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第1章 第38話(第45話) ~汎用式魔力剣(仮称・ヒートソード)~

いよいよ第1章も次の第39話(第46話)で終わりですね。

第1章がどんな形で終了するのかは、3日後に投稿(予定)を待っていただくとして、昨年11月のはじめにスタートした「そして今日も俺らは地平を目指す! ~レガ子と旅する異世界ドライブ~」も、四苦八苦しながら約3ヵ月半ほどがんばってここまで来る事ができました。

応援してくださった皆さま、ありがとうございます。


第2章は現在数話分を執筆中ですが、これまでに比べるとハイペースでさまざまな事件などが起こる予定です。

今後も、よろしくお願いいたします。


ということで、前回までのおさらいです。


3人(2人と1台)揃ってレベル6→レベル7へ

レガシィが攻撃用ミサイルを装備。

ついでに偵察用ドローンも装備。

主人公もアイテムを作る能力を取得したので、剣を改造してみた。

 リーゼが構えて魔力を送り込んだ時にも、この剣は同じように強い発熱現象を起こした。

 ということは魔力が扱える人間が使えば、この剣は誰でも同じような効果を発揮するのではないだろうか?

 そんな事を考え付いた時、屋敷の中から湯浴みと着替えを終えたクリスが、侍従長のテオと共に出てきた。


「カオル殿、今度はいったい何を作り出したのじゃ?」


 俺が手にしていた赤銅色のブロードソードを見て、クリスがそう問いかけてきた。





 クリスは今までの経緯と経験から、俺らがまた新しい魔導器を作りだした事を感じ取ったみたいだ。

 新しいおもちゃを見つけた子供のように、目を輝かせて俺たちの方に近づいてきた。


「ちょっと聞くが、クリスは魔力を操れたりするか?」


「なんじゃ突然。

 あまり強くは無いが、我も少しだけなら魔力を扱う事が出来るぞ」


 それを聞いた俺は、剣先を地面に付けた状態で「この剣の柄を握って魔力を流してみてくれ」とクリスに頼んでみた。

 一国の姫君に剣を握らせようとした俺の事を、侍従長のテオさんが咎めようとしたが、クリスは「構わん」とそれを押し留めた。


「これに魔力を送ればいいのじゃな?」


「ああ、危険はないと約束するが、刀身の部分には絶対に触るなよ」


「分かったのじゃ」


 クリスが剣に魔力を送るために集中し始めると同時に、剣の刀身が熱を発しながら赤く光り始めた。


「か、カオル殿、これは!?」


「以前ベルドの町長の屋敷で、クリスに『誰もが使える汎用性のある魔法の剣が作れないか?』と訊かれた事があったよな。

 なので、今、俺が出来る範囲で作ってみたんだが・・・な、とりあえずは汎用式魔力剣・・・〝仮称・ヒートソード〟とでも命名しておくか」


 あの時は「作るつもりは無い」と即決で断っていただけに、ちょっとばつが悪いのだが、俺は驚くクリスにそう答えた。


「俺が使う紅雨べにさめのような威力は出ないし、常に魔力を流していないと発熱しないので、実戦で使い物になるかどうかは疑問なんだけどな」


 そんな俺の発言を聞き、考え込むクリス。

 いきなり矜持を覆した俺に呆れられたかな?


 しかしクリスは次の瞬間、俺に向かって「我の望みを聞き入れてくれて嬉しいのじゃ。そなたの行いに心から感謝する」と頭を下げてきた。

 そして、自分が握っていた剣を、横に控えていた侍従長のテオさんに「テオ爺よ扱えるな?」と言って手渡した。


 テオさんは「昔取った杵柄でよろしければ」と前置きして、クリスから剣を受け取ると、まずはその刀身をじっくりと眺めた。


「これは・・・鉄とも鋼とも違う・・・強いて言うなら、オレイカルコスによく似ていますな。

 カオルさま、この剣、実戦に近い形で振るってみてもよろしいですかな?」


「かまいませんが、気をつけてくださいね」


「ほっほっほっ、では模擬戦相手に怪我をさせないよう、十分注意いたしましょう。

 そこのピート殿、少しだけお相手を頼めますかな?」


 屋敷の入り口で警備をしていた兵士がそのピートさんなのだろう、テオさんの指名を受けてこちらに来ると剣を抜いて構えた。


「かつて剣聖と呼ばれた伝説の騎士団長に稽古を付けていただけるとは光栄です」


 え?

