第1章 第9話(第16話) ~女神リーゼ~
作者「さすがに今回は苦労したよ。
まさか5000文字超えて、予定していたところまで話が進まなかったとは・・・」
レガ子「どうしてです?」
作者「駄女神さまが、まったくコントロールできなかった・・・」
ということで、前回までのおさらいです。
女神の正体はドジっ娘ポンコツの駄女神
異世界や元の世界は、それぞれが世界樹の葉っぱだった
その世界樹は無数にあって、それぞれに神様が一人いる
駄女神は世界樹の世話に向いていなかった
用意されていた駄女神とのホットラインを主人公が無視
「薫さんのパソコンに、わたしに繋がるホットラインを創って置いたのに、なんで使ってくれなかったんですかぁ?」
「あ、やっぱりあのデスクトップにあった怪しいアイコンは女神に連絡を取るためのアプリだったのか・・・」
「わたし世界樹の管理エリアで、〝呼ばれるのは今かな?今かな?〟って楽しみにしてず~~っと待っていたんですよ!」
「知るか、そんなこと!」
なぁ、世界樹の管理の仕事って、そんなに暇なのか?
今いるこの世界が滅びたら困るし、親や妹がいる元の世界が滅びても困るから、ちゃんと仕事してくれよ・・・。
「なぁ・・・
女神の仕事ってそんなに暇なのか?」
思っていた事がおもわず口から出てしまった。
しかし、この駄女神さまは俺の皮肉にはまったく気が付くことなく、少し考え込んでから顔を上げた。
「長ぁ~~いスパンで見れば、やることはいっぱいありますよ。
各世界へのマナの流れを調整したりとか、世界樹に取り付いた害虫を駆除したりとか。
でもねっ、それこそ何万年、何億年という単位で様子を見るお仕事なんですっ。
経過観察中とかはのんびりしたっていいじゃないですかっ(ぷんぷん)」
しかも、なぜか逆ギレされてしまった。
この駄女神さまは、かなり性格が子供ぽいようだ。
「じゃぁ、俺たちの世界樹は・・・」
「薫さんのじゃありません!
わたしの世界樹ですっ!」
もう・・めんどくさいなぁ・・・
「じゃぁ。俺たちが生活しているこの世界樹は、今なにも問題は起きていないんだな?」
「・・・・・・・」
おぃ駄女神。
なぜ目をそらす。
「何を隠している?」
すると駄女神さまは急に立ち上がり、回れ右をすると・・・
「お、おいしいお茶もご馳走になったし、わたしはそろそろお仕事しに戻らないとぉ~」
などと言って逃げ出そうとしやがった。
もちろん逃がすわけがないので、後ろから駄女神の後頭部を鷲掴みにして締め上げる。
愛車整備の工具使いで鍛えた握力を舐めるんじゃないぞ。
「あっダメです。
痛い、痛い、痛いですぅ。
またわたしの頭が割れてしまいますぅ(涙」
いや・・・
さっきも割れてはいないからな・・・
駄女神の後頭部を鷲掴みにしたまま、強引に向きを戻し、そのまま再度テーブルにつかせる。
「逃げるな!
というか、俺がこの状況で逃がすと思っているのか?」
「あぅ、あぅ・・・・
このままではわたし、薫さんに犯されますぅぅ~~(号泣」
なにを人聞きの悪い事を言っている。
俺はこんなにも平和的に話し合いをしているというのに。
改めてアウトドアテーブルに座った駄女神の前に、新たなお茶とクッキーを出す。
「安心しろ。
俺は巨乳には興味がない」
すると駄女神はなぜか自分の大きな胸を抱きしめて、顔を赤くして俺から距離を取ろうとした。
なぜだ?
巨乳には興味がないと、お前は対象外だと教えてあげたのに。
「大丈夫ですよ女神さま。
オーナー様はロリコ・・・・
痛い、痛いです、レガ子の頭が割れてしまいす・・・」
余計なことを口走りはじめたレガ子を強制的に黙らせる。
「お前は、もう少しだけ静かにしていようか?」
「はい、分かりました。
レガ子おとなしくしていますから、この手を・・・この手を放してください」
俺も自分の分のコーヒーを作りなおして一服。
少し気持ちを落ち着けてみる。
そして再度の質問。
「で?
どんなドジをしたんだ?」
さっきの駄女神の態度から、俺たちが生きているこの世界樹に何らかのトラブルが発生していることは容易に理解することができた。
そして、その原因はこの駄女神のミスによるものだろうと推測した。
「言わなきゃダメでしょうか?」
これは自らミスを肯定したようなものだな。
駄女神はうつむきながら、チラチラと俺の顔色を伺っている。
なので、頷いて話の先を促した。
「今いるこの世界と、薫さんが生まれたあちらの世界は、元々は双子みたいな関係の次元世界だったんですよ。
なので人間の時間感覚でいう大昔には、大きな魔力を持った人間や亜人種たちが、二つの世界を行き来し交流していたこともありました」
そうなのか?
