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第1章 第6話(第13話) ~魔物との遭遇と、初めての殺生~

レガ子「作者様? 今回の書き出しにある前回のお話のおさらい部分に、オーナーさまの拳で語る魔法少女ごっこが入っていませんよ?」


薫「せっかく忘れていたのに、余計なことを言うなぁ!」



ということで、前回までのおさらいです。


異世界の人たちには、レベルアップとかスキル獲得とかのチート設定はない。

主人公やレガ子が特殊なだけ。

レガ子が初めての装備クリエイトを行い、特殊なグローブを作って主人公に渡す。

それは魔力を操作して、防御にも攻撃にも使えるものだった。



「レガ子は、オーナーさまを守りたいんです。

 だから気にしないでくださいっ」


その笑顔を見たら、俺のことを想ってくれるレガ子の気持ちに水を差すのも野暮だと思えた。

なので、戦う時にはレガ子の魔力も遠慮なく使わせてもらうことにした。

彼女の頭をなでながら、俺も笑顔で

「ありがとうな。大事に使うよ」

とだけ感謝の言葉を返した。




防御にも攻撃にも使える装備をレガ子に創ってもらった俺は、本来は友人らとのサバイバルゲーム用に持ってきていた野戦用の服装コンバットスーツに着替え、愛車レガシィをさらに走らせた。


車高を上げ、タイヤを太く大きくさせたことで異世界の荒れた路面でも走りやすくなり、快調に速度を上げながらレベルアップの経験値(走行距離)を稼いでいった。


次のレベル3に必要な走行距離(20ポイント・20km)を1時間ほどで走ると、周囲の風景は森から草原へと変化していた。

ちなみにレベルアップで獲得したスキルの選択は、後でまとめて行うこともできるようなので、今はそのまま日没まで走ってしまうことにした。



日本ではなかなか見ることができない広大な大自然の中に伸びる道を、少しだけ開けた窓から入ってくる異世界の風を感じながら、自分のペースで自由に走る。


渋滞も信号もない。

どこまでも続く道を、風を切りながら地平に向かって走り続ける。

多くのドライバーやライダーが憧れる、そんな夢のような場所を走っている事に感動すら覚える。


速度は時速40~50キロ前後。

路面状況が悪いため、さほどスピードが出せるわけではない。


それでもハンドルを握っていることが・・・

アクセルを操作し、クラッチを切り、ギアを入れ替える一連の動作が・・・

ドライブしていることが、ものすごく楽しい。


たぶんコイツレガシィもそう感じているんじゃないだろうか?


そんな気持ちを確かめるように助手席に視線を移すと、コイツレガシィの魂でもあるレガ子が楽しいそうに外の風景を眺めながら、車内に流れる音楽に合わせて鼻歌を歌っていた。


やがてその音楽が途切れた。

CDチェンジャー内にセットしておいたCD(全部エロゲのサントラCD)をすべて演奏し終えたのだ。

なので曲の雰囲気を変えるために、今度はオーディオユニットにSDカードを差し込んだ。

ちなみにこのSDカードの中には、アニメの主題歌などがMP3ファイルで収録されている。


新たにかかった楽曲に、レガ子が早速反応した。


「あっ、これ今期の新作アニメの歌ですね?」


「うん。

 今期のが10曲くらい続いた後は、徐々に古い作品の曲が流れるようになっている」


「でもこっちの世界に来ちゃったから、今放映中のアニメの続きが見れなくなっちゃいましたね・・・」


気が付いた事実に、残念そうな声を出すレガ子。

俺が車内で頻繁にアニメを見ていたせいなのだろうが、すっかりレガ子もアニメ好きに育ってしまったようだ。


「まぁネットにつながるなら、こっちでも鑑賞する手段はイロイロあるから大丈夫だよ」


表には公式が配信アニメを提供している動画チャンネルサイトもあるし、それでもダメなら裏の動画投稿サイトなどもある。

おそらく日本にいるときと同じように、ほとんどの放映アニメを異世界のこの地でも見ることができるはずだ。


「そうなんですか?

 では放映アニメの続きを見るときは、ぜったいレガ子にも声をかけてくださいねっ」


そういうとレガ子は、気になっているアニメのタイトルを次々と挙げていった。

その趣味が、俺とほぼ同じ内容だった事に苦笑いした。





しばらく走り続けていると、何かを察知したレガ子が緊張した様子で声をかけてきた。


「敵性反応を示している何かが5体、右前方の草原から近づいてきます!

 生体識別・・・・・・完了。

 魔物と認定!

 種類は草原の狼ステッペンウルフです!」


魔物との初めての遭遇に、ハンドルを握る手が汗ばむ。


「どうする?