 侍従長さんって、そんなに凄い人だったの?


「ほっほっほっ、今はただの年寄りですよ。

 では、参るっ!」


 温和な笑みを浮かべていたテオさんの表情が一瞬で戦士のものへと代わり、目にも留まらぬ速さでピートさんの間合いに飛び込んでいた。


 ヒートソードに魔力を込めるタイミングを上手にコントロールしているのだろう、剣を打ち合わす瞬間にもっとも発熱が高まるようタイミングを合わせながら、剣を振るっていた。


「す、すげぇ・・・」


 テオさんが繰り出す斬撃の凄さに圧倒される。

 とてもじゃないが、レガ子が作ってくれた魔導器によるチート能力抜きでは、あの斬撃を防ぎきる自信はないぞ。

 そしてその斬撃をかろうじてでも防ぎきっている、あのピートさんも凄い。


 そんな剣同士の打ち合いが10回ほど繰り返されたとき、ピートさんが使っていた剣が砕け飛んだ。

 それによりこの模擬戦はあっという間に終了したのだが、砕けた剣の刀身を拾って眺めて見ると、打ち合いをした場所の刃がボロボロになっていた。

 その一方、テオさんが使っていたヒートソードは刃こぼれ一つせずに、その美しい姿を保ったままになっていた。


 その歴然とした武器としての力の差に皆が唖然としている中、この屋敷の主であるマロウさんが帰宅してきた。


「お前ら、人の屋敷の玄関前で何を騒いでいるんだ?」




 帰宅したマロウさんに事情を説明すると、彼の興味は俺が作った魔力剣(仮称・ヒートソード)に注がれていた。

 自身の手に握ったヒートソードに何度も魔力を通して素振りをしながら、刀身の変化を確かめている。


「ピート、爺がお前の剣をダメにしてしまってすまなかった。

 爺よ、うちの武器庫からよさそうな剣を代わりにピートに支給してやってくれ。

 あと、その鎧の修復もうちで持とう」


 マロウさんがそう言って初めて気がついたのだが、ピートさんが身に付けていた鎧には無数の傷が入っていた。

 テオさんの攻撃は全てピートさんが剣で受け止めていたはずなのだが、ヒートソードから飛び出した熱刃の余波が鎧の表面を削っていたらしい。


 やがて、マロウさんは俺の前に歩み寄り、「カオル殿、コレと同じ剣をあと何本か作ってもらうことは出来るか?」とヒートソードの制作を依頼してきた。


「思いつきで作った試作品ですが、コレでいいのですか?」


「今の装備の剣がナマクラに見えちまうんだから、コレでも十分すぎるくらいだぞ」


「作り出すのに自分の魔力や貴重な魔力結晶を消費するので、あと5本くらいであれば」


「とりあえずそれで十分だ」


「あと、元になる剣をいただけると助かります。

 その試作品は、盗賊から取り上げた質の悪い鉄剣をベースにしていますので、状態の良い鉄剣であればもう少し性能が上がるかもしれません」


「コレの元が盗賊のボロ剣だというのか?」


 自分が手にしているヒートソードを改めて眺め、呆れたという感じで驚くマロウさん。

 すぐにテオさんの方を向き「爺よ、すまんが屋敷中を探して、状態が最高に良い鉄の剣を5本持ってきてくれ」と指示を出していた。




 しばらくしてテオさんが屋敷のメイドたちを使って5本の鉄剣を俺の元に届けてくれた。

 どれも試作品の元にしたボロ剣との違いが、ど素人の俺にも分かるくらいの名刀だった。

 なので、まだ明るいうちに依頼された分を作ってしまおうと考え、俺はその剣をレガシィのところまで運んでもらい、クリエイトの作業をする事にした。


「カオル殿、我も作るところを見てもいいか?」


 俺が行う剣を作り変えるという行為に、興味津々の様子でクリスが近づいてきた。


「かまわないが、見ていて面白いもんじゃないぞ。

 それに作り方も特殊すぎるから、他の魔導器製作者クリエイターの参考にもならんぞ」


 それでも構わないと、クリスが俺のすぐ横で作業を眺めはじめた。

 その後ろには、同じように好奇心隠そうとしないマロウさんとテオさんの姿もあった。


 俺は先ほどと同じように、赤い魔力結晶化BB弾を5粒と一緒に剣を1本クリエイトモードに移行させたイベントリに入れた。

 そして操作パネルでもあるタブレットPCの画面に手を当てて魔力を送り込み、クリエイトをスタートする。


「カオル殿、これはいつもの収納とは違うのか?」


「このイベントリには大まかに分けて2つの機能があって、一つはいつも使っている無限収納庫としての役割、そしてもう一つがレガ子や俺が道具を作る時の精製炉みたいな働きをするんだ。

