プロローグ 第4話 ~燃料補給のアテは?~
すこし慣れてきたので、今回から1話あたりの文字量を若干増やします。
レガ子はちょろいん。
異世界に移動する原因となった女神は山道に出没した怨霊だった。
レガ子が異世界レクチャーを受けていた時に、俺は気絶していたそうだ。
「でも、オーナーさまは女神様にお会いしたことありますよ?」
「え?」
「ほら、あっちの世界で最後に停車していた山道で」
・・・・・・・
脳裏に、気絶する前に山道で見た女性の幽霊みたいなものが思い浮かんだ。
「あの怨霊みたいなのが女神さまだったのかよ!!」
アレはどう見ても、深夜の山道を走るドライバーを崖下に誘ったり、クルマと同じ速度で追いかけてきてフロントガラスにへばりつく悪霊の類にしか見えなかったが・・・・(汗。
というか・・・・
長い髪を振り乱しながら、フロントガラスに向けて突進してきた姿は、あの有名なホラー映画の〝貞○〟にしか見えなかったんだけれど・・・
「で・・・その悪霊・・・もとい女神様は〝世界樹〟の事だけでなく、こっちの世界で生きていくために重要なこととかも教えてくれたんじゃないのか?」
「はい、イロイロなことを丁寧に教えてくださいました」
「でもこの鳥頭は、それをまともに覚えていない・・・と」
腕を組んでドヤ顔をしているレガ子の表情が癪に障ったので、そのおでこに軽くデコピンを入れる。
「痛いじゃないですか。おバカなレガ子の頭が、さらにおバカになったらどうしてくれるんですかっ!(プンスカ」
赤くなったおでこを抑えて、涙目でこちらを睨むレガ子。
おバカなのは自分でも納得済みなのね(苦笑。
「とりあえず、この世界をレガ子が安全に旅するために必要な知識は、キッチリ覚えさせられました」
再度胸を張ってドヤ顔をするレガ子。
〝覚えさせられた〟って、自慢できる事じゃないと思うのだが。
きっとその女神様とやらも、苦労したんだろうなぁ・・・・・。
「まず今いるこの森ですが、モンスターなどはめったに出ないし、人間もめったに来ない場所だそうなので、とりあえずは安全だそうです」
出るのね・・・モンスターのたぐい。
あと、人間がいる世界でよかった。
さっき『俺とレガ子が離れられないように手を打った』とか言っていたから、人間のいない世界に連れてこられたんじゃないかと心配だったんだよね。
「ただ、不測の事態が起きるといけないので、休憩中などは防御フィールドを張るように言われました」
「防御フィールドって?」
「レガ子・・・この場合は本体のこの子になりますが、その中心から半径3メートルの範囲に絶対防御の円形ドーム型のバリアが作られるそうです」
「ほぅ」
「この防御フィールドは、物理攻撃、魔法攻撃を防いでくれるそうで、フィールドの展開中は人間やモンスター、動物すら中に入ることはできないそうです。ただ酸素とかの空気は通すらしいので、防御フィールドの中でエンジンを掛け続けたり、焚き火をしたりとかしても酸欠の心配はないそうです」
「それは便利だな。・・・で、欠点はないのか?」
その能力があれば、かなり安全に異世界での生活が出来そうだ。
ただ、本当にレガ子から離れられなくなりそうだが・・・。
「1時間の防御フィールド維持に、ガソリンが1リッター必要だと言っていました。あと、攻撃などで強い衝撃を受けるとガソリンが多めに消費されたり、防御フィールドが破壊されると再展開により多くのガソリンが必要となるので注意するようにとも言っていました」
そうだガソリンだよ。
どうしてこんな重要なことに最初に気が付かなかったんだ。
異世界に飛ばされる前、具体的には山道に入る直前に給油してガソリンは満タンにしているから、しばらくは燃料の心配はないけれど、この先の給油はどうするんだ?
BBQオフで使う発電機用に、別途10リッターの燃料缶も満タン状態で積んであるけど、給油がのアテなければ焼け石に水だぞ。
「その女神は、燃料の補給について何か言っていなかったか?」
するとレガ子も不安そうな表情を浮かべ
「その点はレガ子もかなり不安なんです。この世界の文明はヨーロッパの中世初期レベルで、ガソリンなんか影も形もないと言っていたので・・・」
「おい、おバカっ! 自分でも気が付いていて、しかも命にかかわる心配事だったら、なんで女神にしつこく確認しなかったんだよ!」
「だって女神さま・・・『心配ない、心配ない。1日過ごしてみれば分かるから』って笑いながら言うだけで、全然教えてくれないんですもん」
俺の怒鳴り声にアームレストの上に座り込んで、頭を抱えて涙ぐむレガ子。
いや・・・さすがに幼い女の子の姿をしたレガ子を殴ったりはしないよ。
しないけどさぁ・・・これはさすがにうかつすぎるだろう・・・。
とりあえず、あの女神は悪霊認定でいいよな?
もしくは疫病神で。
とりあえずは、大きなため息。
そして、頭を抱えているレガ子の手を優しくどかして、頭を撫でる。
「うぅ・・・、オーナーさま怒ってませんか?」
くっ。
怯える幼女の表情がかわいいじゃないかっ。
B○SHOPとかC○OCKUPとかつ○みくとかの鬼畜系ERGブランドで鍛えた嗜虐心がくすぐられてしまうではないかっ。
(いや、しないよ。実際にはERGのような酷いことは・・・本当だよ)
「ああ、怒ってない。 呆れてはいるけど」
「本当ですか?」
答える代わりに、怯えるレガ子の頭を撫で続けてあげる。
最初は頭に手を置くたびに〝ビクッ〟としていたレガ子が徐々に落ち着いていく姿を見ていたら、自分の頭も少しずつ冷静になってきた。
「その(駄)女神さまは、燃料の事について他には何か言っていなかったか?」
「そういえば『1日の終わりの時にガソリンを全部使い切らないように』とか言っていました」
どういう意味だ?
日付が変わる頃合に燃料のデリバリーでもしてくれるのか?
「あと『燃料タンクの構造的に、最後の一滴まで使っちゃう心配はないだろうけど』とか、『でも魔力行使が絡んじゃうと、その心配もあるか』とか、独り言のように言っていました」
あぁ、やっぱその(駄)女神を一発殴りてぇ・・・
(女性に手を上げるのは自分のポリシーに反するので実際にはやらないけど)
でも、何でそんなに燃料の残りに拘るんだ?
もしかしてガソリンがタンクに残っているかどうかがレガ子の生命維持にかかわっているとかじゃないよな?
HPが1でも残っていればヒールとかで回復できるけど、0になってしまったら蘇生不能でBAD ENDみたいな意味じゃないよな?
その(駄)女神にもう一度会う機会があるなら、その辺はきちんと確認しておく必要があるな。
異世界にバイクやクルマを持ち込むと、どうしても燃料の補給がネックになりますよね。
その世界に無い物は、結局はチート技で補給するしかないわけですが、どういったチート方法にするかが悩みどころ。
条件などを絞って、一歩間違えば弱点にもなりうる補給方法を考えています。