第1章 第14話(第21話) ~迎撃、盗賊団~
レガ子「作者さまっ!
戦闘シーンでレガ子や薫さまの活躍がほとんど描かれていません!」
作者「マップ兵器の火力が強すぎた・・・・」
というより、戦闘シーンの描写って難しいですね・・・(汗。
ということで、前回までのおさらいです。
町の住人のサイモンとベルと一緒に、町に入る。
毛皮と砂糖を、王国内チェーン店のメイベル商会で売却。
金貨33枚ゲット!
メイベル商会の女主人は、見た目が幼女な合法ロリのハーフエルフだった。
取引を終えてクルマに帰ると、レガ子とサイモンが難しい顔をして俺たちの帰りを待っていた。
「なにかあったのか?」
するとレガ子は声を潜めて・・・
「薫さま、レガ子は盗賊団のアジトを見つけちゃったかもしれないの」
などという、とんでもないことを言い出したのだった。
レガ子から聞いた状況はこうだ。
俺とベルがメイベル商会で草原の狼の毛皮と砂糖や塩を買い取ってもらっていた時、店の外に停めてあったクルマに二人の若い男が近づき、中を覗き込もうとした。
この時は留守番をしていたサイモンがこの男らに睨みを利かせ、男たちを追い払ったそうだが、この二人のマーカーがクルマに近づきはじめた時から、敵性を示す赤色に変わったそうだ。
そこでレガ子がこの二人を要注意人物としてマークし、その後の行動をレーダーで追跡した。
一人は町の外へ、もう一人は街中に残りあちこちに立ち寄ったそうだが、立ち寄った先々でこの男が接触した人間のマークが次々と赤に変わったという。
その数、およそ10人ほど。
外に出て行った男は町の東側に移動したそうだが、町から800-900メートルほど離れた場所でこの男の反応が鈍くなり消えかかったそうだ。
そこでレガ子はレーダーの探知範囲をこの周辺に特化して出力を上げてサーチを掛けたところ、通常サーチでは見つからなかった人間の生体反応を多数感知した。
しかも、追跡していた男が接触すると、そのすべての色が赤に変わったそうだ。
こちらの数は40人前後だという。
「この場所には何があるんだ?」
全員をクルマの中に乗せ、窓を閉め切って外部の中の会話がもれないように注意しながら、敵性反応体が多数出現した町の東側についてサイモンとベルに尋ねる。
すると、この付近には、その先にある巨大な地面の割れ目から吹き上がったとされる岩石や洞窟が無数に散らばっているらしい。
つまり、盗賊団が隠れ家にするにはもってこいの場所といえる。
「我々もこのあたりは警戒地区に指定していて、頻繁に冒険者をパトロールに向かわせていたはずなんだが・・・」
40人規模という大人数の潜伏を見逃していたことに驚くと同時に、今まで発見できなかったことに首をひねるサイモン。
ベルも「パトロールのやつらは何をやってやがったんだ!」と文句を言っている。
「俺が思うに、そのパトロールに出たメンバーに、こいつらの仲間が混じっていたんじゃないのか?」
そう言って、俺は町の中で光っている赤い光点らを指差す。
つまりかなり前から盗賊団の仲間らが町の中に潜伏していて、住民らに怪しまれないよう〝善良な市民のフリ〟をしていたんじゃないか、と考えた。
「そう考えるのが妥当か・・・」
この俺の予想ににサイモンとベルは納得したようで、ベルが「すぐに対策を考えないと」と慌てだした。
おそらく連中はこのクルマを金蔓の獲物と認識したはずだ。
となれば、今晩にも町への襲撃を実行してくる可能性が高い。
対応するためには、今すぐ動いたほうがいいだろう。
そこで俺は、
「まずは、ベルの親父さんに会いに行こう」
と町長に相談することを提案した。
「こんにちは、お邪魔します。
町長さんは今いらっしゃいますか?」
町役場に行くと、俺はベルを連れて町長に面会を求めた。
表向きの用件は、町長と助役にも移動用魔導器の試乗をしてもらい、感想を聞きたい・・・という事にした。
町長と助役、ベルの3人がクルマの後部座席に、サイモンが助手席に乗ったことを確認すると、クルマでゆっくりと町中を巡回するコースを走った。
町の住人からは、新入りが持ってきた移動用魔導器が、観光気分で町長らを乗せて町の中を走っているように見えているはずだ。
しかしクルマの中では、レガ子のスキルである探知能力の説明を含め、俺らが把握した事を町長らに説明していた。
「サイモン、我々はどうすればよいと思う?」
「盗賊団は過去の襲撃において、村人らが寝静まった真夜中を毎回奇襲で襲撃しています。
おそらく今回も同じ手で襲ってくると思われます。
なので、逆にこちらが寝静まったフリをして誘きだし、町に入る直前で奇襲を仕掛けてはいかがでしょうか?」
町長の質問に反撃策を提案するサイモン。
となると邪魔になるが・・・
「その作戦を成功させるには、まずはこの〝獅子身中の虫〟を退治しないといけないな」
