第1章 第29話(第36話) ~試射・・・そして〝魔銃〟の誕生~
今回は、前回のお話で作った銃器型の魔法発射武器の試験射撃のお話になります。
早くこの武器を活用する戦闘シーンを書きたいところですが、残念ながらもう少し先の話数になりそうです(汗。
ということで、前回までのおさらいです。
主人公、レガ子、愛車がそれぞれレベルアップし、レベル6に。
異世界に持ってきていた電動エアガンをベースに、魔法発射型の武器をクリエイト。
「さっそく試射をしたいけれど、さすがにこの村の中では難しいよなぁ・・・」
「たぶん隊長さんに怒られるのっ」
「だよなぁ・・・」
俺とレガ子は互いに苦笑いすると、村の外に広がる荒野に目を向けた。
「とりあえずは、朝食を食ってから考えよう。
それと、俺としては自分の精神安定上の問題として、そろそろちびっ子たちからエロゲを取り上げたいっ」
俺とレガ子がレベルアップや装備を作っている間、一度もテントから出てこない娘っ子たちの事が、正気かなり気になっていた。
今に冷静になって考えると、どう考えてもあの娘っ子らにエロゲの知識は早すぎる。
俺の元の世界の文化になじませるにしても、やっぱ最初はゆるふわ日常アニメからにするべきだろう。
ということで、俺は娘っ子たちに朝食の準備を手伝わせるために、テントの中に再突入するのだった。
テントの中に入ると、娘っ子ら3人がノートPCの前でボーッとした状態になっていた。
「カオル殿・・・
女中達が言っておった男女の愛の営みって、こういうことだったのじゃな・・・」
「お兄ちゃんが望むなら、恥ずかしいけれど・・・」
「父ちゃんと母ちゃんが同じような事していたの見た事あるにゃぁ」
彼女たちの前にあるノートPCの画面には、主人公とヒロインの少女がいままさにHなことをしているシーンが映し出されていた・・・(滝汗
「お、お前たちにはやっぱ刺激が強いから、この御伽噺を読むのはここまでっ!
今から朝食を作るからお前たちも手伝えっ!」
そう言いながらノートPCを閉じて、娘っ子たちにテントから出るように促す。
最初は「もっと見せろ」と文句を言っていた彼女たちだったが、さっさと朝食を食って準備しないと、新しく創った攻撃用魔導器の試射テストに連れて行かないと言ったら、蜘蛛の子を散らすようにテントから飛び出していった。
テントの中に置いてあった寝袋や毛布などをイベントリに収納するため外に出ると、そこにはクリスが俺が出てくるのを待っていた。
「カオル殿は、もしかして我らがあのテントの中に居たわずかな時間で、新しい攻撃用魔導器を創ったというのか?」
まぁ、実際に創ったのはレガ子だし、元の世界にあった道具を改変して魔導器に造り替えているだけなのだが・・・、今は本当のことを言うわけにはいかない。
なので適当な言い訳をでっち上げる事にした。
「まぁコレも紅雨と一緒で、作りかけの物がもともとあってな・・・。
昨日の戦闘で見た帝国製の攻撃用魔導器から得たアイデアをヒントにして、その作りかけに取り入れただけだから、手間はかからなかったんだ」
そう説明しながら、右足の太腿に取り付けているホルスターに納めたH&K USPを指差した。
「その妙な物体が、帝国の使い捨て攻撃用魔導器と同じ働きをするのか?」
「使い捨てじゃないし、連射や撃ち出す魔力属性の変更も出来るから、コレの方が遥かに汎用性は高いぞ」
「なんじゃと!
