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第1章 第34話(第41話) ~城壁要塞都市ロイド その2~

いままで謎(?)になっていた部分が多かったクリスちゃんの事が、いろいろ明らかになってきました。

今回はロイドに長期滞在する予定はありませんが、おそらく今後はちょくちょく立ち寄る事になる街になるとおもいます。


ということで、前回のおさらいです。


ロイド到着。

南の城壁門は大行列。

クリスの口利きで行列回避の計画。

クリスの本名と、実はお姫様であった事が判明。

 しばらくクリスと立ち話をしながら城門のところで待っていると、先ほどの衛兵が全身に白銀の鎧を着込んだ身分の高そうな男性を連れて戻ってきた。


 その男性はクリスを見るなり彼女の前に跪き、深々と頭を下げて礼をした。


「まさかクラリス姫が自らこのような場所においでになるとは思わず、私の部下が大変失礼しました」


 そして先ほどの衛兵の方を向き

「貴様っ、なぜ姫様をこのよう場所で待たせたのだっ!

 貴族用の待合室に、なぜ案内しなかったっ!」

 そう叱責を飛ばした。


 なるほどね。

 このような城門には、身分の高い来訪者を確認作業の間待たせておくための待合室があるのね。

 たしかに貴族の偉い人を外に立たせて待たせておくのは拙いのだろうが・・・

 さすがに今回の件はなぁ・・・

 あの衛兵さんもホンモノの姫様が一人で歩いてやってきて、門番に話しかけるとは思いもしなかっただろうし、責任を取らすのはかなり可哀想な気がする。


「そう怒らないでくれ、マロウ騎士団長殿。

 一国の姫が、このような格好で突然城門を訪れるほうが異例なのじゃ。

 真偽を確かめることなく、迂闊に城内に招き入れなかったことを評価してあげては貰えんかのぅ」


 クリスも同じことを思ったのか、騎士団長と呼んだ男性に、衛兵を罰しないようお願いしていた。


「クラリス姫がそうおっしゃられるのであれば・・・。

 貴様、姫様のお優しい配慮にに感謝しろよ!」


「はっ!」


 マロウ騎士団長は衛兵にそう告げると、今度は俺の方を睨み、この世界の人間からすれば奇妙な服装をしている俺を怪しみ始めた。


「ところでクラリス姫、この者は?」


「カオル殿は、帝国の間者と思われる集団に捕らえられていた我を救い出してくれた英雄じゃ。

 本業は魔導器製作者クリエイターだそうじゃが、その実力はなかなかのもんじゃぞ。

 正直な話、王宮お抱えの魔導器製作者クリエイターや帝国中枢に居る魔導器製作者クリエイターよりも優秀ではないかと思っておる」


かなり持ち上げすぎな俺の紹介を聞き、マロウ騎士団長が俺を見る目がいっそうと厳しいものになった。


「このような優男が・・・ですか?

 たしかに軟弱な輩が多い魔導器製作者クリエイターというのは見た目からも納得できますが、姫様をお救いしたような英雄には見えませんな」


「ほぅ、マロウ殿はこの私が嘘をついているとおっしゃるのか?」


 クリスのこめかみが、若干ヒクついているようにも見える。


「いえいえ、滅相もない。

 ただ、恋は盲目ともいいますので、この男に惚れ込んでしまった姫さまが、この男を正しく評価できていないのではないかと・・・老婆心ながらに心配しておる次第でして」


 まぁ、普通は俺の存在って、かなり胡散臭いよなぁ・・・(汗)。

 それは自覚しているので、マロウ騎士団長の俺に対する評価に腹を立てたりはしないのだが・・・

 実はさっきから念話で飛んでくるレガ子からのクレームがすごいことになっている。


 どうやらこちらの会話を魔法で捉えて、聞き耳を立てていたらしい。


 すでにマロウ騎士団長のことを、攻撃魔法のロックオンに捉えているとか、攻撃してもいいかとか、かなり物騒なことも言っている。

 また、レガ子と一緒に留守番しているアリシアやミャウも、マロウ騎士団長のことを敵認定してしまったようで、レガシィの中のメンバーは、もはやいつ攻撃の発射ボタンを押してもおかしくないくらいの緊迫した状態になってた(滝汗。


 後方メンバーの状況に困り果てた俺は、隣に居るクリスにこの状況を伝えようと彼女の方を見てギョッとした。

 クリスもまた、マロウ騎士団長の言い様に、かなり怒っている様子が表情から見て取れたからだ。

 こんなにも不機嫌な表情のクリスははじめて見たぞ。



「我の言動で、ご老人に余計な心配をかけてしまったようですまなかったのぅ。

 そうは言うがなマロウ殿、カオル殿は本当に強いぞ。

 なにせ、つい先刻も隣村の少し先でメイベル商会の荷馬車を襲っていた盗賊13人を瞬殺してきたばかりでなぁ・・・」


 うわぁぁぁぁ、騎士団長を煽るのはやめてぇぇぇぇ。

 だいたい13人のうちの7割以上はレガ子が瞬殺したんだからなっ。


「サージ村で復興作業中の王国軍に紛れ込んでいた帝国の間者が我に牙をむいて襲ってきた時も、カオル殿が我の盾になって敵が放った攻撃用魔導器からのファイヤーボールを何度も防いでくれてなぁ。

 しかも、カオル殿にしか扱えない凄い魔剣で敵兵を一刀両断したほどじゃ」


 クリスのバカぁぁぁ!。

 大まかな概要は間違ってはいないが、話を誇張しすぎだぁ!

