第2章 第41.6話 ~番外編・(ぽんこつ)女神リーゼさんのビルダー体験記 その3~
本業のお仕事が忙しくて2週間ほどお休みをいただいてしまいましたが、ようやく再開するだけの余裕が出来ました。
とはいっても肝心の本業は月刊誌の編集なので、ほぼ毎月のように修羅場はやってくるんですがね・・・。
それでも当面の間は、今回のように週に何度も職場に泊まり込むようなデスマーチ進行は起きないはずです。(そう思い込みたい・・・・)
さてリーゼさん視点の番外編ですが、本当は今回で終わらす予定だったのですが、気が付けばその3だけで1万3000文字を超える大作になってしまいました。
そのためさらに2分割して、その4までの4回連続モノにさせていただきます。
これで次回の分もすでに書き終えている事になりますので、次週の更新も確実に行うことができます♪(苦笑)
なおこの番外編のお話しは、第2章本編では「第2章・第27話(第73話)」中での出来事になっています。
「地面から建物が生えてくる様子を眺めていると~~、なんだか一昔前の洋ゲーにあった『Warhammer 40,000』シリーズに出てくる施設建築をリアルで見ているような気分になりますね~~」
薫さんたちが王国騎士の方々を引き連れて遺跡周辺にいるガレドラゴン駆除に出かけているので、彼らの目がこの遺跡周辺から遠ざかっている今のうちに、この遺跡の入り口を覆い隠すように建物を創っている最中です。
しかし・・・
う~~ん自分で言うのもあれなのですが、何度経験してもこの図は異様ですよね~~。
わたしが管理神の力を使って行使する〝クリエイト〟というのは、薫さんやレガ子ちゃんが使っている〝クリエイト〟と違って、この世界に素材するマナを物質へと直接変換して物体を生み出すものなのですが、物質変換の生成面が地面に設定されているために端から見ると地面から物体(今回の場合は家)が生えてきているようにしか見えないんですよね~~。
「あはっ、あははあははは・・・」
その証拠に、わたしのサポート役としてこの場に留まってくれているクリスちゃんは、先ほどから引きつった笑みを浮かべながら隣で変な笑い声を上げていますし・・・。
「リ、リーゼ殿・・・なんで地面から建物が出てきているんじゃ?」
「う~~ん・・・これは別に地面から建物が生えてきているんじゃないですよ~~。
地面の上に物質の生成面を設定して、建築物の上の方から組成を組み上げていっているので、結果として生えてきているように見えるだけなんですよ~~」
クリエイトで創りあげる建物の図面や細かな仕様の詳細は、世界樹のメインシステムに読み込ませてありますので、物質生成に必要な細かな制御は全部世界樹のメインシステムが受け持ってくれます。
なのでわたしがするお仕事は、生成面にマナ変換に必要なエネルギーを送り続けるだけなのですが、これが地味に疲れるんですよね~~。
建物の状況は、すでに3階部分の生成を終えており、今は2階部分が少しずつ地面から姿を現してきているところだったりもします。
3階部分はどの部屋も中に家具などがない空き部屋だったのですが、今生成中の2階や1階は内部設備がギッシリと詰まった状態で創ります。
そのためここから先は、わたしが流さなければならないエネルギーの量がグンと跳ね上がるんですよね~。
クリエイト中の建物に向かって両手をかざし、自分の身体から引き出されるエネルギーが一気に増えたことに若干のけだるさを感じながら、「きっと薫さんの世界で働く建築現場の発電機ってたぶんこんな心境なのかしら・・・」などとつまらない事を思いうかべます。
「はぁ・・・お昼には労いのアルコールが欲しいです・・・」
そしてクリエイト作業を始めて約2時間後、なんとか無事に建物が完成しました。
ほぼ図面通りの建物が完成し、目の前にそびえ建っていることに少しだけ感動してしまいます。