そんな凄い魔導器が作れたのか!?」
クリスが眼を輝かせて、俺の顔を見た。
そういえばすっかり忘れていたが、クリスはどうやらこの王国の王族みたいだ。
しかも、自国に対する愛国心や責任感が、10歳の少女とは思えないくらいに高く、しっかりとした信念も持っている。
ここはクリスには酷だが、釘を刺しておいた方がいいだろう。
「先に断っておくが、コレは紅雨と一緒で俺にしか使えないからな。
あと、誰にでも使えるようなタイプを作る気も無い」
「そうか・・・」
クリスの元気が一気に無くなるのが分かり、少々胸が痛んだが、仕方がないと自分に言い聞かせる。
「悪いなクリス。
俺にも譲れない一線というのがあるんだ」
実際、もし自分にコレと同じものが作れたとしても、やはり誰もが使える汎用武器として量産する気にはなれない。
なぜならば、誰もが使える強力な汎用武器は、本来ならば戦場に立つことが出来ない女性や子供のような弱者まで戦争の道具にしてしまう可能性があるからだ。
その可能性は、俺の元の世界が証明してしまっている。
「その代わりに、クリスやクリスが大切にしている人たちは、出来る限り俺が守ってやるから」
そう言ってクリスの頭を撫でて、その横を通り過ぎた時、クリスが俺の背中に抱きついてきた。
「約束・・・じゃからなっ。
違えるでないぞ・・・」
クリスはそれだけ言うと、俺から離れて朝食の準備を始めていたアリシアらの方へと走っていった。
朝食を終えた俺たちは、ゲール隊長が居る王国軍の詰め所に来ていた。
理由は、村のすぐそばで遠隔攻撃魔法の試射を行う旨の報告と許可をもらうためだ。
で・・・
許可はあっさりと出た。
村と麦畑に被害を出さなければ、荒地側で好きにしていいということだったので、俺たちはレガシィに乗って街道の反対側に広がる、大きな岩が多く点在している荒野に移動した。
この距離であれば徒歩での移動でも良かったのだが、連射後にインナーバレルの状態を分析したいというレガ子の要望もあり、試射の現場で分析が出来るよう魔導器製造工場でもある愛車ごとの移動となった。
そして新しい攻撃用魔導器という武器に興味を示したゲール隊長や、どこで話しを聞きつけたのかベルとサイモンまでもその場に集まってきた。
ちなみにベルとサイモンには、昨日の乱戦に呼ばなかった事で文句を言われた。
特にベルは、父親の言いつけで参加している女性衆の仕事がよほど嫌なのか、「なんで声を掛けてくれなかったんだ?」と恨めしそうな眼でにらまれてしまった。
「その手に握っている妙な形の道具が、攻撃魔法を撃ち出す魔導器なのか?」
俺の横にいるサイモンが、俺が手にしているH&K USPを覗き込んで訊ねてきた。
「ああ。
そこの机の上にある瓶に入っている魔力結晶が、コイツの中に仕込んである精霊呪文が刻まれた筒の中を通る事で、呪文が生み出す魔法という形に変化して外に放出される・・・というようなイメージを考えてもらえると分かりやすいと思う。
ちなみに赤い結晶が炎、青い結晶が氷、黄色い結晶が雷の魔力に対応している」
「なんと! 魔力結晶を術者以外が魔法に変えて使うのにそのような方法があったのですか!?」
俺の説明を聞いていたゲール隊長が会話に加わってきた。
どうやらこの世界では、魔力結晶は魔導師が魔法を使う際の触媒くらいにしか使い道がないという認識が一般的らしい。
その横では、クリスが興味深げにその説明をメモに取っていた。
たぶん、俺から得たヒントを王家御用達の魔導器製作者にでも伝えて、独自に攻撃用魔導器を開発させるための参考にするつもりなのだろう。
「カオル殿・・・ダメか?」
俺の視線に気が付いたクリスが不安げに訊ねてきた。
「俺の話をヒントにして、別の魔導器製作者が別の攻撃用魔導器を開発する分にはかまわないさ」
「そうか、感謝する」
「もっとも精霊呪文が効果を発揮するには、契約者である俺の魔力を通す必要がある。
なのでこの魔導器は俺以外には使う事が出来ないし、そうした理由から王国軍の武器として量産する事も不可能だ」
この説明は、クリスにではなくゲール隊長に対する牽制だ。
「レガ子も、薫さま以外の人間と契約する気はないのっ。
だから薫さまが使う物以外に精霊呪文を付与してあげる気もないのっ。
もっとも精霊が認めた人間の魔力を、精霊自身の魔力と融合して精霊呪文に練りこまないと呪文は効果を発揮しないから、精霊呪文だけを加えても意味がないのっ」
「つまりこの方法は、カオル殿とレガ子殿のように身も心も結ばれた関係で無いと使う事が難しいということか・・・」
レガ子の説明を聞いて、クリスは同じ方法による攻撃用魔導器の製作は難しい事を悟ったようだ。
だが、ちょっとマテ・・・。
「変な誤解が生まれる前に訂正しておくぞ。
心はともかくとして、身体の方はまだレガ子と結ばれたりしていないからな!」
「薫さまヒドイのっ!
