第1章 第37話(第44話) ~艤装・垂直発射式噴進弾と偵察用ドローン~
週末に展示会の取材がお仕事あったため、過労からちょっとダウンしてしまい、最新話のアップが遅くなってしまいました。
今回、主人公らと一緒に異世界に行った自動車のレガシィの方に初めて武装が付きます。
しかも、かなりチートなマップ兵器・・・(汗
これで主人公の活躍が今後食われそうで怖いです(苦笑)。
ということで、前回までのおさらいです。
レガ子が自分でレガシィを操作して、精霊さんインサイド・自動運転。
(やっちゃえ異世界!)
クリスの母の実家に到着。
レガ子がレガシィへの武装を提案。
俺はそんな二人を無視してレガシィのところに戻ると、後部ハッチを空けてイベントリから整備用の寝板を取り出した。
深夜0時に状態復元の加護によって破損があっても自動修復されるため、実際に整備をするわけではないが、荒地を200キロ近くも走った事による下回りのダメージを自分の目で見ておきたかったからだ。
「で、レガ子は具体的にはどんな武装をこのクルマにするつもりなんだ?」
「とりあえず、コレとコレを装備しようかと思っているの」
レベルアップで可能になるレガシィへの装備リストが表示されたタブレットを持ってきて、その候補を指で指し示すレガ子。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁ!」
そこに載っていたのは、クルマの装備とはまったく程遠い内容だった。
「なぁ・・・ココに〝垂直発射式噴進弾発射口〟と書いてあるように見えるんだが、俺の気のせいかな?
しかも、装備ジャンルの分類が〝艤装〟とか書いてあるようにも見えるんだが・・・」
「気のせいじゃないのっ。
まったくもってそのままの内容なのっ」
クルマのオプション装備とはものすごく縁遠い内容に一瞬眩暈を覚え、目の錯覚を疑ったのだが、やっぱそうなのか・・・。
俺の愛車は、いったいいつイージス艦のような扱いになってしまったのだろうか・・・。
この進化の内容をプログラムした張本人であるリーゼの方を見ると、彼女は下手な口笛を吹きながら明後日の方向を向いていやがった。
自分の趣味を完全に盛り込んで、遊んでいやがるな・・・。
「弾頭を一つ装填するのに、走行経験値(獲得済走行距離)を1つ(1Km分)失うけど、弾頭の種類が対空や対地、誘導弾から気化爆弾やナパームまで自由に組み合す事が出来て、とってもお得なのっ」
おい、そこの女神様よ・・・
気化爆弾とかナパームって、環境破壊にならないのか?
「今回のレベルアップはレガ子が好きなように装備を選べ・・・と言った手前、反対はしないが、無意味な大量虐殺はしないからな」
「そこは大丈夫なのっ。
ちゃんと意味のある大量虐殺しかしないのっ♪」
いやいや・・・
その返事にもはや不安要素しか感じないよ・・・。
「とりあえずスキルポイントを使う前に、各自のレベルアップを済ませてしまおう」
そう言ってレベルアップ画面を操作し、俺とレガ子、そしてレガシィのステータスがそれぞれがレベル7へと変化した。
俺は前回のレベルアップで獲得したスキルポイント2を全部貯金していたので、今回獲得した2ポイントと合わせて4ポイントをスキル獲得に使用することが出来る。
4ポイントが溜まった事で、今まで見えなかった新しい獲得可能スキルが表示されていた。
〝全身防御フィールド:3ポイント〟
若干の魔力を消費し続けることで、全身の外側に薄い防御膜を作り続けることが可能になるのか・・・戦闘時に身を守るのに便利そうだ。
〝パーツ製造スキル:4ポイント〟
この世界の素材を活用して、レガシィのイベントリ内で新しい製品をクリエイトすることができる・・・か、コレってレガ子の装備クリエイトとどこが違うんだ?