 今は、その精製炉のような状態で動かしている」


 2回目のクリエイトなので、なんとか会話しながらイメージを送り込む余裕ができていた。

 どうやらこのクリエイトという行為は、回数をこなす事で操作者の負担が徐々に減るようにできているようだ。


「つまり、カオル殿は工房ごと一緒に旅が出来るというわけなのじゃな」


「この工房の能力は、(リーゼと)レガ子の協力があって実現可能な機能だから、他の魔導器製作者クリエイターが同じ方法で道具を作るのは無理だぞ」


 というか、俺は本物の魔導器製作者クリエイターらがどうやって魔導器を作っているのかすら知らないんだけれどな・・・(汗)。


 クリスとそんな会話をしながらクリエイトを続けると、1本目のヒートソードが完成し、イベントリから飛び出してきた。

 俺は、それをマロウさんに手渡し、出来栄えの感想を聞いてみた。


「さっきの試作品も凄いと思ったが、これは桁違いの出来栄えじゃないか?

 爺はどう思う?」


 マロウさんは受け取った剣を見てため息を漏らすと、今度はその剣をテオさんに手渡した。


「少し魔力を通させていただきます。

 ・・・

 ・・・・・

 これは、先ほどの剣よりも、魔力に対する反応が俊敏になっていますね」


 元の素材の良し悪しで、そんな違いが出てくるのか・・・勉強になる。

 それはともかくとして、このままではじきに日が暮れてしまうため、俺は大急ぎで残りの4本も仕上げてしまう事にした。


 1本を作るのに10分ほどかかるため、3本目のクリエイトを始めた頃には、おそらくテオさんの計らいにより屋外でのお茶会が俺の真横で催されていた。

 レガシィ横の中庭には、いくつもの屋外テーブルと椅子が置かれ、屋敷のメイドたちが暖かいお茶や茶菓子を運んできていた。


 奥のテーブルに居るクリスは、マロウさんと一緒にすでに出来上がっている3本の魔力剣を見比べて、なにやら意見交換をしている様子だった。


 視界の端には、おそらくクリスの服を借りたのであろう、着飾ったアリシアやミャウの姿も見えた。

 2人とも、メイドさんたちにもてなされており、お嬢様気分を満喫しているようだった。

 くそっ、俺も彼女たちのそばに行って、その可愛い姿をじっくりと眺めたいぞ。


 そんな俺の視線を察知したのか、アリシアがお茶菓子を持って俺の元に近づいてきた。


「お兄ちゃん、あ~~んしてっ♪」


 アリシアが俺の口元に差し出してくれた、クッキーを食べる。

 砂糖が貴重品の世界なので、甘さは抑え目だが、小麦本来の素材の味を感じる事ができる素朴な美味しさだった。

 すると、アリシアは嬉しそうに2枚目、3枚目のクッキーを俺の口へと運んでくれた。

 そしてさらにクッキーを食べさせようとしてくれたので、俺はそれにストップをかけた。

 とたんにアリシアが寂しそうな表情になる。


「お兄ちゃん・・・もう、あ~んは嫌なの?」


 ぐはっ、その涙目での上目遣いは破壊力が高すぎるぞっ。


「そうじゃないよ。

 さすがにクッキーばかりだと喉が渇いたから、飲み物が欲しいんだ」


 飲み物が欲しいという俺の訴えにハッとなり、「ごめんなさい」と言ってトテトテと飲み物を取りにいくアリシア。

 うん、可愛いぞっ♪



「ロリコンですねぇ~~」

「すっかりロリコンさんなのっ」


 そんな俺の姿を、すぐ隣のテーブルでお菓子を食べているリーゼとレガ子が呆れた眼差しで見ていた。

 くっ・・・

 お前ら後でアイアンクローの刑だからな・・・。




 最後の5本目が完成間近になってきた頃、俺のは服の裾を引っ張られる感覚を感じて振り返った。

 そこには地面に届くほどに裾の長いドレスを着たミャウの姿があった。


