第1章 第12話(第19話) ~ファーストコンタクト~
異世界ドライブの2日目がスタートです!
レガ子「この先はきっと、この世界の原住民の女どもが次々と登場してくるに違いないから、薫さまを誘惑しないか気をつけて見張るのっ」
薫「お前なぁ・・・」
ということで、前回までのおさらいです。
ガソリンやイベントリ内の物資は、午前0時に回復するチート仕様だった。
しかもイベントリにはバグがあり、上手く活用すれば増産が可能。
なお主人公の身体も、怪我や病気が午前0時に回復可能。
そして女神リーゼの巨乳は、何重にもパッドを盛った偽乳だった。
とりあえず100キロ先の町を目指すことに。
「あれが、フローリアス王国の最南端の町か・・・」
俺は町の数キロ手前にある林の中から、小型双眼鏡を使ってその町の様子を眺めていた。
昨晩、女神リーゼが大騒ぎをしながら帰還したあと、俺は一気に疲れが襲ってきたため就寝。
朝には、レガ子が凝りもせずに毛布の中に潜り込んでいたり、微エロトーク全開で迫ってきたレガ子を聖剣スマートフォーンや秘儀アイアンクローで撃退したりと、慌ただしい中で朝食を済ませるなど、ほぼ平穏な1日のスタートを切った。
ただ、昨晩の帰り際に大量の胸パッドをばら撒いて偽乳を暴露してしまったリーゼを慰めるために、朝食後に例のホットラインアプリを使って連絡を取ってみたのだが・・・・
彼女は思いっきりいじけていて、世界樹の管理室(?)になぜか置かれていたコタツの中に潜ったまま、顔を見せてはくれなかった。
とりあえずリーゼには
「さっさと仕事片付けて合流してくれないと、忘れ物(胸パッド)の残りをクンカクンカしちゃうぞ」
と脅しておいたので、たぶん今頃は一生懸命世界樹管理のお仕事を片付けているだろう・・・と思いたい。
いや・・・実際にはやらないからな。
胸パッドをクンカクンカなんて。
その後、キャンプ場所を出発した俺たちは、途中魔物である草原の狼の群れに再度襲われるなどしたが、ほぼ順調に約100キロの距離を移動。
今は移動中にレベルアップした分のスキルポイントを実行するため、目的地である町の手前にあった林の中で休息をとっていた。
とりあえず愛車が獲得した4ポイントを【オーバーフェンダー化・レベル1:2ポイント】と
【追加装備・ラリー用ボンネットライト:2ポイント】に使い、車体を強化。
すでに我が愛車は、市販のBH型レガシィとはまるで別物の、特注のワンオフボディに載せ換えたようなラリーマシンみたいな外観になってしまった。
レガ子は任意の場所に防御シールドを発現させる能力に2ポイントを使用。
残り2ポイントは今後のために貯金していた。
俺はあいかわらずレガ子たちの半分しかポイントがもらえないため、なけなしの2ポイントを【反応速度強化・レベル2:2ポイント】に使った。
レベル3から上を獲得するためには、どうやら3ポイント以上が必要になるみたいなので、俺もスキルポイントの貯金を考えたほうがいいのかもしれない。
そして今は、スキル獲得で感じた肉体と精神の疲労感を癒すため、休息をかねて林の中から町の様子を眺めているわけだ。
「さて、どう接触したものか・・・」
俺は町の住人らとどのようにコンタクトを取るべきか、頭を悩ませていた。
というのも、双眼鏡で観察しただけでも、住人らの服装と俺が着ている服装ではかなりの違いがあった。
しかも、この世界には存在しない自動車で町に乗り入れることになる。
下手をすると住人らを刺激して、敵対関係になってしまうことだって考えられる。
「こういう時に、リーゼがいてくれたらなぁ・・・」
過去にこの世界の居酒屋で暴飲をしたことがあるあの女神がいれば、住民らとのファーストコンタクトへの的確なアドバイスが貰えたと思うのだが。
「とりあえず、もう一度ホットラインで連絡を取って、相談してみるかな・・・」
そんなことを考えながら愛車に戻るために林に中に向かって歩き始めた瞬間、俺の頭の中にレガ子からの念話が響いた。
ちなみにこの思念伝達、レガ子のスキルでもなんでもなく、俺が愛車の部品扱いなため、愛車の魂であるレガ子の声が届くという、実に悲しい理由による通信機能だった。
「薫さま、急いで戻ってきてください。
おそらく町の住民と思われる人間の気配が3つ、こちらに近づいていています」
期せずしてこの世界の住民の方からファーストコンタクトをしてくれるみたいだが、さて・・・どうしたものかな。
そんなことを考えながら、俺は愛車の場所に急いで戻るのだった。
「お前、何者だっ!
