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第1章 第31話(第38話) ~再出発、そしてアクシデントへの遭遇予感~

ようやく異世界でのドライブ(旅)が先に進みます(汗。

今回は途中であまり寄り道せずに、次の目的地まで到着できるといいなぁ・・・(遠い眼。



ということで、前回までのおさらいです。


女神リーゼがサージ村で再合流。

リーゼは酒好きのどじっ娘。

(でも酒は弱い)

クリスが帝国による王国南端部への再工作を危惧

 やがてゲール隊長との打ち合わせを終えたクリスが俺の元にやってきた。

 そして「我は今から国の知り合いと軍議をせねばならんので、先に戻っていてもらえるか?」と、言い難そうにしながら用件を伝えてきた。


 あぁ・・・

 もしかしたらクリスは、俺がまだ彼女の正体に気が付いていないと思っているのだろう。

 であれば、そんなクリスの配慮に水を差すのも悪い気がしたので、残りのちびっ子らを連れてレガシィのところに先に戻る事にした。


「美味しい夕飯でも考えながら待っている。

 あと、遅くなるようなら、そこに居る兵士のだれかに送ってもらえよ」


 そうクリスに伝え、俺は詰め所を出てレガ子が待つレガシィのところへ移動する。

 頭の中では、「今晩はカレーでも作るか?」そんなことを考えていた。





 翌朝、俺たちはやや遅めの朝食を済ませ、昼前の早い時間帯にサージ村を出発することにした。


 ベルドの町を出発したときには、この世界の文明度にそぐわない自動車の移動力をアピールしてしまう事をためらい、レガシィの速度を出さずにのんびりと走るつもりでいた。

 だが、帝国の魔の手が予想以上に王国内に伸びていた事をこの数日間で相次いで体験したことで、方針を変更する事にした。


 なので、可能であればサージ村から33トール(198キロ)ほど離れた場所にある城壁都市・ロイドまで1日で走るつもりでいた。

 そのことを皆に告げると、旅の経験のあるクリスだけが「いくらなんでも不可能じゃろ」と俺の提案に疑問を口にしていた。


 まぁ・・・移動手段が徒歩と馬車しかない世界だと、1日に移動できる距離は約7トール(約42キロ)くらいが限界だ。

 なのでクリスの疑問はこの世界の常識に照らし合わせればもっともな事だ。

 しかし自動車があれば、馬車と違って馬の休憩なしで移動する事もできる。

 しかも、元の世界の時間感覚で午前9時ごろにサージ村を出発し、日が落ちる午後6時ごろまでにロイドに到着すると仮定した場合、昼休憩の1時間を除いた8時間を移動に使ったとしても、平均時速25キロほどで走り続ければよい計算になる。


 この世界の道は路面状態が良くないとはいえ、馬車などが頻繁に通る大街道を使うのだ、実際の移動速度はもっと出せるはずだ。

 なので今回は助手席に座るリーゼだけでなく、後部座席に座っているちびっ子たちにも、速度を出したときに発生する突発的な揺れに備えてシートベルトをしてもらう事にした。


 「お兄ちゃん、なんでこの丈夫なロープみたいなもので身体を縛るの?」


 いや・・・別に縛っているわけじゃないんだが・・・。

 しかも〝身体を縛る〟とか女の子の口から言われると、とてもいけない雰囲気が漂ってしまうから危険だ(汗)。


「縛っているんじゃなくて、車が大きく揺れても安全なように、身体を椅子に固定しているんだよ」


 助手席の後ろに座っているアリシアにシートベルトをセットしながらそう答える。

 運転席の後ろ側にはミャウが座っており、俺の真似をして自分のシートベルトをセットしていた。


「あんちゃん、これ外すときはどうするにゃん?」


「ベルトをはめた場所にある赤い部分を奥に押し込んでみて」


「あっ、簡単に外れたにゃん♪」


 ミャウは言われたとうりに操作し、カチッという動作音と共にベルトが外れた事を面白がっていた。


「移動中の走っているときは、勝手に外したらダメだからな!」


「了解だにゃん♪」


「カオル殿、我のベルトはどうすれば固定できるのじゃ?」


 後部座席の中央に座っているクリスが、自分の座っている場所には左右に差込口だけがあって、ベルトそのものが存在していない事に戸惑いの声を上げた。

 実はBH型レガシィの後部座席は3名分全てが3点式シートベルトになっているのだが、中央部だけはそのベルトが後部端の天井部分のリトラクターに格納されていて、普段はその存在が見えなくなっているのだ。