「あんちゃん・・・ボクこんなお姫様みたいな服なんて着たことにゃいんだけど、に、似合っているかにゃ?」


 普段は男のように元気一杯にはしゃいでいるイメージしかないミャウが、瞳に不安げな色を浮かべてジッと立ち竦んでいる姿は、かなりドキッとくるものがある。

 そうか・・・これがギャップ萌えというやつなんだな・・・。


「よく似合っていて、とっても可愛いよ。

 もしネコ族の国があるとしたら、ミャウはそこのお姫様だな」


 そう言って安心させるように、ミャウの頭を撫でる。

 撫でられたミャウは、気持ちよさそうに目を細めてしばらくおとなしく俺に寄り添っていた。

 そしておもむろに俺の頬にキスをすると、「ありがとうだにゃん。少しだけ自信が付いたにゃん」と言い残して、クリスたちの所に戻っていった。



「ニヤニヤ・・・やっぱりロリコンですねぇ~~」

「ニヤニヤ・・・相変わらずロリコンさんなのっ」


 そんな俺の姿を、先ほどよりも生暖かい目で見ていたリーゼとレガ子が、ここぞとばかりにおちょくってきやがった。


 お前ら・・・本当に後で覚えてろよ・・・。




 5本全ての鉄剣をヒートソードに作り変えた俺は、最後の1本を持ってマロウさんの所に向かった。

 途中、リーゼとレガ子の頭上に聖剣スマートフォーンによる一撃を入れることを、もちろん忘れずにだ。


「これが最後の1本です。

 でも、試作品を入れても6本だけのヒートソードでは、戦争になったら役に立たないのでは?」


「まぁたしかにこれだけじゃ戦局には役に立たないな・・・」


 ガーデンテーブルでお酒を飲み始めていたマロウさんが剣を受け取り言葉を濁す。

 そしてその言葉の続きを、すぐそばに居たクリスが続けた。


「じゃが、我が国にも魔法を付与した量産型の武器があるという事実は、帝国の傘下に入る事になびき掛けていた周辺諸国への良い牽制となるはずじゃ」


「そういうこった。

 今は数じゃなくて、この国にコレがあるという事実を見せるための客寄せが必要ってことだ」


「で、伯父上の騎士団は、その客寄せ役を喜んで引き受けてくれるのじゃろ?」


「ふん、こんな面白い剣を使わせてもらえるんだ、どんな大道芸でもして見せるから、最高の舞台を用意しろと、王都の軍本部には伝えておくよ」


 そう言って豪快に笑うマロウさんは、姪っ子であるクリスの頭を撫でていた。





 俺がレガシィのイベントリ周りを片付け始めたのに合わせて、周囲で行われていたお茶会もお開きとなった。

 周囲があらかた片付き始めた頃、ダメージから復活したレガ子が俺のところに文字通り飛んできた。


「薫さま、大変なの、大変なのっ」


「どうした、叩かれすぎてついに頭のネジでも外れたか?」


「それについては後でクレームを入れるの。

 でも今はそれどころじゃないのっ。

 正体不明の飛翔体が二つ、この街に向かって飛んできているのっ」


 俺がレガ子からの緊急事態を耳にしたちょうどその時、屋敷の中に騎士隊の伝令が飛び込んできた。


「隊長殿、帝国のものと思われる竜騎兵のワイバーンが2体、こちらに向かって飛んできております!」


 レガ子が察知した正体不明の飛翔体は、どうやら帝国の竜騎兵と呼ばれるもののようだ。




リーゼ「ニヤニヤ・・・作者様もロリコンですねぇ~~」


レガ子「ニヤニヤ・・・アリシアちゃんが薫さまにクッキーを食べさせるシーンを書きながら『俺が代わりてぇ~』とか叫んでいたのっ」


作者「ほっといてくれ・・・(涙)

   ロリコンで何が悪いっ!

   変態で何が悪いっ!」


薫「そーだ、そーだぁ!」


レガ子「この人達、開き直りやがったの・・・」


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