なにせ、これでこちらの世界でも快適な引きこもり生活ができる拠点をゲットすることが出来たのです。
しかも、表面上は薫さんからの依頼を遂行するという〝お仕事〟になっていますので、あの子たちに説教される心配もありません。
これぞまさしく、完全犯罪が成功した瞬間だと思います。
私が自分の腕前と手際の良さに自己満足していると、クリエイトの最中にずっと引きつった笑みを浮かべたまま固まっていたクリスちゃんが、ようやく我に返って動き始めました。
「悪い夢でも見ているような気分じゃったが、これでやっとリーゼ殿が創造神様であることが我にも納得できたぞい」
「うぅ・・・クリスちゃん、それはどういう意味でしょうかぁ~」
「だってのう・・・普段のリーゼ殿の言動を見ているとのう・・・」
「しくしくしく・・・」
自分に神様っぽい威厳や雰囲気が無いのは、とっくの昔・・・数十億年前に自覚してますよーっ。
でもいいんだもん。
わたしは世界樹の管理人として、長い人生を楽しく愉快に生きていくって決めたんだもん。
しばらくすると騎士の方々よりも先に、狩りを早めに切り上げた薫さんらが戻ってきました。
「す、すごいなリーゼ。
コレを僅か2時間くらいで創ったのか?」
昼食の下準備(鍋の灰汁取り)をレガ子ちゃんに任せてから建物に近づいた薫さんは、そのまま玄関前まで移動し、玄関扉やその周辺の壁などを触って質感を確かめています。
やがて玄関脇から広いウッドデッキへと移動すると、掃き出し窓越しに建物の中(応接室)を覗き込みました。
「なぁリーゼ、これって板ガラスなのか?
なんか質感というか、叩いた時の感触がガラスとは違うような気がするんだが」
「なんじゃ、板ガラスとは?
窓の素材と言えば白スライムの体液を板状に固めた『スラ板』と相場が決まっておるじゃろうが」
「えっ? 何それ?」
薫さんの疑問にわたしが答えるよりも先に、クリスちゃんがこの世界で窓ガラスの代わりとして一般的に普及している『スラ板』についての説明を始めてしまいました。
「白スライムから核を傷つけないようにして抜き出すとな、スライムの本体が液状化するのじゃ。
その液体を窓枠の大きさに合わせた型枠に入れての、そこに特定の植物の樹液を混ぜると凝固が始まって透明な板になるのじゃ」
「げっ、それじゃこの世界の窓って、全部スライムからできているのか?」
「カオル殿の世界じゃ違うのか?」
「俺の世界の窓は、基本的にはガラスを板状に加工したものを使っているんだよ。
というよりも、スライムそのものが居ないから」
「なるほどのう・・・我が住むこの世界とはだいぶ文化や生態系が違うようじゃな。
ちなみにこっちではガラスは食器ぐらいにしか使わんぞ」
「まじか?」
「だいだいガラスなんぞよりもスラ板の方が丈夫じゃからな」
薫さんに説明をしながらクリスちゃんも窓に近づき、さきほどの薫さんよりも若干強めに窓を叩きました。
しかし叩いた時の感触に違和感を感じたようで、妙な顔つきになっています。
「うん? なんじゃ・・・この感触はスラ板とも違うような感じじゃぞ・・・」
この窓の素材、実は下手な金属よりも固いですからね~。
クリスちゃんが本気で体当たりしたとしても、絶対に割れたりしないんですよね~~。
「ふふふふふ、実はこの建物に使われている窓の素材は、ぜ~~んぶ『透明アルミニウム』なんですよ~~。
なんと弾性率は鋼鉄に匹敵するくらいありますからね~、剣でおもいっきりぶっ叩いても割れたりしませんよ~~」
わたしの説明を聞いて、薫さんも驚いた顔をしてくれています。
なんか気分がいいです。
「えっ? 透明アルミニウムってアレだよな?
映画『スター〇レック』に出てきた・・・」
「なんじゃ? そのトウメイアルミニウムというのは?」
「いや、俺がいた世界でも空想の産物なんだけどな・・・」
あれ?