それにしては世界の様子が随分違うと思うのだが?
「こっちの世界は、俺の世界に比べると文明がかなり遅れているように思うが?
あと、俺の世界の人間は肉体的な問題で魔法が使えないとレガ子から聞いたぞ」
「この世界の文明は、数千年前に壊滅的なまでに破壊されて、一度滅んでいます。
その時の起きたマナの暴走によって、この世界と薫さんの世界との間に亀裂が入って、二つの世界は完全に切り離されてしまいました」
「もしかして俺の世界に残っている神話や伝説とかって・・・」
「おそらくその多くはこちらの世界のことを伝えているのだと思います」
なんてこった・・・。
ようするにこっちの世界の人間は、俺らの遠い親戚みたいな関係ってことかよ。
「薫さんの世界にいる人間や動物に魔法因子が欠落してしまったのも、この時のマナバーストが原因です。
暴走によって激しく変質したマナに長期間さらされたことで、生物の情報が書き換えられてしまったようです」
するとレガ子が「そういうことだったんですね」と、一人なにかに納得していた。
なので何を納得したのか訊いてみることにした。
「どうした?」
「レガ子のような八百万の精霊って、年に一度出雲って場所に集まるんですけれど・・・」
「神無月のことか」
「そうです。
そこで長く生きている他の八百万の精霊さまから、女神様の話によく似た昔話を聞いたことがあるんです」
一応、駄女神の話しの裏付けにはなりそうだな。
「とうことは、この女神の言っていることは間違いないということか?」
「たぶんですが・・・」
ふむ・・・
となると引っかかるのは・・・・
「おいリーゼ・・・
お前、レが子に何をさせようとしている?」
そう・・・
なぜ今というタイミングで、俺とレガ子がこの世界に呼ばれたのかが疑問だ。
この駄女神が暇つぶしのお遊びでレガ子の願いを叶えたとは思えない。
何か目的があるはずだ。
途端に駄女神が挙動不審になる。
俺の視線から逃れるように、キョロキョロ、そわそわと落ち着きがない。
「な・・・
なんのことかなぁぁ~~。
わたしはただ、純粋にレガ子ちゃんの願いを叶えただけだよぉ~~」
あさっての方向を見ながら言っていても、まったく説得力ないのですが。
仕方がないので、俺は右手をワキワキさせながら駄女神に向かって突き出した。
「ひぃぃっ。
喋ります。
素直に喋りますから、頭は掴まないでぇぇ」
はぁ・・・
駄女神にしてもレガ子にしても、〝懲りる〟とか〝学習する〟ってことを知らないのだろうか?
もしかして神様ってみんなこういう奴らばっかりなのか?
「あのね・・・
さっき世界樹の管理のお仕事に〝世界樹に取り付いた害虫を退治〟ってのがありましたよね?」
「まさか、その害虫退治を俺たちにヤレとか言うんじゃ・・・」
「違う、違うの。
その害虫自体はわたしが数千年前に退治したの。
退治したんだけど・・・・」
もはや厄介事の気配しかしなくなってきたぞ・・・
「その時にね、あまりにも上手に退治ができたので、大昔にこの世界に栄えていた魔法王国の首都で祝盃をあげたの。
でもね、調子に乗って飲み過ぎちゃって・・・
害虫退治に使う道具を飲み屋に忘れてきちゃったの(てへっ)」
おいおい・・・
神様が使うような道具って、俺たち人間には手に余るもんなんじゃないのか?
それを飲み屋に忘れてきただと?
「ちょっとまて・・・・
この世界の文明が一度滅んだのって・・・」
「その時の忘れ物が、なぜか魔法王国の宮廷魔導師さんの手に渡っちゃって・・・・
興味を示した宮廷魔導師さんが、それを危ないものに作り替えて、暴走させちゃったの・・・」
「お前のせいかぁぁぁぁ!!」
「きゃっ」
おいおい、冗談じゃないぞ。
駄女神のドジのせいで、マジでこの世界の文明が一度滅んだのかよ。
しかも、それに巻き込まれて俺の世界も影響受けたとか・・・・。
しかも原因であるこの駄女神は、まったくその責任を感じていない様子で「何を怒っているの?」などと言いながら俺の顔を覗き込んでいる。
「なぁ・・・
その時の暴走でどれだけの人間が・・・
どれだけの命が死んだのか、わかっているのか?」
「う~~ん、どれくらいだろぉ~
でも、そんな些細なこと気にしていたら、世界樹の管理なんてできないですよ」
「おいっ!!」
悪びれず、わずかな罪悪感すらも見ぜずに答えた駄女神に、思わずキレてしまった。
気が付けば、身を乗り出して駄女神の胸ぐらを掴んでいた。
そこに俺を止めようと、顔を青くしたレガ子が飛び込み、割って入った。
「だ、ダメですオーナーさま!。
拳を下ろしてください!!。
人間よりも遥かに長い時を生きる私たち精霊や神様は、命に対する認識がオーナーさまたちとはかなり違うんです!」
そういえば草原で草原の狼と戦った時、レガ子は狼たちを迷うことなく轢き殺す判断をしていた。
もしかしたら精霊や神様には命の重みという認識がないのか?