 クルマを止めて、戦うか?」


腰のベルトにぶら下げていたサバイバルナイフの感触を確かめ、初戦闘への覚悟を決めていると、レガ子がとんでもない提案をしてきた。


「いえ、このまま轢いちゃいましょう♪」


「え?」


「動きが早く、集団戦闘をスタイルにしている狼の群れと、真面目に接近戦をする必要はありません。

 走行しながらこの子レガシィに防御フィールドを張りますので、弾き飛ばしちゃってください!」


うわぁ・・・

轢き殺すの前提かよ(汗。


運転免許を所有している善良なドライバーとして、違う意味で嫌な汗が出てきた。


クルマに宿った八百万の神のくせに、その提案はどうなのよ・・・。

自分の本体で轢き殺すことになんら躊躇いがないレガ子の笑顔が少し怖いぞ。



「ではオーナーさま、レガ子が3つ数えたら防御フィールドを出しますので、アクセル踏んでスピード上げてください!」


「わ、わかった」


ドライバーとしての葛藤はあるが、覚悟を決めることにした。


「3、2、1、GO!」


合図に合わせてアクセルを踏み込む。

ターボエンジンの状態を表すブースト計の針が一気に加圧側へと移動し、速度が瞬間的に上がる。


そして次の瞬間、何かがぶつかったような鈍い音が続けておこり、振動がハンドルに伝わってきた。


「オーナーさま、ストップです!」


レガ子の停車指示に身体が反応し、ギアを落としてエンジンブレーキを掛ける、

と同時に、ダートな路面で横転しないように注意しながらブレーキを踏み込む。


やがてレガシィは、草原の狼ステッペンウルフを跳ねた場所から数十メートル離れた場所に停車した。


「3体の死亡ロストを確認。

 残り2体は動きがなく、おそらく瀕死の状態ではないかとおもわれます」


周辺サーチを行っていたレガ子の報告を聞き、クルマをUターンさせると、生き残りの狼の元にクルマを近づける。


生き残りの近くには、速度がのったクルマに防御フィールドの反動つきで撥ね飛ばされ、内臓破裂を起こして絶命している狼の死体があった。


狼たちはおそらく相手が馬車みたいな乗り物だと勘違いして襲い掛かってきたのだろう。

馬車であれば、狼が襲い掛かってきた瞬間に馬が怯え、この襲撃も成功したのかもしれない。

しかし相手がこの世界には存在しないはずの機械の乗り物クルマだったことが狼たちの不運だった。



「やはり動きませんね・・・

 どうします?

 とどめを刺しに行きますか?」


正直、今でも生き物を殺すという行為に迷っている。

覚悟だってできているわけではない。


しかし人を襲う魔物が存在し、治安すらも良くない異世界で生きていくためには、早いうちに殺生に慣れておく必要がある。


「そうだな」


少しだけ目を閉じ、無理やり覚悟を決める。

クルマから降り、魔力を通したサバイバルナイフを構えながら瀕死の草原の狼ステッペンウルフに近づく。

そこには草原に倒れ、息絶え絶えに痙攣しながらも、近づく俺に向かって威嚇の牙を向ける狼の姿があった。


〝すまんな・・・〟


心の中で今から狩り取る命に謝罪をすると、魔力をまとわせたナイフの刃先を狼の首筋に付きたて絶命させた。

命を奪った感覚に指の震えが止まらなくなったが、その手をジャケットのポケットに隠し、普段の表情を無理やり作ってレガ子の方を向いた。


「この魔物の死体はどうするんだ?」


するとレガ子はその問いに答えるでもなく俺に近づくと、俺の首筋に優しく抱きついた。


「オーナーさまは悪くありません。

 ここはそういう世界なのです。

 だから、罪の意識に囚われたりしないでください」


まいった・・・。

レガ子には俺の気持ちなどバレバレだったようだ。


「ありがとう・・・」


そんなレガ子の心遣いが嬉しくて、自然に感謝の言葉が出た。





「もしかしたら狼さんの毛皮とかが売れるかもしれませんから、とりあえずイベントリに入れませんか?」


入れるのか?

死体コレを?

食料とかも入っているイベントリの中に?


気分的にはすすまないが、この先村などに立ち寄ったときに換金できるアイテムは必要だ。

なのでイベントリの中に、〝魔物〟→〝まるごと〟→〝草原の狼ステッペンウルフ〟いう感じに何重にも収納フォルダーを作って、その中に狼の死体を収納した。


ちなみに草原の狼ステッペンウルフ1体につき4ポイントの経験値が入っており、5体で20ポイント。

俺たちはあと20Kmを走ることなく、レベル4にランクアップしていた。




「オーナーさま、この先に小さな湖があるみたいです。

 今日はその近くに泊まりませんか?」


気が付けば空が赤く染まり、夕暮れの装いに変わっていた。

もうしばらくすれば周囲は夜の闇に沈むだろう。

であれば、まだ空が明るい今のうちに野営場所を確保しておくべきだろう。


「そうだな、そうしよう」


俺はレガ子の提案を受け入れ、愛車レガシィのハンドルを湖の畔へと向けるのだった。



今回のお話では、このお話を書くと決めたときに考えていた、異世界の大地を現実世界のクルマで疾走する爽快感や雰囲気を表現したかったのですが、うまく伝わりましたでしょうか?


あと、今回の話を書くにあたってちょっと調べたのですが、パソコンがあってインターネットにさえ繋がっていれば、異世界に行ってもアニメやエロゲ、漫画やラノベ鑑賞などのオタク趣味が本当に続けられちゃいそうなんですね。

恐るべし、インターネット・・・・・(汗wwwwww



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