 騎士団長が俺を見る目が一気に厳しいものになってしまったじゃないかぁぁ!!


「カオル殿の事を〝優男〟などと言って見下していると、マロウ殿も負けてしまうかも知れんぞ」


「ほぅ・・・

 それは、ぜひとも一戦お相手願いたいものですな・・・」


 そう言いながら騎士団長が腰の剣に手をかける。

 俺は対称に困ってクリスの方を見て、助けを求めた。

 しかし・・・


「カオル殿、かまわんから相手をしてやれ。

 あの爆炎の剣で、マロウ殿ご自慢の顎鬚を焦がしてやるとよい」


 などと、逆に嗾けてきやがった(汗)。


 俺は、大きく、そして深くため息をつくと、「どうなっても知らないぞ」といって紅雨べにさめの柄を握って抜刀の構えを取った。


 当然の緊迫した状況に、門の衛兵らも対応できず、ただオロオロと俺と騎士団長の一挙手一投足を見守っていた。


 そんな彼らにクリスは

「衛兵らは動くでないぞ。

 後ろにいる我の仲間の精霊とかが、カオル殿への暴言にかなりご立腹の様子じゃ。

 衛兵らが動いたら、その場に妖精の魔法攻撃が来ると思え」

 と、俺らを止めることはせずに、衛兵らの介入だけをけん制していた。


 攻撃魔法が使える精霊が仲間にいると訊いて、騎士団長が少し驚いた表情を見せた。

 が、俺に対して放たれている剣気は衰える様子がない。


「このまま剣を収めていただけると、自分的には嬉しいのですが・・・」


 仕方がないので、こちらから和平交渉を持ちかけるが・・・


「なにを言うか・・・

 こんな楽しいそうなこと、やめる訳がないだろう」


 騎士団長はそう言い返して、ニヤリと笑いやがった。


 くそうっ、やっぱ〝脳筋〟系の肉体派かよっ!


「もし怪我しても、それを口実に俺を犯罪者扱いしないでくださいね」


「ふん、貴様程度がこの私を傷つけられるとでも思っているのか。

 その世間知らずな鼻をへし折ってくれる」



 こうなっては仕方ない・・・

 俺は覚悟を決めると、クリスに火傷をさせないよう彼女との距離をとった。


「ロードスリー!!」


 そう叫んで、俺は紅雨べにさめを最大火力で抜き放った。

 紅雨べにさめが放つ数千度の炎が、一気に周囲の温度を上げ、それを見た衛兵らが後ずさった。


 騎士団長は、俺の抜刀に合わせて剣を抜いて構えたものの、剣が高温の炎を纏っているという、通常では考えられない事態を目にして、そこから先の動きがとれないでいるようだった。

 とはいっても、そこはやはり多くの騎士を束ねる騎士団長。

 剣の構えに無駄がなく、隙がない。


 そんな騎士団長を見て、クリスが意地の悪そうな笑みを浮かべる。


「そうそうマロウ殿・・・

 言い忘れたが、カオル殿が使う武器は、すべてカオル殿が作った特製の魔導器になっておる。

 まともに切り結んで鍔迫り合いでもした日には、ご自慢の髭が燃える程度ではすまないから注意されよ」


 クリスの奴め、完全にこの状況を楽しんでいやがるな。




 緊迫した状態の中、剣を構えて睨み合う俺とマロウ騎士団長。

 そんな状態が、5分・・・いや10分ほど続いたかと思ったとき、突然騎士団長が高笑いをしながら剣を納めた。


「カオル殿と言ったか。

 すまん、すまん。

 年寄りというのは、どうにも疑い深くてなぁ。

 それが可愛い姪っ子が連れてきた見知らぬ男となれば、伯父としてはその実力を直接確かめたくなっても仕方なかろう」


 え?

 クリスが姪っ子?

 騎士団長さんは、クリスの伯父さん?


 予想の斜め上をいく突然の出来事に、呆然とする俺。


「とりあえずは、その・・・炎の剣を納めてはくれんか。

 あまりの熱気に、鎧の中の肉がステーキになりそうじゃ」


「え・・・あぁ、すみません。

 とりえあえず、この魔力に行き場を作って処理しますので・・・あの辺の岩場にこの炎を放出してもかまいませんか?」

 

