第1章 第28話(第35話) ~サイドアームクリエイト~
今回は、主人公が使う補助武器をレガ子がクリエイトする内容になります。
これでやっと主人公の戦闘スタイルに必要な武器の最小単位が揃いました。
当初の予定では、もっと早くサイドアームまで作る予定だったんですけれどね・・・。
どうしてこうなったのやら・・・。
レガ子と一緒にテントの外に出て、バッテリー内蔵型のポータブル多機能電源への充電用ソーラーパネルを展開しておく。
その足で愛車の助手席からタブレットPCを取り出し、WiFi接続モードでレベルアップ画面を呼び出した。
以前はナビ画面でしかレベルアップ画面を操作する事が出来なかったのだが、世界樹に戻った女神がシステムアップデートをしてくれたようで、レガシィとWiFi接続をしたPCからでも操作が出来るようになっていた。
「レベルアップと補助武器のクリエイト、どっちからやる?」
久しぶりに2人っきりになった愛車の中で、俺はレガ子に問いかけた。
「まずはレベルアップをしてしまうのっ。
その方がクリエイトの精度も上がるのっ」
どうやらレガ子の装備クリエイト能力は、自身のレベル数によって、その精度やクリエイトできる装備の難易度が変わってくるらしい。
レベルアップ操作の画面には、俺とレガシィとレガ子の3者(?)がレベル6になっている事を示すアイコンが表示されていた。
レベルアップによって獲得したスキルポイントは、レガシィとレガ子が4ポイントずつだが、レガ子には前回使わずに貯金していた2ポイントがある。
そして俺の獲得スキルポイントは2ポイントだ。
レガ子は、2ポイントを使って「アイスアロー」の攻撃魔法を取得。
残りの4ポイントは、今回も貯金するという。
どうやら何か大きな能力の獲得を狙っているみたいなのだが、現時点では俺にその内容を教えてくれない。
まぁ、レガ子にはレガ子の考えがあるようなので、今は静かに見守る事にする。
愛車が獲得した4ポイントは、〝追加装備・ダブルチューブバンパーガード・(フロント):3ポイント〟と、〝追加装備・レガ子用シート:1ポイント〟に割り振ってみた。
フロントのダブルチューブバンパーガードは、最近愛車による体当たり攻撃が日常化しているような気がしてきたので、次回のレベルアップ時にはぜひ欲しかった装備だった(苦笑。
レガ子用シートは、女神が合流したときに座席数の関係からレガ子が座る場所が欲しかったため。
コレを選択・実行したら、助手席とセンターコンソールの間に稼動アームが出現し、その先端に1/3サイズのバケットシートが形成されたのには、ちょっと驚いた。
ちなみに自分専用の座席が出来たことに、レガ子はかなり喜んでいる様子だった。
俺は、現在の2ポイントで取れるスキルは〝視野強化・レベル2〟と〝危険予知・レベル2〟のどちらかだけしかない。
なので今回はレガ子と同様に全ポイントを貯金する事にした。
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各自の現在レベルや獲得スキル一覧
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■如月 薫 (種族:自動車部品、職業:ドライバー)
レベル6(第35話時点)
○反応速度強化・レベル2
○視野強化・レベル1
○危険予知・レベル1
(貯金2ポイント)
■レガ子 (種族:八百万の精霊、職業:痛い子)
レベル6(第35話時点)
○武装クリエイト能力
○プラズマアロー
○ファイヤーボール
○防御シールド発現
○アイスアロー
(貯金4ポイント)
■レガシィ
レベル6(第35話時点)
○車体変形・車高リフトアップ・レベル1
○車体変形・ビッグタイヤ化・レベル1
○車体強化・ボディ硬質化・レベル1
○タイヤ強化・防弾・防刃化・レベル1
○オーバーフェンダー化・レベル1
○追加装備・ラリー用ボンネットライト
○追加装備・ダブルチューブバンパーガード・フロント
○レガ子用シート
それぞれのレベルアップ操作を終え、俺とレガ子は開いたリアゲートの下で、次に行う装備クリエイトについて相談を始めた。
「そもそも補助武器のクリエイトって何を作るつもりなんだ?」
そう、俺はレガ子がどんな補助武器を作る予定なのか、その概要をまったく聞かされていないのだ。
「さっきも言ったと思うの。
きっとエロゲバレの動揺が酷すぎて、覚えてないだけだとおもうの」
「うぐぅ・・・」
そういえばテントの中でレガ子が何か言っていたような・・・
「あっ、そういえば〝飛び道具系の補助武器が云々・・・〟とか言っていたよな?」
「そうなの。
昨日の戦闘を見ていて感じたのは、紅雨の他に銃器のような飛び道具系の補助武器があった方が、敵の集団に魔法攻撃を使うような奴が混ざっていた時に戦い易いのではないかと思ったの。
なので銃器系の攻撃用魔導器をつくるのっ」
「銃器系の攻撃用魔導器って・・・
具体的にはどうやって創るつもりなんだ?」
「クリエイトの素材に使いたいので、サバゲ用に持ってきているエアガンを一つ出してほしいの」
もしかして模造刀から紅雨を作ったように、今度はエアガンから創り出すつもりなのか?