ここでなにをしているっ!」
レガ子からの連絡を受けた約30分後、俺たちは猟師と思われる装備を身にまとった3人の人間に弓を向けられていた。
愛車の防御フィールドを使えば、弓による攻撃などこちらには届かないのでやや気が楽なのだが、できれば穏便に彼らと話がしたい。
なので俺は彼らをお茶に誘うことにした。
「俺は魔導器製作者だ。
自作の移動用魔導器の試験をかねて旅をしている。
そんな物騒なもの納めて、こっちで一緒にお茶でも飲まないか?」
実はこれ、愛車のところに戻った直後にホットラインでリーゼに相談をして決めた、俺の仮の姿だった。
『レガ子ちゃんは、薫さんと契約した変わり者の精霊でごまかせるでしょう。
クルマは・・・・薫さんが作った魔導器って事にして、薫さんは辺境に住んでいた魔導器製作者ということで、住民の方とお話ししてみてはいかがでしょうか?
辺境に閉じこもって、長年研究に没頭していたといえば、多少この世界の常識に疎いのも納得していただけるのではないでしょうか?』
このリーゼの提案を採用し、俺は魔導器製作者を名乗ることにし、コーヒータイムの準備をしながら彼らから接触してくるのを待っていたわけだ。
「辺境に作った研究所に長年閉じこもっていてな、情けないことにちょっと世間の情勢に疎いんだ。
できればお茶でも飲みながらイロイロ教えてもらえると助かるのだが・・・」
俺の提案に互いに顔を見合わせながら、なにやら相談をしている猟師たち。
しばらくすると中央にいたリーダーらしい赤毛の女性が俺に話しかけてきた。
「わかった、その話にのろう。
ただし1名をこの場に残して、あんたに弓を向けたままにさせてらうが、それでもいいか?」
「かまわんよ。
ただ、手が滑ったとかで誤射だけはしないでくれよ?」
俺は苦笑いしながらその提案を受け入れ、赤毛の女性をテーブルに招いた。
彼女ともう一人の猟師は弓を下ろすと、俺の方へゆっくりと近づいてきた。
俺は両手を彼らに見せるようにしながらテーブルの前に立ち出迎えた。
やがて、互いに手を伸ばせば届く位置まで近づいたので、自分のほうから先に名乗ることにした。
「俺はキサラギ・カオルだ。
さっきも言ったが魔導器製作者をしている。
で、肩に乗っている小さいのが、契約精霊のレガ子だ」
「よろしくなの」
俺は握手のために手を伸ばしたが、猟師らは精霊だと紹介されたレガ子を見つめていた。
「ま、まさか・・・精霊が人間にこうも懐いているなんて・・・。
あ、いや失礼した。
私はベル、見てのとおり猟師だ。
隣の男はサイモン、奥で弓を構えているのがトニーだ」
ベルと名乗った女性が、握手に応じて俺の手を握り返してきた。
挨拶のときに握手の習慣がある文化でよかった。
間違っていたらどうしようかと、ちよっとだけ冷や汗ものだったのだ。
ベルは、短く切った赤毛が印象的な20歳前後の女性で、青い瞳の鋭い眼光で俺のことを見ていた。
身長は160センチくらいで、けっこう筋肉質。
おっぱいは・・・見たところBカップぐらいの大きさだろうか。
サイモンは40~50歳くらいのおっさんで、ガッシリ系の体格をした大男。
たっぷりと蓄えた髭が、いかにも猟師といった雰囲気を醸し出している。
話し方も歩き方も、すべてが豪快で大雑把な感じの人物だった
トニーはベルよりもやや年下な感じだろうか?
小柄で痩せ型の男性で、まだ子供っぽい童顔をしている。
なんとなくではあるが、ちょっと気の弱そうなところがありそうだ。
アウトドアテーブルに腰掛けたベルとサイモンは、ステンレス製のテーブルや椅子をやたらと触っていて「この鏡のような金属はなんなんだ?」としきりに驚いている。
まぁ、おそらくこれからもっと驚くことになると思うが・・・。
「お茶はコーヒーでいいか?」
「なんだ、それは?」
あぁ、やっぱこの世界にはコーヒーはないのか?
俺は少し考え
「木の実を焙煎して粉にしお湯で抽出したものだ。やや苦いが眠気防止の効果がある」
と教えた。
そして小瓶に入れたグラニュー糖を取り出し
「砂糖もあるから、甘くすることもできる」
と付け加えた。
するとベルはさらに驚いた様子で
「あの高級食材の砂糖だと?