もしかして薫さん気が付いていない?
「透明アルミニウムは薫さんがいた世界でも、研究所レベルでは製造に成功していますよ」
「マジか!?」
「酸化アルミナと酸化タンタルの組み合わせて、2015年に東京大学の研究チームが製造に成功していますよ」
「えっ、ちょっと待て。
今ググってみるから・・・」
薫さんは懐からスマトフォンを取り出すと、なにやらネットで調べものを始めました。
そしてすぐにスマホの画面から顔を上げます。
「マジだった・・・。『ほぼ破壊不可能の超硬ガラスの開発に成功』とかいう記事を見つけた・・」
「酸化アルミナと酸化タンタルの合成が結構難しいので、まだ薫さんの世界では量産化の技術は確立できていないみたいですが、たぶん時間の問題なんじゃないでしょうかね~~。
あっ、ちなみに私が創った透明アルミニウムは更に固いですよっ。
ほぼ間違いなく、そのライフルでも傷一つ付けられませんから」
わたしは説明を聞いてかなり驚いている薫さんの横に並ぶと、応接室へとつながる掃き出し窓を開けて室内に入ります。
応接室の中には大きなグランドピアノが設置してあり、ソファーやテーブルといった応接セットが2組置かれているのが見えます。
まぁ、このピアノとかも私がクリエイトでマナから創ったものなんですけれどね。
「この暖炉はどういう仕組みになっているんだ?」
わたしを追って応接室に入ってきた薫さんが、窓横の壁際に設置してある暖炉を覗き込んでいます。
「それは炎の魔石を使って暖を取る設置型の魔導器ですね~。
同じものがわたしたちが住むプライベートスペースのリビングにもありますよ~。
あと形状は違いますが、ストーブタイプの暖房用魔導器も2基ガレージに設置してあります。
この建物の中は基本的には全室空調付きなんですけど、ココとガレージだけは扉や窓を解放しっぱなしになることがあると思って、あえて暖房を設置してみたんですよ~」
「ほぅ、これは便利そうな魔導器じゃな。
魔石がやや高価なのがネックじゃが、原理さえわかれば同じようなモノを作って国民向けに売ることもできそうじゃ」
「まぁ市民の生活レベルの向上につながる道具なら、技術提供しても構わないとは思うが・・・リーゼはそれでもいいか?」
「わたしは別に構いませんよ~。
暖炉やストーブだけじゃなく、キッチンにある冷蔵庫なんかの仕組みもコピーしていいですよ~」
「なんだ、冷蔵庫まで創ったのか?」
「氷の魔石で動く魔導器ですけどね~。
あとシステムキッチンになっているので、炎の魔石を使ったコンロも付いていますよ~。
見に行きますか~?」
「見に行くけど・・・リーゼ、お前まったく自重しなかったろ」
「だってせっかく自分が住む家を創るんですよ~、なら少しでも快適にすごせる様にしたいじゃないですか~~」
「リーゼ・・・やり過ぎだっ」
共同施設のキッチンに入り、中を見た途端に薫さんが頭を抱えてそんな事を言いだしました。
「わぁーっ、お兄ちゃん、すっごいきれいなお台所だよっ」
そんな薫さんとは対照的に、アリシアちゃんはキッチンの設備を見て目を輝かせています。
「そこの流し台は、水の魔石を使ってつねにきれいな水が出るようになっているんですよ~」
「うわぁーっ、いいなぁー。すごいなぁー」
水道の蛇口を捻って水を出したり止めたりしながら、アリシアちゃんが興奮しています。
まぁこの世界では井戸の水を汲んで家に溜めておくのが一般的ですからね。
その横でミャウちゃんはコンロの点火スイッチを押し、自動的に火が点くのを見て驚いています。
「これが冷蔵庫というやつじゃな・・・。
食材を低温保存する道具なのか・・・、これもぜひこの研究所で量産したいの」