「クリスの使うベルトは、実はここに入っているんだ・・・」


 そう言いながら俺はアリシアとクリスに覆いかぶさるように身を伸ばして、ラゲッジルーム天井後部右端に格納されていたシートベルトを引き出した。

 そして引き出したベルトの先端金具をクリスが座っている場所の右側にあるラッチに接続し、3点式シートベルトの形状に組み立てた。


「この金具側をアリシアたちがやったのと同じように、クリスの左側にあるこの挿入部分に入れてごらん」


 そう言って、組み立てたばかりのシートベルトをクリスに手渡す。

 するとクリスは、ベルトを何度も付け外しして、その構造に感心していた。


「これは面白いのじゃ。

 これなら移動中に乗り物が飛び跳ねても、馬車のときのように必死に摑まっている必要が無いのじゃ♪」


 やはりこのにある世界の馬車の乗り心地はあまり良くないようだ・・・。

 全てが片付いて、この世界に腰を落ち着ける事になったら、車の整備で得た知識や技術を使って馬車の乗り心地改善でもしてみたいな。





 全ての準備を終え、これまで世話になってベルやサイモン、そしてゲール隊長らに出発の挨拶をする。

 そして、レガシィの速度メーター下に設置してあるデジタル時計の表示で午前9時ごろにサージ村を出発した。


「そういえばリーゼ、この世界の時間感覚は俺の世界とほぼ同じで間違いないのか?」


 走り出してからしばらくが経った頃、後部座席のちびっ子たちが外の景色に夢中になっているのを確認して、気になっていた疑問をリーゼに小声で問いかけた。


「そうですね、1日の長さは24時間であちらと同じです。

 このへんのシンクロ率の高さは、さすが双子世界というべきなのかもしれません。

 薫さんを移動させた時、あちらの時間帯と同じ時間帯になるよう時空移動させましたので、時刻のセッティングは元のままでも問題ないかと思います」


「それで復元の加護が発動する時間がまったくズレないのか・・・」


 この世界に来てすでに1週間が経つのに、加護の発動時間の0時がこちらの時間帯とズレていく感じがなかったのでちょっと気になっていたのだ。




 速度計を見ると、時速40キロ近くまで出ている。

 そういえば以前スキルを使ってレガシィのタイヤを大型化させているが、あの変化のときにタイヤのサイズ変更で生じる速度計の誤差もきちんと修正されているらしい。

 元の世界では愛車をカスタムするとなると、それはすばらしい大金が飛んでいくのだが、こちらの世界では経験値によるスキルの消費だけでそのカスタムが変形機能によって出来てしまう。

 しかもその経験値は、この世界を走る(ドライブする)だけで溜まっていくのだから、ある意味クルマ好きには最高のシチュエーションではないだろうか?


 スキル消費によるカスタムといえば、前回の時にレガ子に専用シートを作ったわけだが・・・。

 運転席と助手席の間にあるアームレスト・コンソールボックスの上に伸びた伸縮アーム上の小型座席に座っているレガ子の様子を見ると、なにやら座席に付属しているコントロールパネルなどを熱心に操作していた。


「レガ子は何をしているんだ?」


「薫様、この専用シートすごいのっ。

 このシートからこの子レガシィのイロイロな機能が操作できるのっ。

 というか、このシートが出来た事で、この子レガシィへの武装もクリエイト可能になったのっ!」


「このレガシィに武器がつけられるのか?」


 俺の頭の中に、子供の頃に見た某警察ドラマに登場した特装車両が思い浮かんだ。

 ボンネットから出てくるマシンガンとか、ちょっとした漢のロマンではないだろうか?