エアガンと一口で言っても、本来はキャンプ先でサバイバルゲームをするつもりだったから、結構な種類のエアガンを持ってきているからなぁ・・・。
「長物か? それともハンドガン?」
「今回は紅雨と一緒に使う補助武器なので、ハンドガンがいいの。
薫さまの好きなモデルでいいから、一つ出して欲しいの。
長物はクリエイトレベルが上がったときにチャレンジしたいアイデアがあるので、その時まで取っておいてなの」
そう言われて、俺はイベントリのリストの中から、東京マ○イの電動ハンドガンの「H&K USP」を選んで取り出した。
サバイバルゲーム時の補助武器として持ってきていたもので、イベントリの中には同じメーカー製の「ハイキャパE ガバメントモデル」や「グロック18C」なども入っている。
「サイレンサーとかアタッチメントか付いたままだけど、外した方がいいか?」
取り出したH&K USPにはオプション装備の「マズルアダプター」や「プロサイレンサー」、「LEDプロライト」、光学サイトの「NEWプロサイト」などが取り付けられたままになっていたため、レガ子に訊ねた。
「本体と一緒に材質強化したいからアダプターとサイレンサーだけつけておいて欲しいの。
たぶんライト類は強化しなくても平気だと思うの」
レガ子の指示に合わせて、H&K USPから「LEDプロライト」と「NEWプロサイト」を取り外した。
するとレガ子はクリエイト画面を表示させたタブレットPCを操作しはじめた。
そしてイベントリの入り口がいつものようにクリエイトモードに切り替わった事を確認すると、レガ子の指示に合わせて用意したH&K USPをイベントリに投入した。
レガ子は、タブレットPCに右手のひらを当て、今までと同じように作り出す武器のイメージをイベントリへと送り込んでいた。
そして紅雨の時と同じく約20分後に、気の抜ける終了音と共に投入していたH&K USPが飛び出してきた。
素材強化が行われたH&K USPを手に取ると、フレームはポリマー製のままだが、そのほかの部分の材質が強化されている事が若干重くなった重量から感じられた。
「主に魔力弾発射時の負荷が大きい、インナーバレルやチャンバー、あとはスライドやサイレンサーの材質を強化したの」
魔力弾という単語を聞いて、マガジンを抜き出して確認するが、そこにあったのはエアガンの時と同じマガジンだった。
「そこには魔法結晶化したBB弾を入れて使うの」
「というと、紅雨の鞘に仕込んであるアレか?」
「そうなの、あの赤い魔法結晶を使うとファイヤーアローを撃ち出すことが出来るの。
あと属性の違う結晶を使えば、アイスアローやサンダーアローも撃てるのっ」
「中に詰めた魔法結晶化BB弾を変えたマガジンを複数携帯していれば、戦況に合わせて複数の魔法弾を使い分ける事が出来るのか・・・すごいアイデアだな」
「えへへっ・・・」
俺に褒められた事が嬉しいのか、レガ子が思いっきり照れていた。
レガ子の説明によれば、エアガンの原理で撃ち出された魔法結晶化BB弾は、インナーバレルの内部を通過する時に、バレルの内側に刻まれた精霊文字による魔法呪文に反応して、その姿をアロー形状の魔力エネルギーに変えて銃口から放たれるそうだ。
つまりバレルの内側に刻まれた精霊文字が、呪文詠唱と同じ効果をもたらしているらしい。
ちなみにオプションアタッチメントのサイレンサーには消音効果はなく、銃口から出てきた魔力エネルギーを再圧縮して加速させて放つ魔法呪文が内側に刻まれているという。
「とりあえず使用者を薫さまに限定したいので、紅雨の時みたく薫さまの血で登録して欲しいの」
俺は紅雨の刀身で親指の腹を少し斬り、傷口から出てきた血をH&K USPのグリップへと塗った。
そして魔力グローブを手に付けてグリップを握り、H&K USPの先端を青く光ったイベントリに差し込んでハンドガンへと自分の魔力を注ぎ込む。
すると紅雨の時のように、H&K USPに内蔵されたインナーバレルの内側やチャンバーに刻まれた魔法呪文に、俺が送り込んだ魔力が染み込んでいくイメージが頭の中に浮かんできた。
どうやらこの処置によって、俺の魔力でないとバレルの内側に刻まれた精霊文字が機能しないようになっているようだ。
