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第1章 第26話(第33話) ~はじめての近接魔法戦闘~

あけまして、おめでとうございます。

忙しくなってしまった仕事の都合から、新作の投稿が半月ほど開いてしまい申し訳ありませんでした。


これから近接戦闘が始まるという、ある意味お話が面白くなっていく場面で更新がストップしていましたが、本日から連載投稿を再開させていただきます。


今後は3日ごとの更新を目標にさせていただきます。

今年もご愛読のほど、よろしくお願いいたします。


ということで、前回までのおさらいです。


隣村(サージ村)に到着。

村に駐留していた王国軍の指揮官・ゲール隊長はクリスの知り合いだった。

駐留軍に紛れ込んでいる敵のスパイの炙り出し作戦スタート。

見事に釣れて、スパイ兵5人との戦闘スタート。

「いきなり攻撃魔法かよっ!」


 周囲が爆発による煙と埃に包まれる中で愚痴る俺に、ゲール隊長に守られたクリスが「じゃが、これで敵対者である事が確実になった」と嬉しそうな顔を見せた。


「心臓に悪いから、こういう挑発は今回で最後にしてくれっ」


 やがて視界を遮っていた煙や埃が消えると、敵兵5人はそれぞれが武器を手にしていた。

 前衛の3人は剣を、後衛の2人は先ほど火の玉を打ち出した魔導器らしきものを構えていた。

 5人とも、先ほどの攻撃でこちらが無傷なことに驚いていた。





「お前達、国に反逆する気か!」

 自分の後ろにクリスを守りながら、敵となってしまったかつての部下らに、ゲール隊長が問いかけた。


「まさかクラリス様が助け出されてしまうとは思ってもいなかったのでね・・・。

 こっちも予想外の展開になってしまって戸惑っているんですよ」

 前衛の真ん中の男がそう言った。

 もしかしたらコイツが5人のリーダー格なんだろうか?


「それは申し訳なかったの。

 それよりも後ろの2人が持っているのは、噂に聞く帝国製の使い捨て魔導兵器ではないのか?

 これは、盗賊だけでなく帝国とのつながりもお主らに聞かなければならなくなったのう」


 クリスの言葉を聞いて、改めて後衛の敵が手にしている武器に注目する。

 形状といい、動作方法といい、その姿はまさにパーティなどで使うクラッカーそのものなので、自分としてはどうにも緊迫感を感じる事が出来ないのだが、その威力はかなりものだ。

 先ほど魔法による防御楯を展開して防いだ時に、爆風の風圧で後ろに飛ばされそうになった事からもその威力の大きさが窺えた。

 正直なところ、さっきは咄嗟の判断で防御楯の先端を地面に突きたてていなければ、おそらく吹き飛ばされていただろう。


「クラリス様のご心配には及びませんよ。

 隊長やその勇者様とやらをこの魔導兵器で始末して、あなた様にはもう一度かの国との交渉材料になっていただく事にしますので」


「悪いがそう簡単に倒されるつもりはないし、クリスも渡すつもりは無い。

 ロード・ワン!」


 俺はそう返事を返すと、鞘に仕込んだ魔力結晶を一つ燃焼させ、魔法の炎を刀身に纏った状態の紅雨べにさめを鞘から抜いて構えた。

 魔力結晶の使用を一つだけにしたのは、紅雨べにさめの炎が高温になりすぎると、今回のような集団戦闘での乱戦時には味方の兵士にもダメージを与えかねないからだ。

 それでも紅雨べにさめの炎は数百度に達しているはずで、俺のすぐ後ろに居るクリスやゲール隊長はその熱気を肌で感じている様子だった。


 俺が抜いた紅雨べにさめの刀身が炎に包まれているのを見て、敵も味方の兵士も驚きの表情を見せていた。


「ゲール隊長、クリスを頼みます!」


 その俺の言葉に我に返ったゲール隊長が部下に交戦の指示を出し、クリスを庇いながら兵士らの後方に下がった。


「奴らの体制を整えさせるな!