この項目が気になった俺は、このシステムの製作者であるリーゼを呼んで、その内容を聞いてみることにした。
「あぁ~~それはですねぇ~~。
薫さんの事を魔導器製作者に仕立て上げちゃった事もあるので、そのつじつま合わせに急遽項目を追加してみたんですよぉ」
このポンコツ女神が急ごしらえで作った項目だったのか・・・大丈夫か?
「この世界にある材料を使って、その材料の特性に合った道具に姿形を加工することが出来るんですよぉ。
複数の素材を組み合わせてもOKですよぉ。
凄いでしょ? 凄いでしょ!?
レガ子ちゃんの〝装備クリエイト〟と違うのは、精霊魔法を付加した武器は作れない・・・という制限くらいじゃないでしょうかぁ」
生産系のスキルなのか。
ふむ・・・俺が使う魔法武器の生産はレガ子に頼るとしても、それ以外の部分では俺も何かしらを作れたほうがいいよな。
なので、今回はこの〝パーツ製造スキル〟とやらを取ってみることにした。
自分が特別に作った項目が選ばれて嬉しかったのだろうが、俺の行動を見たリーゼが「わーい、わーい」とやたらとはしゃいで鬱陶しかったので、延髄に手刀を入れて黙らせた。
「あいたぁっ!
うぅー、何でいきなりチョップするのぉ」
「すまん、特に理由は無いのだが、強いて言えばウザかった」
「しくしくしく・・・」
「薫さま、なに女神さまをいぢって遊んでいるんですか、なのっ」
「遊んで・・・・(しくしくしく)」
〝レガ子の心無い一言に、リーゼがさらに落ち込んだ。〟
「心の声を口に出して、その責任をレガ子におっ被せようとしないでほしいの、なのっ」
アレ?
おかしいな・・・
今のモノローグ、もしかして口に出していたのか?
「まぁそんな事より、レガ子はスキルの獲得は終わったのか?」
「今回はこの子への艤装にレガ子のポイントも必要になるの。
なので、自分の能力にはポイントを使わないの」
まぁレガ子がそれでいいなら構わないけどね。
「で、最初に話していたレガシィへの武装追加になるわけだよな?」
「そうなのっ。
レガ子の1ポイントとこの子の2ポイントを使って、この〝垂直発射式噴進弾発射口〟というのを追加しようと思うのっ!」
スキル項目の解説を読むと、レガシィの天井部分に取り付けられたルーフレール上に小さな発射口が片側に8個ずつ、合計16個の発射口が出来、そこから葛根湯の小瓶サイズの小さなロケット弾が飛び出すようになるそうだ。
装填するロケット弾の種類は個別に設定する事が出来、レガ子(ただし専用シート着座時)による16発の同時管制制御も可能らしい。
ロケット弾は、大気中のマナを使って実体化させて装填され、1発を生み出すのにレガシィが獲得した経験値(走行距離)を1つ消費する。
俺はレガ子の提案に特に反対しなかったため、すぐにスキル実行が行われ、ルーフレールが淡く光りだした。
光が治まった後のルーフレールには、その上面に発射口らしき小さな正方形のモールが、片側に8個づつ刻まれていた。
これ、試射してもらって、その威力を見てみたいきもするんだが・・・
下手をすると街が大騒ぎになりそうだからここでは難しいよな。
まぁ、今度の移動時に敵と遭遇したときに試せばいいか。
「もう一つは、何を追加するんだっけ?」
一つ目の装備追加が完了した事を確認し、次に装備するものについてレガ子に問いかけた。
「周辺確認用に、この〝偵察用ドローン〟というのを獲得したいの」
無人の自動操縦式ドローンとは、また今風の装備が出てきたな。
そんなことを思いながらリーゼの方を見ると、ニヤニヤしながら俺たちの方を眺めていた。
彼女にしてみれば、自分がデザインしたゲームで遊ぶプレイヤーを眺めるゲームマスターのような気持ちなんだろうが、なぜかあのニヤニヤは見ているとイラッとくる。
くっ、あのニヤけた顔の頭上に、また手刀を入れたいっ。
レガ子が提案してきた〝偵察用ドローン〟は、レガ子のスキルポイント一つと、レガシィのスキルポイント1つで装備する事が出来るらしい。
攻撃能力は無い全長20センチほどの小型ドローンをルーフレールを使って射出し、周辺の地形のスキャンや索敵、映像の中継などに使う事が出来るらしい。
同時に展開できるドローンは4個までで、ドローン本体は大気中のマナを使って実体化させ、1機作るのにやはりレガシィが獲得した経験値(走行距離)を1つ消費するようだ。
しかし、このドローン・・・なんで形状が元の世界の戦闘機F-35に似ているんだ?