しかも、そんなに白くきれいなものは見たことがないぞ!」
と身を乗り出してきた。
やはり砂糖は高級品だったようだ。
あとはそういったモノを目の前に出された彼女らが、欲に目がくらんで盗賊にジョブチェンジしないかどうかだが・・・
クルマの中に戻って、ナビモニターに映し出された彼女らの光点を監視していたレガ子から、
「今のところ大丈夫なの、色はグリーンのまままの」
と念話が届いた。
ベルとサイモンの目の前で、ペーパーフィルターに入れたレギュラーコーヒーの粉に電気ケトルのお湯を注ぎ、コーヒーを淹れていく。
お湯が出てきた電気ケトルやさまざまな道具にベルとサイモンは目を丸くしていた。
「初めて見る魔導器ばかりだ。
どうやら魔導器製作者というのは嘘じゃないみたいだ」
「あぁ、この男が盗賊団の仲間だとしたら、その盗賊団は国の正規軍なみの魔道具を所持していることになってしまう。そんな金持ちの盗賊団なんかありえねぇ」
「盗賊団が出るのか?」
淹れ終わったコーヒーをそれぞれのカップに注ぎ、ティースプーンで砂糖を2杯ずつ入れる。
ベルが「わぁぁもったいない」などと言っているが、無視してサイモンに話しかけた。
「ああ、北にあった村が最近襲われた。
おそらく近くに根城を作って潜伏しているんじゃねぇかと思っている。
おっ、これは旨いな」
隣を見ると、最初は恐る恐る口をつけていたベルが、やがて嬉しそうな表情をして普通に口をつけ始めた。
後ろのほうを見ると、威嚇役のトニーが羨ましそうにこちらを見ていた。
彼にもあとでコーヒーをご馳走してあげよう。
「口に合ったようでよかった。
で、最初の質問の話しになるんだが、俺はずっと辺境に篭って研究していたので大勢の人間が苦手でな。
この移動用魔導器のテストで町の近くまで来たのはいいが、町に入ろうかどうか悩んでいたんだ。
この先しばらくテストをしながら旅を続ける予定なので、路銀も作らないといけない。
あの町にアイテムや素材を買い取ってくれるような店はあるかな?」
「あるにはあるが・・・」
サイモンがベルに目配せをし、ベルが言葉の続きを引き継いだ。
「アンタが持っている砂糖のような高級素材を景気よく買い取ることができる店はないと思うぞ」
おい砂糖よ、お前どれだけ高価なんだよ・・・。
「砂糖以外にも塩もあるし、龍の森からここまでの間に倒した草原の狼の死体もある。
あの移動用魔導器の中には、鮮度を保ったまま物体を異空間に保管できる魔導器もあって、ほぼ倒した直後の状態で保管してある。
毛皮とか売れないかな?」
「たしかに草原の狼の毛皮ならそれなりの値段で・・・って、お前いま龍の森って言ったか?
まさか龍の森から来たのか?」
ベルが驚き、大声を上げた。
あ・・・しまった。
まずかったか?
「まぁ、そうなんだが・・・
何か変か?」
「アンタなぁ・・・あそこの住んでいる古龍は人間嫌いで有名なんだぞ」
ここで、あらかじめリーゼとの打ち合わせどおりに話しを作り上げる。
話しのつじつまは、あとでリーゼが合わせてくれることになっている。
「あの古龍・・・ドライドっていうんだが、森の奥深くにまで行かなければ俺には干渉しないことで、精霊をとおして話はつけてある」
「おまっ・・・さっき〝辺境に作った研究所に長年閉じこもっていた〟とか言っていたが、その研究所って、まさか・・・」
「あぁ、龍の森の中にあるが?」
ベルは頭を抱えて悩んでおり、隣のサイモンは「こりゃ面白い」と豪快に笑っていた。
やがてベルは呆れた顔を俺に向け、
「アンタが世間知らずなのは、今の話しで大方想像が付いた。
本当にいるものなんだな、世捨て人みたいに暮らしながら研究に明け暮れる魔導器製作者の変人って・・・」
とか若干失礼なことを言って盛大にため息をついていた。
リーゼには、後で女神の力で龍の森の中に研究所っぽい建物をつくっておいてもらおう・・・。
あとドライドとかいう古龍にも話をつけてもらわないとな。
話し合いの結果、町にはベルたちが案内をしてくれることになった。
あと素材買取費用の3割を渡すことで、草原の狼も解体してもらえることになった。
イベントリから取り出した、傷や欠損がほとんどない9体の草原の狼の死体に驚くベルとサイモン。
「どうやって倒したんだ、これ?」
「傷がないこれだけきれいな毛皮だ、けっこういい値で売れるぞ」
ぶっちゃけあのクルマで撥ね飛ばして殺しただけなんだけどね・・・。
ベルとサイモンが嬉々として草原の狼を解体している間、俺はずっと見張りをしていたトニーを呼んでコーヒーをご馳走するのだった。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
〝今晩もバーベキュー用の肉はお預けになりそうだ・・・〟
解体現場の生々しい様子を間近で見てしまった俺は、そんなことを考えていた。
町にたどり着いたことで、今後は登場人物が一気に増えてきます。
名前とか間違わないように気をつけないと・・・・(汗。
あと、昨日のタイヤ交換でやってしまった軽いぎっくり腰は、だいぶ回復しました。
こういう怪我をすると、午前0時に全回復できる主人公の身体が羨ましいです(苦笑。