そこは無理に否定しなくてもいいと思うのっ!」
いや・・・
ちゃんと否定しておかないと、俺が特殊な性癖の持ち主だと思われるだろうが・・・(汗。
まずはサイレンサーを付けない状態のH&K USPを両手で構える。
ちなみにH&K USPのマガジンの中には、赤い火力結晶化BB弾が装填されている。
構えた銃の10メートル先には、的としてちょうどいい大きさ(ほぼ人間大)の岩が立っている。
そしてその左横には25メートルほど先に同じような岩が、右側には50メートルほど先に同じような岩があり、威力だけでなく射程距離の把握にも役立ちそうだ。
まずは中央にある10メートル先の岩を狙って1発撃ってみる。
狙った場所は、岩を人間に見立てると、胸の中央付近に当たる部分だ。
バシュッという圧縮空気を打ち出したような発射音と共に、H&K USPの銃口からファイヤーアローが飛び出し、着弾点の岩肌を大きく吹き飛ばした。
着弾点の岩肌は、直径18センチ、深さ10センチほどのクレーターになっていた。
破壊力という点では、昨日戦ったファイヤーボールを撃ち出す帝国製の使い捨て魔導器より劣るが、殺傷能力という点では実際の拳銃よりも遥かに高いといえそうだ。
次は25メートルほど先にある岩を狙うが、先ほどの射撃時に狙った照準よりも着弾が右に反れたため、照門の位置を微調整する。
調整を終え、銃を構えなおす。
さすがに25メートルくらい的が離れてくると、拳銃に標準装備されているオープンサイトでは狙い撃つのが徐々に難しくなってくる。
軽く精神統一をしてトリガーを引くと、今度もバシュッという発射音と共に銃口からファイヤーアローが飛び出した。
実銃を撃った事が無いので比較できないが、この魔力銃の場合、発射時の反動が少ないため、片手による連射でもかなり扱い易そうに思えた。
ちなみに今回も初撃を的に当てる事ができた。
着弾点の状態を計測しに行ったレガ子の報告によると、破壊痕の大きさや状態は10メートルの的とさほど変わらなかったという。
いよいよ今度は50メートルほど先にある岩を狙う。
慎重に狙ってトリガーを引いたものの、さすがに今度は初撃を外してしまった。
すぐさま外した距離と方向をイメージ補正し、2射目を撃つ。
今度はきちんと的の中央に当たったのが確認でき、胸を撫で下ろした。
外してしまった初撃の弾道を見て気が付いたのは、射程距離だけであれば70メートルくらいならば届きそうだという事だった。
的の状態を確認しに行っていたれが子が戻ってくると、的の着弾痕が若干小さくなっていたという。
距離が遠くなると、やはり破壊力が落ちるようだ。
「薫さま、魔力弾の圧縮・加速呪文が施してあるサプレッサーを付けて、もう一度撃って欲しいの」
レガ子の指示に従いH&K USPにサプレッサーを取り付ける。
その状態で改めて50メートルほど先にある岩を狙った。
今回は初撃で当てるのをあきらめ、最初から3発を連続で撃ってみた。
1発目は的の上の部分に当たり岩を砕いた。
2発目は的を外し、その後ろ・・・射撃点から100メートルほど離れた岩肌に当たった。
3発目は的の根元付近に当たり、的の岩を地面から吹き飛ばした。
サプレッサーに施された圧縮・加速呪文の効果なのだろう、明らかにファイヤーアローの弾速が早くなっており、その威力も増していた。
その影響で発射時の反動が若干大きくなっているのが難点だが、扱えないほどではない。
「威力としては申し分ないな・・・。
射程距離も、実銃と同等かそれ以上だ」
「魔力結晶が持つ本来のエネルギーに比べると、ファイヤーアローの威力が少し小さいの。
エネルギー変換効率で言うと、おそらく70%くらいしか出ていないの」
「この威力でもか?」
「ハンドガンだと、精霊呪文を刻んだバレルが短いから、十分な変換呪文が刻めていないのが原因だと思うの」
「ということは、長物をベースにすれば・・・」
「おそらく変換効率は100%に近くなるの。
あとバレルに余裕があれば、付加呪文も刻めると思うのっ」
「まぁ、その辺は今後の研究課題にしておこう」
そう言って、俺はこの武器製作の真の功労者であるレガ子の頭を撫でて労ってあげた。
レガ子は「もっと撫でるのっ♪」と喜んでいた。
俺とレガ子のスキンシップが落ち着いたのを見計らって、今まで試射を眺めているだけだったクリスが近づいてきた。
「カオル殿とレガ子殿が言っている事は難しくて分からんのだが、この威力でもまだ十分でないと言うのか?」
「どうやらコイツに刻んでいる精霊呪文の内容では、魔力結晶の威力を全部引き出せないらしい。
まぁ、精霊呪文はレガ子の専門分野だから、今後の課題にする事にしたよ」
「そうなのか・・・、精霊呪文とはそんなにも難しいものなのか・・・」
またもや難しい顔つきになって考え込むクリス。
まったく、この娘っ子は・・・まだ10歳のくせに王族の責務とかを難しく考えすぎだと思う。
「どうだ、クリスもコイツを撃ってみるか?」
「えっ?