しかも、VTOLタイプのF-35Bかよっ! なんてマニアックな・・・。
この辺の感性は、完全にリーゼの趣味なんだろうなぁ。
もしかしてリーゼって、ミリタリーオタクだったりするのだろうか?
これなら特に危険性があるものでもないし、別に装備させても構わないだろう。
と言うか、見知らぬ土地を旅するのだから、安全な偵察手段は大事だと俺も思うしな。
俺の許可を得たレガ子により、この装備もスキル実行が行われた。
今回はルーフレールの前後にあるマウントカバー部分が光ったのだが、この場所に何か意味があるのだろうか?
「薫さま、さっそく1機飛ばして、この周囲の地形とかの情報収集をしてみたいのっ」
ロケット弾は無理だが、コレなら問題は起きないだろう。
「このドローンって、どれくらいの距離と高度を飛行できるんだ?」
「1回の射出で5時間くらいは飛び続けることができるみたいなのっ。
高度は600メートルくらいまでで、飛行コースはプログラムで自動設定できるの」
それを聞いて少し考え、俺はレガ子にテスト飛行のコースの指示を出してみた。
「ドローン射出後、このロイドを中心に時計回りに旋回しながら徐々に半径を広げて行って索敵し、3時間飛行後に直線距離で帰還させてみてくれ。
高度は300メートルでも、地表のスキャンに影響は無いか?」
「かなり高性能なセンサーが搭載されているみたいだから、たぶん問題ないと思うの」
「じゃぁ、それで頼む。
今日は快晴で雲が無いが、低い雲があるときに高度500メートルくらいの雲の上からの索敵精度も一度テストしておきたいところだな」
ちなみに、俺の居た世界にあるスカイツリーの天望回廊の高度が450mくらいだ。
天候の悪いときにあの天望回廊に登った事がある人ならイメージできると思うが、高度500メートルもあれば低い雲が来たら間違いなく雲の中や上に出れる高さである。
「ラジャなのっ。
では1機実体化させるのっ」
レガ子の操作により、ルーフレールの後にあるマウントカバー部の上にマナと思われる光が集まり、徐々にF-35Bに良く似た全長20センチくらいの物体に変化していった。
そして変化が終わり、飛行準備が整ったドローンはルーフレールをカタパルト代わりにして射出され、プログラムされた飛行ルートへと飛んでいった。
ドローンが収集した各種情報は、レガ子シートの専用端末に集められ、立体的な地形地図や、生命反応の種別や数の分析など各種データに生成され、タブレットPCなどのモニターにその結果を表示させる事が出来るそうだ。
リーゼは飛んでいったドローンを見送りながら、「えへへぇ・・・自分がプログラムした機能とはいえ、やっぱかっこいいなぁ・・・」と呟いていた。
うん、やっぱコイツはミリタリーオタクで間違いないだろう。
飛び立ったドローンが見えなくなったことを確認した俺は、イベントリから移動途中に撃退した盗賊から接収した剣を1本取り出した。
本来は、明日あたりにでもメイベル商会に売りに行く戦利品の一つなのだが、自分が獲得した新しいスキルを使ってこの剣を変化させてみたくなったのだ。
「薫さま、そんな剣を取り出してどうするのですか?」
「俺もアイテムを作るスキルを身に付けたから、ちょっと試してみようと思って・・・」
レガ子の疑問にそう答えながら、イベントリからレガ子が創り出した魔力結晶化BB弾を取り出す。
赤い炎の魔力結晶化BB弾を5粒ほど手に取ると、それと先ほどの剣をクリエイトモードい切り替わったイベントリに投入する。
「俺はレガ子のように精霊魔法を付加したり、物質だけを変化させるクリエイトは出来ないみたいなんだけど、投入した素材の特性を強化させたり、合成したりは出来るみたいなんだ。