 魔力弾ファイヤーボール撃てぇ!」


 前衛中央の敵のリーダーらしき男の指揮で、後衛の2人が同時に魔導兵器を発射した。

 自分らに向かって2つの火の玉が飛んでくる。

 魔法による防御楯では2つを同時に防ぐ事が出来合いと判断した俺は、紅雨べにさめの刀身に魔力を流して瞬間的に炎の勢いを高めると、飛来する火弾に対して炎の刃を飛ばして切り裂いた。


「なっ!?」


 火弾が空中で爆発し、迎撃されてしまった事に敵が驚いている隙に一気に間合いを詰め、リーダー格の男に斬りかかる。

 が、さすがに軍隊の正規兵だ、すぐに俺の行動に反応して剣を構えて紅雨べにさめの一撃を受け止めた。


 周囲を見ると、残りの敵前衛2人にもゲール隊長の部下らが剣を抜いて飛び込んでいて、それぞれが切り結んでいる最中だった。

 こちらもさすが正規兵だ、行動が早い。


「まさか王国内に我々の知らない魔導器製作者クリエイターがいて、しかもその者が魔力運用ができる剣を作り出すほどの実力者だったとは思いもしませんでしたよ」


「王国の魔導器技術に精通したグラム男爵の部下にそういっていただけると、ありがたくて涙が出てくるよっ」


 紅雨べにさめとの鍔迫り合いによる炎の熱で、相手の剣が熱せられ始めていた。

 やがて剣の柄に巻かれた革が焦げた臭いを放ち始めた。


「ちっ!」


 紅雨べにさめの放つ熱に耐えられなくった敵は、舌打ちすると後ろに跳び下がり俺との距離をとった。


「グラム様との関係にまで気づいているとなると、やはり生かしておくわけにはいきませんね」


 敵がそう言った瞬間、後衛の2人が俺に向かってまた火弾を撃ち出した。

 咄嗟に左手を前に出し、魔法による防御楯を展開。

 飛んできた火弾を受け止める。

 が、さすがに2発分の衝撃波によって、俺の身体も後方に1メートルほど飛ばされてしまった。

 地面には防御楯のスパイクを打ち込んだ部分がみごとに1メートル分だけ耕された痕になって刻まれていた。


「その素晴らしい防御も、魔力を使ったオリジナル魔導器によるものですね。

 貴方ほどの実力があれば、帝国でも魔導器製作者クリエイターとして高い地位につけることを保障しますよ。

 どうです? 私たちと一緒に帝国に属してみる気はありませんか?」


「あいにくだが、帝国に興味はないし、なによりクリスの信頼を裏切る気がないからお断りだ」


「クラリス様が姫君だとはいっても、あんな子供の貧相な身体では魅力も何も無いでしょ?

 国民の生活が豊かな帝国ならば、もっと発育が良くて、ナイスボディの美しい女性が思いのままですよ」


「俺はクリスみたいなのが好みなんだよ!」


「なるほど、児童性愛者ヘンタイでしたか・・・。

 まぁ、魔導器製作者クリエイターには変わり者が多いので驚きませんがね・・・あんなまっ平らの貧相な身体のなにがいいのやら・・・」


 俺の性癖についてはどうでもいいだろ!

 というか、ヘンタイとか言うなっ!


 ・・・

 ・・・・・・

 あれ・・・?

 コイツ今、クリスのことを〝姫君〟とか言っていなかったか?


「カオル殿・・・」


「なぁ、クリスお前ってまさか姫・・・えっ!?」


 クリスのことを考えていたタイミングで当人の声が聞こえたので、声の方向に視線を移すと、クリスの顔がメチャクチャ怒っていた。


「そやつを殺してかまわん・・・

 というか、今すぐぶち殺せっ!」


「いやいや、男爵や帝国の情報を得るには生け捕りにしないとダメでしょう」


「〝まっ平ら〟だとか〝貧相〟だとか、我が一番気にしている事を・・・」


 あぁ・・・

 今の会話内容がクリスの一番癪に障る内容だったのね・・・(汗。

 常に冷静・沈着な才女のイメージしかなかったクリスがこうも怒るとは、体型に関してなにかトラウマがあるのかもしれない。

 俺もクリス相手の言動は十分注意しよう・・・。



『まったくなの。

 つるぺたへの侮辱はレガ子たちも頭にきたのっ!』


 いきなりレガ子からも念話が飛んできた。

 しかも念話の内容がソレかよっ!