「今イロイロ調べているから、後でまとめて相談させてもらうの」


 レガ子の向こう側に座っているリーゼの顔を見ると、なぜかドヤ顔で微笑んでいた。

 レガシィに隠されているこの辺のややこしいギミックの仕組みは、ほぼ間違いなくリーゼの趣味なんだろうなぁ。




 1時間ほど走り続けると、サージ村の隣にある村を通過した。

 そのあまりの早い移動に、クリスが驚きの声を上げていた。


「ベルドからサージ村までは、もっと時間が掛かったはずじゃが?」


「あの時は、クリスたちを乗せて初めての長時間走行だったし、椅子に座れていない人員も乗せていたからゆっくり走っていたんだよ」


「なんという移動速度なのじゃ・・・。

 この〝クルマ〟という移動用魔導器が量産されたら、世界の常識が変わるぞ!」


「悪いが、この〝クルマ〟も量産する気はないからな。

 馬車とかの改善策くらいなら提案するつもりだが、この〝クルマ〟は根本的には俺がこの世界を隅々まで旅をするための乗り物だからな」


「カオル殿は、ほんとうに変わり者の魔導器製作者クリエイターなのじゃな。

 多くの魔導器製作者クリエイターは、自分が作った魔導器を世の中に送り出して、自分の名を広めたいと考えておるのが普通なのじゃがな」


 まぁ実際のところ、一から自動車を作るなんてこの世界じゃ不可能だしな。


「しかし、このアトラータ大陸を隅々までの旅か・・・。

 それは我も興味があるのぉ、普通に旅をしていたらほぼ不可能な事じゃからの」


「「その時は、アリシア(ミャウ)も一緒に連れて行って欲しいの(にゃ)!」」


「それはお前たちの親御さんが一緒の旅を許可してくれたら考えよう」


 旅への同行を即OKをしなかった俺の返事にアリシアたちが不満を漏らしているが、そのまま旅に連れて行ったら、何のために今から親元に送り届けるのか分からなくなるだろうが・・・(汗)。


 というか、今クリスはこの大陸の事をアトラータ大陸とか言っていなかったか?

 リーゼから聞いた話しだと、大昔はこの世界と元の世界は文明間の交流があって、その頃の事が元の世界では伝説や神話の一部として残っているという。

 だとするとアトラータ大陸って、まさかあの伝説の大陸の事じゃないよな?