「薫さま、もうOKなのっ」
レガ子の声で我に返り、イベントリからH&K USPを引き抜いた。
「次は、氷属性と雷属性の魔力結晶を作りたいの。
またホワイトBB弾を3瓶ずつ出して欲しいの」
うぐっ。
まさかここで計量用の空瓶をこんなにも消費するとは思わなかった(汗。
こんなことなら、ベルドの町を出るときに、もうちょっと多めに空瓶を買っておくべきだったかもしれない。
程なくして俺の手には、赤色、黄色、青色の3種類の魔力結晶化BB弾が入った瓶が握られていた。
まずは出来たての各瓶をイベント利入れて、現在の容量を100%としてリストに登録させる。
これで消費した各々の魔力結晶化BB弾は、深夜0時に登録時の量まで自動補充される。
まず右足の太腿部分に取り付けるレッグホルスターをイベントリから取り出して装着。
持ってきていたのは「ブラックホーク ホルスター セルパ LV3」というタイプのもので、銃本体から取り外したサイレンサーやライトユニットを収納できるシステムアタッチメントも付いている。
次に俺は、イベントリからサバゲで使う予定だったH&K USPの予備マガジンを5つ取り出し、それぞれに30発ずつの魔力結晶化BB弾を詰めて各種のマガジンを2セットずつ作り、ベルトに取り付けたマガジンポーチ内に収納する。
ちなみに予備マガジンは全部で10本あったはずだから、各種を3セットずつまでなら作ることが可能だ。
装備クリエイトによって創り出した補助武器を身に付けた俺を見て、レガ子は満足そうな表情を見せていた。
「これなら、あんな出来損ないのかっこ悪い使い捨て魔導器よりも実用的なのっ」
見るとレガ子は(無い)胸を張っていた。
たぶん〝出来損ないのかっこ悪い使い捨て魔導器〟というのは、昨日戦った敵の後衛が使っていたクラッカー型の火弾発射魔導器の事なんだろうなぁ・・・(苦笑。
あれだっておそらく帝国皇帝の地位に着いたブラッドが、元の世界の知識を取り入れながら試行錯誤して、20~30年もの歳月を掛けて作り出した道具のはずなんだけどなぁ。
そう考えると、レガ子の装備クリエイト能力が生み出す攻撃用魔導器は、この世界の常識で考えるとかなり危険な存在といえる。
レガ子の安全確保のためにも、対外的にはこれらの魔導器は、俺が魔導器製作者として作ったことにしておいた方がいいだろう。
「さっそく試射をしたいけれど、さすがにこの村の中では難しいよなぁ・・・」
「たぶん隊長さんに怒られるのっ」
「だよなぁ・・・」
俺とレガ子は互いに苦笑いすると、村の外に広がる荒野に目を向けた。
「とりあえずは、朝食を食ってから考えよう。
それと、俺としては自分の精神安定上の問題として、そろそろちびっ子たちからエロゲを取り上げたいっ」
俺とレガ子がレベルアップや装備を作っている間、一度もテントから出てこない娘っ子たちの事が、正直なところかなり気になっていた。
今さらだが冷静になって考えると、どう考えてもあの娘っ子らにエロゲの知識は早すぎる。
俺の元の世界の文化になじませるにしても、やっぱ最初はゆるふわ日常アニメからにするべきだろう。
ということで、俺は娘っ子たちに朝食の準備を手伝わせるために、テントの中に再突入するのだった。
レガ子「文明レベルが中世ヨーロッパ程度の異世界で、銃火器のような飛び道具は正直反則だと思うの」
作者「なので銃から出るのは弾丸ではなく魔力弾(マジックアローやマジックボール系)にしてみたんだけれど・・・たぶん1発の威力が銃弾よりも大きくなっちゃうから、余計に反則技になってしまったかもしれない・・・(汗」
薫「魔力結晶を撃ち出す仕組みは、エアガンの仕組みそのままなのか?」
レガ子「そうなの。圧縮空気で魔力結晶BB弾を打ち出すんだけれど、インナーバレル内を通過するときに、バレル内部に刻んだ呪文が魔力結晶を魔力弾に変化させて、さらに加速させて撃ち出すのっ♪」
作者「実はこの武器の仕組みのアイデアって、現代日本を舞台にした別の小説プロット(怪奇アクションモノ)で主人公が使う武器の設定をちょっと改変したものなんだよね・・・」
レガ子「次回は試し撃ちなのっ。楽しみなのっ♪」