第1章 第7話(第14話) ~駄女神さま乱入~
レガ子「作者様、レガ子この作品の最大の弱点に気が付いちゃいましたっ」
作者「ほう、いったいどこが弱点なんだ?」
レガ子「この子の装備にお風呂がないんです!
このままではお風呂回のテコ入れができません!!」
作者「しまったぁ!!
レガシィじゃなくて、シャワールーム付きのキャンピングカーにしておけばよかったぁ!!」
レガ子「今からでも遅くありません。
牽引式のキャンピングユニットを女神様に持ってきてもらいましょう!」
薫「作者もレガ子も、いっぺん死んで来い!
あと、女神は絶対に送るんじゃないぞ!!」
女神「薫さん、けっこうなツンデレだから・・・
これは〝送れ〟というフリなんでしょうか?」
ということで、前回までのおさらいです。
レガシィのスキルアップ変形で異世界ドライブが快適化。
初めての魔物(狼系)と遭遇。
魔物をそのまま轢き殺してポイントゲット。
轢き殺した死体をイベントリに入れて証拠隠滅。
「オーナーさま、この先に小さな湖があるみたいです。
今日はその近くに泊まりませんか?」
気が付けば空が赤く染まり、夕暮れの装いに変わっていた。
もうしばらくすれば周囲は夜の闇に沈むだろう。
であれば、まだ空が明るい今のうちに野営場所を確保しておくべきだろう。
「そうだな、そうしよう」
俺はレガ子の提案を受け入れ、愛車のハンドルを湖の畔へと向けるのだった。
初めての戦闘から約30分後、俺は愛車を湖畔の開けた場所に停めると、手早く周囲の状況を確かめた。
すでに太陽は遠くに見える山並みに隠れつつある。
周囲が暗闇に落ちるまでの時間はあまりない。
目に見える範囲の安全を確認し、レガ子に周辺索敵の結果を尋ねる。
「とりあえず半径1Kmの地上や上空には魔物や野生動物はいませんね。
ただ、湖の中・・・水中には多くの生命反応がありましたが、おそらくお魚さんとかだとおもいいます」
「そっちは半漁人とか空飛ぶ殺人魚とかが潜んでいないことを祈るしかないな」
「もしそんなのが出てきたとしても、私たちに敵意を向けたとたんに察知できます。
それにこの子の防御フィールドの範囲内にいれば、たとえ不意を突かれても自動的に防御フィールドが守ってくれますから安全ですよ」
まぁそうなんだけどね。
問題は、トイレとかで愛車のそばを離れる時があることだな。
「あっ、オーナーさまがお手洗いに行くときは、ちゃんとレガ子が見張っていますからご安心くださいっ」
心を読まれたことに驚き、慌ててレガ子の方を見ると、そこには下衆な笑みを浮かべた相棒の姿が。
「お前の見張りが一番怖いわ!」
〝キャー、キャー〟叫びながら逃げ回るレガ子を追い回してしううちに、先ほどまで感じていた殺生による息苦しさが消えていくのを感じていた。
開放したリアゲートの下にアウトドアテーブルを出し、電機ケトルを使ってお湯を沸かす。
ケトルの横では、くすぐりの刑によってダウンしたレガ子が横たわっている。
時おり、身体を〝ビクン、ビクン〟とさせているのが、ちょっとエロい・・・・。
もしかしてヤリすぎたか?