その魔導器はカオル殿でないと動かないのであろう?」
俺の提案にクリスが?マークを浮かべながらキョトンとした表情を見せた。
俺はそんなクリスを後ろから抱き締めるような格好で彼女の手を取り、その手に銃を握らせた。
「だから、こうやって俺の手にクリスの手を重ねて構えれば・・・」
添え手となる左手は俺の手を下にして俺が直接グリップを握り、上にクリスの手を重ねる。
そしてトリガーを引く右手は、クリスの手を下にして彼女の指にトリガーを掛け、その上から俺の手で包み込んで補助してやる。
その状態のまま、10メートル先にある岩を狙う。
「さぁ、その右手の人差し指が触っているレバーを引いてみな?」
「こ、こうか?」
クリスがトリガーを引くと、銃口からファイヤーアローが飛び出し、的にしていた岩を砕いた。
「お・・・」
「お?」
「おぉぉ、すごいのじゃ!
我っ、ファイヤーアローを撃ったのは、生まれて初めて経験ぞ!」
初めての体験に、驚き、喜び、興奮しているその姿は、まさに10歳の少女そのものだった。
「クリスは難しい顔で考え込んでいるより、そういう素直な感情を顔に出している方が可愛いと思うぞ」
「なっ・・・」
つい口から出てしまった俺の素直な感想に、クリスの顔が真っ赤になった。
ほんと・・・
いつもの尊大な態度のクリスもいいが、こういう素直な感じのクリスも悪くない。
「クリスちゃんばかりズルイの・・・」
「あんちゃん、ミャウもやってみたいのっ!」
声の方向を見ると、アリシアがムスッとした表情で立っており、ミャウは好奇心一杯の表情を浮かべていた。
「アリシアやミャウにも同じように撃たせてやるから、こっちに来い」
まずは好奇心の塊のミャウに体験させてやる。
銃を撃った瞬間、眼を丸くさせて、耳や尻尾がピョコピョコ動く姿がかわいらしかった。
次に少し銃を怖がってたアリシアにも、同じよう後ろから抱きしめるような姿勢で手を重ねる。
すると怖がっていた感じが消え、今度は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
それでも何度か声をかけて前を向かせて、銃のトリガーを引かせてあげることが出来た。
2人に射撃体験をさせてから俺が後ろを振り向くと、そこには同じように撃ってみたいと言いだしたサイモンとゲール隊長の姿があった。
が、俺は「だが断る!」と言って2人からのお願いを速攻で却下した。
「「なんでだ!?」」
当然ながら二人からその理由を聞かれたが・・・
「男でしかもおっさんなんかを後ろから抱き締めて手を握るの嫌だからな!」
この一言で二人が納得してくれて、諦めてくれたから良かったよ・・・(汗。
その後はマガジン1本分の連続射撃や、魔力結晶化BB弾の属性を変えての連続射撃などいくつかの耐久試験をして、試射テストを終了した。
テスト後にH&K USPをクリエイトモードのイベントリに入れて検査したが、レガ子からの報告によると特に破損や劣化は起きていなかったという。
こうなると残りの問題は、紅雨との併用使用の訓練と、運用方法の研究だな。
実戦時に刀と銃の二刀流が使えるように練習しないと・・・(汗。
そうそう、この試射の後のことになるが、俺とレガ子はこの銃器型の魔導器を『魔銃』と名づけることにした。
レガ子「ここ数回のお話で、薫さまとクリスちゃんの親密度が上がりすぎなのっ!」
作者「これはエロゲに例えれば、ヒロイン分岐直前までは進んだとみた」
レガ子「これ以上は進んだらダメなの!
事案になっちゃうのっ!
薫さまがタイーホされちゃうのっ!」
作者「いや・・・薫くんには夢のハーレムエンド・ルートを歩んでもらいたいから、今後は別のヒロインの高感度を上げてもらうことになると思う」
アリシア、ミャウ「ワクワク♪」
リーゼ「ソワソワ♪」
レガ子「バッチ来い!なのっ!」
薫「おまえらなぁ・・・」