だから普通の剣を強化しながら、魔力結晶を練り込んだらどうなるのか興味が出てな・・・」
タブレットの画面に手を当てて魔力を送り込み、自分のイメージをクリエイトに反映させるため集中する。
普段レガ子が行っているクリエイトが、いかに集中力を必要とするものなのかを知り驚くと共に、レガ子に頼りっぱなしだった自分を少し反省する。
10分ほどのクリエイトで、赤銅色の刀身に変化したブロードソードがイベントリから現れた。
色こそ赤銅そのものだが、剣としての強度は元となった鉄製の剣よりも硬く、そして軽くなったようにも感じられた。
俺はその剣を取り、握った柄に魔力を送り込んでみた。
すると、赤銅色の刀身が刃の部分から全体にわたって赤黒く発光し、高温の熱を発し始めた。
「なるほど・・・こういう効果が付加されたのか・・・」
俺は一旦魔力をカットして剣の熱を下げると、その剣をリーゼに渡して構えてもらうことにした。
「おろおろ・・・
薫さん、わたし剣で戦ったりできませんよぉ」
「安心しろ、リーゼが剣で戦えるとは思っていないから。
リーゼも魔力を握った部分から剣に送ることが出来るだろ?
俺と同じように剣が発熱するかどうか確かめたいんだ」
「そういうことなら・・・ではぁ、え~~いっ!」
なんだろう・・・
当の本人は真面目に力を込めてくれているみたいなのだが、どうにも気合が抜けていくこの掛け声は・・・(汗)。
リーゼが構えて魔力を送り込んだ時にも、この剣は同じように強い発熱現象を起こした。
ということは魔力が扱える人間が使えば、この剣は誰でも同じような効果を発揮するのではないだろうか?
そんな事を考え付いた時、屋敷の中から湯浴みと着替えを終えたクリスが、侍従長のテオと共に出てきた。
「カオル殿、今度はいったい何を作り出したのじゃ?」
俺が手にしていた赤銅色のブロードソードを見て、クリスがそう問いかけてきた。
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各自の現在レベルや獲得スキル一覧
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■如月 薫 (種族:自動車部品、職業:ドライバー)
レベル7(第44話時点)
○反応速度強化・レベル2
○視野強化・レベル1
○危険予知・レベル1
○パーツ製造スキル
(貯金0ポイント)
■レガ子 (種族:八百万の精霊、職業:痛い子)
レベル7(第44話時点)
○武装クリエイト能力
○プラズマアロー
○ファイヤーボール
○防御シールド発現
○アイスアロー
(貯金6ポイント)
■レガシィ
レベル7(第44話時点)
○車体変形・車高リフトアップ・レベル1
○車体変形・ビッグタイヤ化・レベル1
○車体強化・ボディ硬質化・レベル1
○タイヤ強化・防弾・防刃化・レベル1
○オーバーフェンダー化・レベル1
○追加装備・ラリー用ボンネットライト
○追加装備・ダブルチューブバンパーガード・フロント
○レガ子用シート
○武器艤装・垂直発射式噴進弾
○オプションユニット・偵察用無人ドローン
(貯金1ポイント)
レガ子「ふふふふ・・・、これで異世界最強の座はレガ子のものは確定なのっ!」
薫「強力なおもちゃ(武装)を得て、レが子が調子に乗っている・・・」
リーゼ「でもアレ・・・強力すぎるから接近戦とか乱戦の時は使えないと思うなぁ」
薫「ガタブル・・・・・」
レガ子「そういえば以前活動報告で書いたネタ話に、魔導砲とかいう武装が出たのっ♪
アレがほしいのっ!」
作者「あれ・・・究極のマップ兵器だからな・・・(汗」