「レガ子もコーヒー飲んでみるか?」
「はっ、はっ・・・
あ、甘くしていただけますか?」
ようやく上半身を起こしたレガ子。
息を整えながら返事を返してきたその顔は、ほんのりと赤く染まっていた。
「お望みとあれば」
「で、では、お願いします」
そのまま大の字になって、仰向けに倒れこんだレガ子を横目に見ながら、俺はイベントリからインスタントのココアを取り出す。
自分用の大型マグカップに、インスタントコーヒーとココア、グラニュー糖を入れて少し濃い目のコーヒーを作る。
そしてサイズ的にレガ子にちょうどよさそうだった、缶コーヒー付属のおまけミニカーのケースを洗い、そこにマグカップからのコーヒーを移して、両方にお湯を足した。
別々に作らなかったのは、小さな〝レガ子用カップ〟の適量が分からなかったからだ。
「もう飲めるか?」
くすぐりのダメージから復帰したレガ子が用意された自分用のカップを手に取る。
そして一口飲むと、目を輝かせて残りをグビグビと飲みはじめた。
「このコーヒー、甘くておいしいです♪
コーヒーって、もっと苦いものだと思っていました」
「普通のインスタントコーヒーにこいつを加えて〝モカジャバ風〟にしてみた」
そう言って、レガ子にインスタントココアのパッケージを見せた。
「本当のモカジャバは、普通のコーヒーにチョコレートと牛乳を入れるんだけどな。
でも、これだけでもけっこう甘くなって、子供でも飲みやすくなるんだよ」
するとレガ子は急に膨れっ面になり
「レガ子はお子様じゃありません!」
と怒り出した。
そういう所がお子様なんだけどなぁ・・・。
その後、移動時のレベルアップで貯まったスキルポイントを使って各自がスキルを強化。
愛車は2段階のレベルアップで8ポイントが貯まっていたため、【車体強化(ボディ硬質化・レベル1):4ポイント】と【タイヤ強化(防弾・防刃化・レベル1):4ポイント】を実行。
これで悪路走行時に受けるダメージがかなり軽減されるはずだ。
レガ子も8ポイントが貯まっていたが、今回はプラズマアローやファイヤーボールといった、中・遠距離支援系の攻撃魔法を中心に取得をしていた。
どうやら今後の戦闘に備えて、俺の戦いをサポートできるスキルを選んだようだ。
俺の貯まっていたポイントは、レガ子らの半分の4ポイント。
なので、前回取得しなかった【危険予知・レベル1:2ポイント】と【視野強化・レベル1:2ポイント】を選択してみた。
相変わらずスキル選択の実行後は、肉体を改造されるような感覚が襲ってきて、精神力をごっそりと持っていかれる。
しかし、視野強化の後に夜空を見て驚いた。
明らかにスキル取得前には見ることができなかった、微かな星の光までもが見えるようになっており、頭上に煌く星々の光に圧倒されてしまった。
「これは・・・・
すごいな・・・・」
「どうかしましたか?」
星の海に圧倒されていた俺を見つけ近づいてきたレガ子に、今見ている星空のことを話す。
レガ子も雲ひとつない満天の夜空を見上げ、その美しさに歓喜の声を上げた。
「そういえば、こちらの世界の夜空はものすごく星がきれいですよね♪」
「この異世界には〝光害〟がないからな」
「〝公害〟じゃなくて〝光害〟ですか?」
「ああ」
そっちの意味の〝公害〟の影響もあるだろうが、元の世界で星空が良く見えないのは〝光害〟のせいだ。
文明が発達し、人間の生活が豊かになり、夜になっても人の生活圏が明るい光を出し続けるようになったことで、暗く小さな星の光がかき消されて見えなくなってしまうのだ。
日本の都心部では、周囲に明かりが少ない公園などに行っても天の川が見えないのはそのためだ。
「地上が明るくなると、夜空は暗くなるんだよ・・・」
〝公害〟の説明をしながら、夜空を見上げて瞳を輝かせているレガ子に、イベントリから取り出した双眼鏡を渡す。
それは日本の望遠鏡メーカーが発売した、低倍率だけどその集光性能の高さから実際よりも対象物を明るく見ることができる、星空観測専用の双眼鏡だった。
「オーナーさま、これは?」
「夜空が肉眼よりも明るく見える双眼鏡だよ。
使ってみるか?」
「はいっ♪」
