倒れた拍子にぶちまけてしまったゲームソフトの数々を見て、お互いにゲームなどのこの世界のサブカルチャーが好きな事で意気投合してしまったのが彼女との交流の始まりだった。

 その後も何度かレガ子ちゃんと話しをし、彼女が望んでいる「クルマの持ち主である薫さまと結ばれたい」という願いをかなえる代わりに、〝1028a〟の世界に行ってもらって私のお願いを訊いて貰うことで話をつけた。





 レガ子ちゃんを、本体の持ち主である薫さんという人間と一緒に〝1028a〟の世界に送り込む日が来た。

 この日は、レガ子ちゃんの「薫さまの誕生日プレゼントで異世界に連れて行ってあげたいの」という希望に沿って決めた実行日だったのだが、移動中に世界樹の中でレガ子ちゃんと再会した時「本当に女神さまだったなんて思っていなかったの」と言われてしまった。

 レガ子ちゃんは、私のことを〝霊力が強い妄想残念系の巫女さん〟だと思っていたそうだ(しくしくしく・・・)。

 


 レガ子ちゃんに与える加護の内容は、事前に彼女から聞いていたリクエストを可能な限り詰め込んであげた。

 異世界移住の第一条件だった「薫さまの為に異世界でもネット接続が欲しいの」は、比較的かなえるのが簡単だった。

 というのも、私自身が〝1028b〟の世界にあるインターネットという仕組みを世界樹中で暇つぶしに活用しているため、その回線に世界樹の霊脈経由でつなげば良いだけだったからだ。

 

 バーベキューとかのために、クルマの中に一番物資が多く積まれているこのタイミングを狙うため、イベントリには登録した物資の量を毎日0時にマナを使って回復させる加護もかけてた。

 ちなみにこの加護を利用して、レガ子ちゃんの生命線でもあるクルマの燃料も満タンに戻るようにしておいた。


 こうしたクルマの管理システムやレガ子ちゃんらのレベルアップシステムは、私がプログラムを組んだ。

 実はこうしたプログラムの作成って私に結構合っているようで、最近はこの世界樹の管理にさまざまなお手製プログラムを走らせていたりもしている。


 レガ子ちゃんらへのレベルアップシステムは魂に直接インストールするため、レガ子ちゃんは純粋な精霊ではなくなってしまうし、そこで眠っている薫さんも純粋な人間ではなくなってしまうが、まぁそこは仕方が無いと思う。

 ついでに、この薫さんには勝手な行動をされないように、レガ子ちゃんの本体の付属品として登録して運命共同体になってもらう事にした。

 その代わりに毎日0時になれば、病気も怪我も全回復するのだから、文句を言われる事は無いはずだ。


「うん。

 わたしって天才かもっ♪」


 そう口にして、とりあえず自画自賛してみた。


 

 最後に、この薫さんと呼ばれている人間に、マナを魔力に変換してを扱うために必要な〝魔法因子〟を埋め込む肉体改造を行う。

 〝1028b〟の世界に住む人間は、私が大昔にやったドジのせいでその身体から〝魔法因子〟が抜け落ちてしまってるため、このまま〝1028a〟の世界に送り込んでも魔力を作る事が出来ず、せっかく作ったシステムが動かないからだ。


「せっかくだから、大き目の〝魔法因子〟を埋め込んじゃいましょう♪」


 その方が、今後大きな魔力を必要とするシステム改修が必要になった時にも対応できる。

 レガ子ちゃんの〝魔法因子〟は、もともと精霊としては規格外に大きかったため、あのままでも問題ないはずだ。


 肉体改造されている最中もスヤスヤと眠っている薫さんの寝顔を見てふと思った。


「レガ子ちゃんが、この異世界で私の思い通りに動いてくれるかどうかは、この薫さんに掛かっているかもしれない・・・」


 今頃気づいても遅い事実に「にゃうん」と衝撃を受けながらも、なんとか気持ちを立て直し、全ての準備を終えることができた。

 薫さんの肉体改造の最中に動揺したけど、たぶん手元は狂わなかった・・・はず。




 全ての下準備を終えたレガ子ちゃんたちを、〝1028a〟の世界にあらかじめ用意しておいた安全なポイントに転送させると、私は先ほど思いついたプランを実行に移す事にした。




「よしっ、今後の為に活動記録の日記をつけることにしましょう!」


 こうして、私は初めて一人の人間と長期間にわたって一緒に行動する仕事を始めたのだった。



レガ子「女神さまより下位の存在であるレガ子としては、今回のお話はノーコメントで・・・」


作者「というより、リーゼと密談して決めていた薫くん拉致計画が薫くんに知られると怖いから逃げているだけでは?」


薫「ほほぅ・・・、どうやら今回の異世界転移騒動の発端には、レガ子もそれなりにかかわっていたのかぁ・・・・」


レガ子「あっ・・・手をワキワキさせながら近づいてくるのは怖いからやめてほしいのっ(汗)」

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