 さらに1時間ほどが経過し、車載時計が午前11時を過ぎる頃になると、後部座席のちびっ子らもさすがに飽きてきたようで口数が少なくなっていた。


 そういえば、昨日エロゲが見つかった時に、レガ子のやつがちびっ子たちに俺の世界の言語が分かるようになる加護を分け与えていたっけ。

 ふむ・・・。


 少し考えた後、俺はレガシィに搭載していたオーディオユニットにアニメソングやエロゲ主題歌が詰まったSDカードを挿入し、車内に音楽を流すことにした。


 左右のドア付近から突然音楽が聞こえ始めた事に、ちびっ子たちはビックリし、音の正体を探して車内をキョロキョロと見回し始めた。

 そして俺は、その表情や姿をルームミラーで確認して楽しんでいた。

 隣でレガ子が「薫さま性格がいじわるなの」などと言っているが、ちびっ子たちが驚いている姿が可愛いんだからほっといてくれ。


「驚かせて悪かったな。

 なんかずっと座っているのが退屈そうだったので、記録した音楽を流す道具を動かしてみたんだ」


「なんと、この〝クルマ〟の中には、そのような魔導器も付いておるのか?」


「初めて聴く音楽なのにゃ」


「聴いた事がない楽器の音ばかりなの」


「この楽曲は、みなカオル殿の故郷の音楽なのか?」


「まぁそうだな。

 このまま音楽を流しておいても大丈夫か?」


「もっとイロイロ聴きたいのにゃ!」


 クリスやアリシアも同じ意見だったので、このまま音楽を流し続けて走る事にした。

 まぁ、あと1時間も走ればお昼ご飯を取るために休憩を入れるつもりだから、それまでの暇つぶしになれば十分だろう。





 さらに1時間後、3つ目の村も通過し、少し走ったところにある街道脇の草原にレガシィを停めた。

 レガ子による周辺スキャンで周囲の安全を確認し、この場所で昼飯の休憩を取ることにした。


 先ほど流した音楽についてアレコレと質問を受けたので、今はちびっ子たちには元の世界で放映されていたアイドルアニメのPV映像をノートパソコンで見せている。

 映像に合わせて自分たちも歌の振り付けを真似しようとしている姿が可愛らしく、見ていて微笑ましい。


 俺はそんなちびっ子たちの姿を横目で見ながら、昼飯の準備を始めていた。

 ちなみにメニューは、ソーセージのボイルとゆで卵をおかずに、メイン用に卵とツナのサンドイッチを作っている。

 サンドイッチに使うパンは、元の世界で宮家献上食パンとして人気のある京都の店の高級デニッシュ食パンだ。

 パン生地にクリームとバター、卵をミキシングしているため、通常の食パンに比べ甘みがあるのが特徴だが、たぶん甘いものが好きなちびっ子たちの受けはいいはずだ。



「しかし、カオル殿が作る食事は、我が見たこと無い食材ばかりが毎回出るのぉ」


「夕べの〝カレー〟とかいうのも美味しかったのにゃ♪」


「このパン、やわらかくて、甘くて美味しい・・・」


 食事の内容は、おおむねお子様たちに好評だったようだ。


「しかもこのパンは何なのじゃ?

 このような美味しいパンは、王都でも食べた事が無いぞ」


 まぁこの世界のパンの製法は、醗酵が不安定な天然酵母を使っており、元の世界のようにイースト菌の培養技術が進んでいないようだからなぁ・・・。

 それだと醗酵が弱くてどうしても焼いたときに目が詰まった固いパンになりやすい。

 ましてやパン生地にクリームやバターを混ぜて味付けするような製法は考えられていないだろう。

 毎日焼きたてのパンを買える貴族などは別だろうが、庶民は数日分のパンをまとめ買いするため、黒パンのように酸味の強い日持ちのする固めのパンを購入していると聞く

 残し種のサワードウを使っても、ある程度は美味しいパンが作れるような、元の世界のパンの作り方を庶民向けに教えてみるのも面白いかもしれない。

 まぁ中世ヨーロッパ時代みたく、パンへの混ぜ物を監視しているギルドのようなものがあると、混ぜ物で味をよくする様な製法を広めるのは難しくなるのだが・・・。




 約1時間半ほどの休息を取り、再度レガシィでの移動を再開。

 現在は、ナビに表示されている地図では3つ目と4つ目の村の中間付近に差し掛かるところだ。

 このペースであればもう少し走れば4つ目の村に到着するはずだが、俺はさっきから別のことが気になりだしていた。


 それは、ベルドの町を自分らよりも1日早く出発したメイベル商会の店主メイベルさんと未だにすれ違っていない事だった。


 職業柄メイベルさんが旅慣れており、そして俺たちがサージ村で2泊しているとはいえ、いくらなんでも追いついていないのはおかしい。

 途中通過した村に滞在中であることも考えられるが、あの商売熱心なメイベルさんが意味もなく小さな村に滞在しているとは考えにくい。


 そんなことを考えながら運転をしていると、レガ子が前方に異変を感知して声を上げた。


「薫さま、前方1.5キロメートル先に奇妙な集団がいるの」


「奇妙な集団?」


「8人ほどの集団を、13人ほどの集団が取り囲んでいるみたいなの」


 おいおい、それってもしかして・・・


「しかも8人の中の一人は生体波長に登録があるの。

 メイベルさんなのっ!」


 どうやら嫌な予感が的中してしまったみたいだ。




レガ子「やっとドライブが再スタートなのっ♪」


薫「やっぱレガシィは走らせているときが一番楽しいしなっ」


レガ子「今後は武装をいっぱい付けて、異世界初の高速戦闘車両を目指すのっ!」


薫「マテマテマテ・・・(汗」


レガ子「次回は戦闘の予感がするのに、まだ武装が無いのが残念なのっ・・・。

    だから、次も敵は轢き殺すしかないのっ♪」


薫「俺が運転にトラウマを残すから、できれば体当たりは少し自重しような・・・(滝汗」



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