俺は町中に居る敵性体の光点を指差した。
市長もサイモンもそれに頷く。
そこで、まずはこの間者どもを排除するために一芝居を打つことになった。
クルマから下りた町長と助役は、移動用魔導器のすばらしさを大げさに褒め称えた。
そして「そうだギルド長や警備隊長も乗ってみるといい」と言って、冒険者ギルドと町の警備責任者を連れてきた。
この時、ギルド長と警備隊長には町長から本当の目的がひそかに伝えられていた。
俺は彼らをクルマに乗せてゆっくりと町中を周回し、盗賊団の間者と思しき人物らを一人ずつ案内し、その身元をすべて洗い出してリスト化した。
俺はその後、表向きは町長の屋敷に招かれ歓待を受けているフリをするために、そのお屋敷へと移動した。
屋敷の中では町長夫妻とベルが接待の芝居をしていて、賑やかな歓談の雰囲気が伝わる音を盛大に外に漏らしていた。
そして、その間にレガ子が冒険者ギルドと警備隊から選抜された生え抜きに指示を出して、盗賊らに気づかれないように注意しながら間者どもの身柄を次々と確保していった。
レガ子が町中の大掃除を手伝っていた頃、俺は音だけは賑やかな町長の屋敷の厩の中にいた。
そこで俺は、燃料復元のために必要な最低限のガソリンだけを残して、クルマの燃料タンクからガソリンを抜き取っていた。
その量は20リッターぐらいだが、イベントリに積んでいた10リッターの燃料缶の中身も9割がた使って、約30リッターのガソリンを用意した。
これを町の北側入り口の外にある窪地に敷き詰めた藁の上にばら撒き、盗賊団を一網打尽にするための罠を作る。
ちなみに町を囲む石造りの外壁が切れて町への出入り口となっているのは、北、南、東の3箇所。
サイモンやベル、警備隊や冒険者らと盗賊の迎撃方法を話し合った結果、この北門の外側の地形が俺とレガ子が考えた迎撃手段に適していたため、ここを決戦のポイントにする事にした。
今晩の警備兵の配置は、おびき寄せるためにあえて北側を手薄にした。
そして逆に南と東の警備をやや厚めにした警備シフトにしてある。
これで、おそらく盗賊団は警備が手薄な北側に集結するはずで、彼らは襲撃の瞬間まで身を潜めるために窪地に身を隠すはずだ。
すべての準備を終え、町の中が静けさに包まれた深夜。
午前0時の物資再生も終わっているため、今このクルマの燃料タンクは満タンにまで回復している。
俺の時計が示している時間では午前2時ごろだが、レガ子の索敵レーダーは町の北側に集結しつつある盗賊らの姿を補足していた。
ちなみに盗賊のアジトには、留守番要員が5人ほど残っているらしい。
「お馬鹿さんたちが大勢、罠だとも知らずに集まってきたの♪」
レガ子が声を潜めながら、しかしどこか嬉しそうに今の状況を報告してくる。
レガ子にとって盗賊たちは、経験値を稼ぐ為の獲物にしか映っていないようで、
「一気に殲滅して、たくさん稼ぐのっ!」
と鼻息を荒くしている。
もっとも俺は、この後に起きるであろう地獄絵図を想像し、かなり気分が滅入っているのだが・・・。
「薫さま、悪人に情けは不要なのです」
そんな叱責をレガ子から言われたが、平和な日本で生まれ育った俺には、命のやり取りをする荒事はそう簡単に馴染めるものではなかった。
しかし、ここで盗賊団を撃退して壊滅しておかないと、町の住人らの命が危険にさらされるのも事実だ。
平和ボケした気持ちに活を入れ、覚悟を決めるしかない。
北門から例の窪地までの距離は約150メートル。
レガ子の報告では、町に向かって移動してきた盗賊らの大半がこの窪地に集結しつつあるという。
俺は北門正面にカモフラージュさせて隠したクルマの運転席から、以前星を見るために使ったことがある、肉眼よりも夜空が明るく見える星空双眼鏡を使って、その窪地の方を観測していた。
俺の身体はスキル獲得の影響で肉体が強化されており、夜間視力も常人以上の能力に強化されている。
そのため、窪地付近に潜んでいる盗賊団たちの様子がハッキリと見えていた。
「やつら面白い道具を使っているなぁ」
連中らは、夜間にうっすらと光を放つ光苔を詰め込んだ筒を手にしており、そのわずかな明かりで足元を照らしながら移動をしていた。
その明かりは淡い緑色のため、遠目にはこの世界で〝夜光虫〟と呼ばれている、元の世界の蛍のような虫の群れが飛んでいるようにしか見えない。
ちなみに元の世界の〝夜光虫〟は、海の中に居る海洋性のプランクトンの事だが、こっちでは陸上の虫の名称らしい。
盗賊らの大半が窪地に集結し、夜襲の為に動き出そうとしていたその瞬間を狙い、俺はクルマのエンジンを掛け、ヘッドライトと新装備のラリー用ランプポッド(ボンネットライト)を盗賊らに向けて一気に点灯させた。
ボンネット上に取り付けられた大型ランプ4機と、ヘッドライトのハイビームが作り出す強烈な光が、盗賊らの姿を真昼のような明るさで照らし出した。
「なんだ!