「レガ子にとって大切なのは、オーナーさまです。
そして次に大切なのは、オーナー様のご家族だけです。
正直に言えば、そのほかの人間や生き物がどうなろうと、レが子にとってはどうでもいいことなんです」
レガ子の言葉に衝撃を受けた俺は、駄女神を掴んでいた手を離した。
「オーナーさまには冷たく聞こえるかもしれませんが、おそらく女神様にとって大切なのは世界樹を育てるという使命だけなんじゃないでしょうか?」
冷静になって駄女神の立場で考え直してみる。
たしかに永遠にも近い時を生きる彼女にとって、俺たち人間や動物の寿命なんて一瞬だ。
そんな一瞬で消えていくものを気に掛けることなどできないのかもしれない。
でも・・・
それでも・・・・
「それでも、俺は・・・
リーゼにこの世界、この世界樹に生きている命を大切にしてもらいたいと思っている・・・」
そんな俺のつぶやきに、テーブルの影で身を縮めていた駄女神が俺の方を見た。
「今のは俺が悪かった。
すまん、許してくれリーゼ」
駄女神の行いに納得したわけではない。
でも、一時の感情から駄女神に殴りかかろうとしたのは俺の落ち度だ。
だから素直に謝罪することにした。
「リーゼがあまりにも親しみやすい雰囲気だったから、俺と同じ人間の感覚で接してしまった」
リーゼに向かって手を差し出す。
最初は怯えていたが、リーゼもその手を握り返してくれた。
「わたしの方こそ、薫さんの気に障る言い方をしてしまったようで、申し訳ありませんでした」
互いに再度テーブルについて向き合う。
「わたし300億年近く生きていますが、世界樹の住人とこんなにも長くお話したことがないんです。
なので正直に言うと、皆さんの感情とかが理解できていないんです」
ある意味、引きこもり歴300億年の超コミュ障なわけね・・・・
であれば駄女神には引きこもりをやめてもらい、俺たちのことを見てもらうしかない。
「なぁリーゼ、俺たちのことを理解するためにも、この世界で一緒に旅をしてみないか?」
「え?」
俺の突然の提案に、目をパチクリさせて驚いているリーゼ。
「リーゼには、俺たちと一緒にこの世界で暮らす人たちや、生き物らの営みを見て欲しい。
そして、そこに生きる生命について、少しでいいから考えて欲しいと思っている」
「それは・・・」
「それとも俺と一緒に旅をするのは嫌か?」
「そういうわけではありませんが・・・」
「あ、世界樹の管理の仕事があるからか?」
「お仕事の方は、長く空けるのはダメですが・・・
こちらの時間認識で数日単位で時折ご一緒するくらいなら・・・」
お、もうひと押しすればいけるか?
「でもよろしいのですか?
わたしは薫さんにとって親しい人間でもなんでもないんですよ?」
なんだそんなことを気にしていたのか。
それなら・・・
「それなら、今からリーゼとは友達だ。
それなら問題ないだろう?」
リーゼの目を見ながら、彼女の手を握る。
あと友達になったなら、〝駄女神〟は止めてあげないとな。
するとリーゼは顔を真っ赤にしながらオタオタしはじめ・・・
「お友達っていままでいなかったので・・・
どうすればいいか・・・・
こんなわたしでよければ、よ、よろしくお願いします」
と、照れながら俺の手を握り返してきた。
そしてその隣では、なぜかレガ子の機嫌が悪くなっていた。
今回も女神様のご退場までは話が進みませんでした・・・(汗
5400文字も書いているのに・・・orz
本当であれば、女神の目的か補給の謎まで書きたかったのですが、次回まわしになりました。
そして、レガ子に最大のライバル登場か?
レガ子「大丈夫です。
オーナーさまは巨乳はお好きじゃないなずですから」
ふふふふふふふ・・・・
レガ子「え? 作者様?
その笑いはなんですか?
なんなんですかぁ~~~」