『こっちは今戦闘の真っ最中なんだが・・・』


『わかっているのっ。

 迫撃砲の要領で魔力弾ファイヤーボールを30秒間ほど敵の魔力兵に撃ち込むから、よろしくなの』


『俺や味方のところに誤射するなよ』


『すでに村の外に向かって数発撃って弾道計算は終えているの。

 後の細かな照準補正は、薫さまの眼を借りるのっ』


 すると俺の視界が、情報表示を実視界に重ねて見ているような拡張表示モードに切り替わった。

 次の瞬間、敵の後衛2人に〝ロックオン〟の表示が付いた。



「では、交渉決裂ですね。

 貴方のその魔法防御、いったい何発の火弾に耐えられるか実験させていただきましょう」


「じゃぁ、こっちは後ろの2人が火弾を出す前に倒すだけだ」


 最悪の場合は、例のエロゲパクリ技(レジ○ンダリー・ファイヤー)を飛ばして後ろの2人を倒すしかないだろう。

 もっとも、その場合は生け捕りはあきらめるしかないが。

 ちなみに他の前衛兵らは、かなり離れた場所でゲール隊長の部下と乱戦になっていた。


 魔力結晶を使うため、紅雨べにさめを鞘に収めなおす。


「おやおや、我々を倒すといっておきながら、剣を収めてしまうのですか?」


「このカタナという剣には抜刀術というのがあるので気にするな。

 ロード・スリー!」


「火弾の攻撃を剣の炎で斬り続けるつもりですか?

 まぁ、がんばってみてくださ・・・」

『弾着今なのっ!』


 敵のリーダー格が最後まで言い終わるよりも先に、魔導兵器を構えた後衛の兵士2人に、レガ子が上空に向かって撃ち出した魔力弾ファイヤーボールが雨のように降りそそいだ。


「いったい何がっ!?」


 後方で突然起こった爆音と爆風に敵のリーダー格が後ろを振り向いた瞬間、俺は前方に疾走しながら紅雨べにさめを抜刀してリーダー格の男に斬りかかった。

 リーダー格の男もこちらの動きに瞬時に反応して紅雨べにさめを剣で受け止めようとしたが、3つ分の魔力結晶を吸い取った紅雨べにさめの炎は、魔力による威力増加と共にその温度は二千度近くにまで達している。

 紅雨べにさめの刃は、受け止めた敵の剣を簡単に砕き折り、刀身から発せられた炎の熱波が男の顔に襲い掛かった。


「ぐぁぁぁぁっ」


 そしてレガ子の魔力弾ファイヤーボールによる30秒間の支援砲撃がやむと、戦場の決着は付いていた。

 俺の足元には、顔面に大火傷を負った敵のリーダー格が転がっており、後方に居た魔導兵器を構えた兵士2人も大きく負傷し倒れていた。

 また、ゲール隊長の部下と交戦していた他の2人もすでに取り押さえられていた。


 倒した敵兵の拘束と治療は、騒ぎを聞きつけて集まってきていたゲール隊長の部下らに任せることにして、俺はクリスと一緒にレガ子たちのところに戻る事にした。

 ベルドの街で捕らえた盗賊らが毒による自殺を図っていることも伝え、捕まえた敵兵らの口の中や持ち物を徹底的に調べるように伝えておく。


 あれ?

 クリスに関することで、なにか重大な事を忘れているような気が・・・。


 忘れている事を思い出そうとクリスの顔を見ると、さっきとはうって変わって、今はかなりご機嫌な様子だだった。


「まさかカオル殿から、あのような熱烈な告白プロポーズをされるとは思っておらなかったぞ」


「ちょっとまて・・・何の話だ?」


「さきほど敵兵の誘いを断った時に、〝俺はクリスみたいなのが好みなんだ!〟と言ってくれたではないか♪」


「その話はレガ子達もじっくり聞かせて欲しいの・・・」


 声のする方を見ると、そこにはレガ子とアリシアとミャウがかなりご機嫌ななめで立っていたのだった・・・。

レガ子「やはり薫さまが、クリスちゃんとのフラグを建築してしまったのっ」


作者「当の本人は、まったくフラグ建築に気がついていないようだけれどね・・・」


アリシア「そういえばクリスちゃんの正体って・・・」


クリス「しーっ、しーっなのじゃ。

    せっかくカオル殿が忘れているのじゃ、掘り返すでない!」


レガ子「薫さまの、主人公性・鈍感健忘症にも困ったものなのっ」


リーゼ「あぁ、その属性なら、薫さんを人体改造する時に女神の加護で強化しておきました♪」


薫「なぁ・・・俺、そろそろ泣いてもいいか?」

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