眩しすぎて前が見えないぞ!」
「眼が痛い!」
暗闇に目が慣れていた盗賊らは、突然真昼間のような明るさにその身を晒され、全員がパニック状態に陥っていた。
そしてクルマのライト点灯を合図に、北門左右の外壁の上に伏兵として潜ませていた警備兵らが立ち上がり、盗賊団に向けて弓を構えた。
警備兵らが使っている弓は、木だけでなく動物の腱や骨・角などを組み合わせて作られた複合素材のもので、威力の有る重い鏃でも400メートルも飛ぶらしい。
しかも今回は外壁上からの射ち下ろしで、相手は明かりに照らされて丸見えの的射ち状態だ。
「射てっ!」
部隊長の号令により、警備兵が次々と弓を放ち、盗賊らが頭などを射抜かれて倒れていく。
そしてその攻撃に合わせるように、クルマの屋根の上に立っていたレガ子が用意していた遠距離攻撃魔法をぶっ放した。
「ファイアーアロー!」
レガ子が放った高温で燃える魔法の矢は、盗賊団ではなく、彼らが攻撃から身を隠すために姿勢を低くしていた窪地に飛び込んでいった。
そして次の瞬間・・・
窪地に火柱が湧き上がり、そこに居た盗賊らに灼熱の炎の波が襲い掛かった。
まさに簡易マップ兵器である・・・(汗。
ガソリンは液体のままでは引火する可能性はかなり低いが、気化したガソリンが一定濃度で空気と一緒に存在し条件がそろう事で、爆発的に燃える性質を持っている。
しかも空気よりかなり重いため、地面に沿ってより低いところに移動する性質がある。
なので窪地の中で気化したガソリンは、ほぼそのまま窪地にとどまり続け、そこに投げ込まれた魔法による火種によって見事に着火し、大爆発を引き起こしたというわけだ。
「ぎゃぁぁぁ!」
「あ、熱いっ。死んじまうっ!」
身体中が炎に包まれた盗賊が、自分の身体に燃え移った火を消すために、悲鳴を上げながら地面を転がりまわる。
そしてその無防備な姿を、警備兵が弓で仕留めていく。
「これは・・・すごい事になったな・・・」
クルマの横では、町に向かって飛び込んできた盗賊に備えて、バトルアックスを構えていたサイモンが初めて見たガソリンの爆発燃焼に驚き、その惨状にあっけに取られていた。
クルマの反対側にはベルもショートソードを構えて待機しているが、その表情はかなり引きつっていた。
そして炎に向かって高笑いをしているレガ子見て、さらに引きつった笑いを見せた後、
「これ・・・
私たちの出番無いんじゃないかな?」
と俺に苦笑いをしながら告げてきた。
もはや盗賊の多くが炎による重度のやけどで倒れているか、辛くも炎の難を逃れた盗賊も警備兵による弓で倒されていた。
俺としては、直接戦う事になる近接戦闘が回避できてホッとしているのだが、暴れる機会がまったくなくなってしまったサイモンとベルは物足りなさそうだった。
北門に集結していた盗賊らがあらかた片付いたと思いはじめた時、レガ子が異変を察知して声を上げた。
「まずいのっ。
少し離れた場所に待機していた盗賊らが、アジトに引き上げていったの」
予定では、ここがあらかた片付いてから、アジトに残っている残党を殲滅しに行く事になっていた。
しかし、今ここで襲撃失敗の情報がアジトに伝わってしまうと、彼らに逃げられてしまう可能性がある。
「サイモン、ベル。
追いかけるぞ!」
そこで俺は、サイモンとベルをクルマに乗せて、アジトに逃げ帰った盗賊を追いかける事を決めた。
町に残った警備兵に追撃の意図を伝え、この場所が片付き次第、援軍として追いかけてもらう事をお願いした。
これなら援軍が来るまで残党をアジトから逃がさなければいいので、仕事はかなり楽になるはずなのだが・・・
「さっきは活躍の場がなかったから腕が鳴るぜ!」
「今度こそ思いっきり暴れてやるわ!」
車内に居るサイモンとベルは、アジトに突入する気満々なのが不安だ・・・。
レガ子も・・・
「今度はどの魔法で盗賊を踊らそうか迷うのっ」
と殺る気満々だ・・・(汗。
平和な日本が懐かしい・・・・。
そんな事を考えながら、俺が運転するクルマは夜の荒野を爆光ライトで照らしながら、盗賊団のアジトへと向かうのだった。
う~~ん。前書きにも書きましたが、戦闘シーンの描写って難しいですね。
なんかキャラの会話が少なくなって、説明ばかりになってしまいました・・・(汗
次回は近接戦闘主体になると思いますので、もうちょっと上手に表現してみたいです。
あと、仕事である月刊雑誌編集の締切に突入しました。
そのため、今後の更新ペースが少し開くことになるかと思います。
(けっしてエロゲプレイしているわけではないですよっ(汗笑))