 そう言って、俺は南門の外れにある岩場を指差した。


「マロウ殿、あそこら辺は岩以外は何もなかったと思うのだが・・・燃やしてもかわまんじゃろ?」


「岩を燃やす・・・とは姫が何をおっしゃりたいのか理解しかねますが、あそこであれば多少派手に破壊しても問題ありますまい」


 その言葉を聞いて、「だそうじゃぞ」とクリスが俺にウィンクしながら微笑んだ。


「では、失礼して・・・

 レジ○ンダリー・ファイヤー!!!」


 俺は久々に某エロゲのパクリ技を叫び、剣が纏っていた超高温の炎を、その岩場へと撃ち込んだ。

 着弾点に、爆発と炎の竜巻を引き起こしたソレは、ものの数分で治まったものの、そのあとには溶けてガラス状に変化した元岩がアートの様な風景を作り出していた。


 あまりにも非常識な出来事を目の当たりにして、衛兵らの何人かは放心し、手にしていた槍を地面に落としていた。

 そんな衛兵の様子を見て騎士団長は「これは槍を落とした衛兵を叱って鍛えなおすべきかどうか悩むくらい、自分も驚いた」と、頭をかきながら苦笑いを浮かべていた。




「さて、マロウ殿・・・というか、もう伯父上でいいじゃろ?

 我やカオル殿、そして後ろにある乗り物の中にいる我の友人らをロイドの街に入れてくれるかの?」


「後ろのアレは乗り物だったのか?

 見たところ、アレを牽く馬などもいないようだが・・・」


「馬なしでもかなりの速度で走る乗り物じゃ。

 あれもカオル殿の移動用魔導器じゃ。

 ちなみに、我らは今朝の遅い時間にサージ村を出発して、つい先ほどロイドに到着した・・と言えば、その移動速度の速さがわかると思うが」


「通常なら5日間かかる距離を、わずか半日で移動したのか!?」


「途中、盗賊らとの戦闘がなければ、もっと早く到着していたと思うぞ」


「それは凄い・・・」


 クリスの話を聞いて、マロウ騎士団長の顔が思案ぎみになった。


「伯父上、先に申し上げておくが、カオル殿の武器やあの乗り物はカオル殿しか扱えないそうじゃからな。

 騎士団の装備に取り入れようとしても、考えるだけ無駄じゃぞ」


「それは、もったいない・・・」


 クリスの話を聞いて、今度は見るからに落胆するマロウ騎士団長。

 なんだろう・・・、少し前に見たクリスの表情や行動に妙に重なる印象を受ける。

 もしかしてこの二人、けっこう似たもの同士なのか?


「カオル殿が作る魔導器は、アレの中にいる精霊殿の協力がないと生み出せないようでな・・・

 しかもその精霊殿は、カオル殿にラブラブでの・・・カオル殿以外とは契約したくないそうじゃ」


「その精霊殿とは、ぜひじっくりと話をさせてもらい・・・」


「無駄じゃよ。

 先ほどのカオル殿とのやり取りで、伯父上は完全に精霊殿に嫌われたはずじゃからなっ(ニヤリ)」


「ぐっ・・・

 姫様、まさか最初からソレが狙いで、私の挑発に乗ったのではないでしょうな」


「何を当たり前のことを聞いておおるのじゃ、伯父上は・・・。

 我が愛しのカオル殿の事を侮辱されたのじゃ、これくらいの仕返しは当然させてもらうに決まっておるじゃろ」


 40代半ばくらいの伯父を前に勝ち誇った仕草をする10歳の少女・・・。

 クリス・・・

 お前、身内が相手でもマジで容赦がないな・・・・(汗)。




「で?

 我らはロイドには入れるのか?」


 悪びれることなくそう問いかけるクリスに、さすがの騎士団長も折れた。


「姫様が連れてきたご友人であれば、我々が拒否する事など出来ないでしょう?」


 深いため息をついてそう告げると、俺に向かって手を伸ばして握手を求めてきた。


「ようこそロイドへ。

 そしてクラリス姫を助け出していただき、ありがとうございました。

 王国騎士団を代表し、また姫様の伯父として、皆様を歓迎させていただきます」


「ありがとうございます。

 あの乗り物の中にいる子供たちを、住んでいた村に送り届ける途中ですので長居は出来ませんが、滞在中はよろしくお願いいたします」


 俺はマロウ騎士団長の手を握り返し、笑顔でその申し出を受けた。





 レガ子の運転(専用シートができたことで、ある程度ならレガ子だけでレガシィを動かせるようになったらしい)により、子供たちとリーゼを乗せたレガシィが徐行速度で移動し、騎士団長の案内で歩く俺に続いてロイドの城門をくぐった。


 城壁の中には、ベルドの町並みに良く似た木造と石造りの複合建築の建物が並んでいた。

 ただその造りは、ベルドのものよりも洗練されている印象を受けた。


 完全に門をくぐり、街の中に入ったところで、前方を歩いていたクリスが振り返り、笑顔でこう宣言した。


「ようこそ、我が母上の故郷ロイドへ!

 母上の実家であるフェルトン家をあげて、皆を歓迎させていただこう!」


 どうやらこの街は、クリスの母親の実家がある街だったようだ。

レガ子「自分で自分の本体レガシィを動かせるって楽しいのっ♪」


薫「無免許運転だけどな・・・」


作者「それよりもレガ子の場合、すぐに轢き殺そうとするから、適性検査の結果が怖そう・・・」


レガ子「いつか、あの騎士団長とやらのピカピカの鎧に、タイヤの跡で模様を描いてやるのっ!」

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