小型で薄い構造の双眼鏡なので、人形サイズのレガ子でもなんとか扱うことができていた。
「オーナーさま、オーナーさまっ。
アレって、こっちの世界でも〝天の川〟って呼ぶんでしょうかね?」
「どうだろうな・・・。
こっちの世界の人と仲良くなれたら訊いてみたいな」
イベントリの中には、キャンプで使う予定だった反射望遠鏡なども入っている。
もしもこの世界に友人と呼べる存在ができたら、星空にまつわる話などを聞きながら異世界の天体観測を楽しむのも悪くない。
星空双眼鏡を眺めながら、「うわぁ~」とか「おぉ~」とか興奮した声を上げているレガ子を見ながら、そんな異世界での暮らしを想像してみた。
でもまぁ・・・
今は夕飯の準備が先か。
若干ハイテンションになっているレガ子を横目で見ながら、俺は夕飯の支度を始めるのだった。
ミートソースを使ったパスタで夕食を済ませた俺たちは、今は愛車の中で今後の行動方針について話し合っていた。
まず当面の問題は物資だ。
食料や水などはキャンプ用に大量に積んでいたのでしばらくは持つが、それでもいずれは使い切ってしまう。
ちなみに夕食のパスタは、電子レンジ専用のパスタ茹でケースを使って作ったので、無駄な水の消費を最小限に抑えていた。
このクルマには、バッテリー内蔵型のポータブル多機能電源や小型冷蔵庫、電子レンジなどを常に積んでいたため、異世界に放り込まれた今はかなり役立っている。
それに特に重要なのがガソリンだ。
おそらく今日1日だけで20リットル近くのガソリンを消費しているものと思われる。
レガシィのガソリンタンク容量は60リットル。
すでに1/3近くが無くなっている。
レガ子の本体がこのクルマである以上、ガソリンが無くなったからといって放棄するわけにはいかない。
というか、俺が愛車を放棄したくない。
インターネットへの接続やイベントリなどの生活基盤もこのクルマが基本になっている。
今の俺たちにはこのクルマ抜きでの異世界生活は考えられなくなっていた。
「こうなると、あの駄女神がレガ子に言っていた言葉が気になってくるよなぁ・・・」
それは、世界に移動する時にガソリン補給を気にしていたレガ子に女神が言った『心配ない、心配ない。1日過ごしてみれば分かるから~』という言葉の部分だ。
あと『1日の終わりの時にガソリンを全部使い切らないように』とかも言っていたらしいので、それも気になる。
あと2時間ほどで今日が終わる。
1日の終わりに何が起きるのかが、かなり気になっていた。
「もう一度、女神様にお会いできればいいのですが・・・」
そんなレガ子のつぶやきに、俺は女神を呼べるかもしれないある方法が思い浮かんだ。
その方法をレガ子に相談しようとした時、運転席のナビモニターが突然光だし、画面から女性の上半身が這い出してきた。
まるで、どこかのホラー映画のようだ。
横にいるレガ子は「ヒッ!」と短い悲鳴を上げて硬直している。
やがて画面から上半身だけを出現させた女性は俺たちのほうを見て・・・・
「なんでいつまで経っても呼んでくれないんですかぁ~。
わたし、一日中ず~っと呼ばれるの待っていたんですよっ!」
などという、意味不明の抗議をしてきた。
「えっ?
め、女神様ですか?」
女性の姿を確認し、女神と呼ぶレガ子。
ほぅ・・・
こいつが噂の駄女神さまとやらなのか・・・。
すかさず俺は、その駄女神さまの額を鷲づかみにしてアイアンクローを決め、
「なぁ~(駄)女神様、イロイロ訊きたいことが多いから、コッチ来てお茶でも飲もうや・・・」
と、恨みと鬱憤が積もったすてきな笑顔で女神をナンパするのだった。
インスタントコーヒーにココアを入れる〝モカジャバ風〟は、実際にけっこう良く作って飲んでいます。
チープなインスタントコーヒーが、かなり美味しくなりますので、ぜひお試しください♪
今回のお話では、異世界で見る星空というシチュエーションにこだわってみました。
高校時代は科学部とテニス部を掛け持ちしていて、科学部の活動でよく天体観測をしました。
文明が発達していない異世界であれば、きっとすてきな星空を見ることができるんでしょうね。
レガシィに積んである天体望遠鏡は、いずれ活躍の場を設けたいと思っています。