クリスちゃんは冷蔵庫に興味を示しています。
こういった新しい技術を見て、すぐに国民の生活向上のための発想に繋げるのは、やはり人の上に立つ王族の血がなせる業なのでしょうかね~。
「2階の、私達のプライベートスペースには、もっと豪華な設備を入れてありますよ~」
「ホントっ!? わーーいっ、これならお兄ちゃんとのお料理作りが楽しくなりそうだよねっ」
喜ぶアリシアちゃんの笑顔を見て確信しました。
これでお酒のつまみは美味しいものを作ってもらえるのが確実になったはずです。
わたしグッジョブですっ。
「ちなみに、このキッチンの壁の向こう側が大浴場になっていますね~。
お風呂のお湯は、なんとミネラルたっぷりの鉱泉を沸かし直したものなので、美容効果バッチしですよ~~っ」
「ここが来客用の宿泊部屋ですね~」
「奥の襖の向こうには和室もあるので、付き人も一緒に宿泊可能ですよ」
「そして廊下を挟んだ向かいの部屋が、警備兵などの簡易宿泊部屋ですね~」
「仮眠のためのベッドと報告書とかを書くための机しかないが、ここで兵士が生活するわけではないのじゃからこれで十分じゃろ。
それに、これでも王都やロイドにある兵士詰所の仮眠部屋よりははるかにましじゃしの」
補足説明をしてくれたクリスちゃんが苦笑いを浮かべています。
「おおっ! これが憧れだった夢のビルトインガレージかっ!」
廊下側のドアからガレージに入った薫さんが、喜びのあまり目に涙を浮かべながら内部を見回しています。
あのクルマであれば3台は余裕で入る広さなので、薫さんが何か作りたくなった時でも、ココならクリエイト作業の邪魔にならないはずです。
「ガレージの中には独立した水道やトイレなんかもありますから、長時間こもりっきりの作業でも困らないはずですよ~。
あ、あと洗濯機(魔導器)も設置していますので、整備で出た汚れものなんかも洗えますからね~」
「おお、ここなら雨の時も思いっきり遊べるのニャっ♪」
「遊ぶのはいいけど、周囲のモノを壊さないように気を付けてくれよ」
この場を遊び場にする気満々のミャウちゃんに、薫さんが冷や汗を流しています。
まぁ、ミャウちゃんが獣人の特技であるフルパワーで暴れたとしても、この建物は壊れませんけどね~。
なにせすべてが『非破壊オブジェクト』の扱いになっていますからっ。
「ちなみにガレージの裏にある部屋が、遺跡の入り口を隠すための部屋になっていますね~」
「その部屋のセキュリティはどうなっている?」
「出入口の見た目は普通のカギ付きのドアですが、ドアのカギ穴はダミーですね~。
基本的には生体認識式で、ココに居る誰かがドアノブを握らないとカギは解除されない仕組みになっていま~す」
「なんじゃ、我やミャウ殿も含んでいるのか?」
「みなさんは薫さんの身内みたいなものですから、気にしなくていいんじゃないかと~。
かまいませんよね?」
「別に問題は無いんじゃないか?
あの遺跡は緊急時の避難場所としても使いたいから、クリスやミャウでも部屋に入れないと困るしな。
ただまぁ・・・肝心の遺跡の入り口自体が、今はまだ俺かアリシアじゃないと開かないけどな」
「その辺の認識登録作業は、じっくりと遺跡の中央制御室を調べてからになりますね~。
あとぉ・・・」
「なんだ?」
「遺跡への避難が必要な緊急時なんか起きないとおもいますよ~。
なにせこの建物自体が〝非破壊オブジェクト扱い〟になっていますから~、たとえ攻城兵器で攻められたとしても絶対に壊れませんし~~」
「お、おい・・・リーゼそれは絶対にやり過ぎだって・・・」
またもや薫さんが頭を抱えてガレージの床にしゃがみ込んでしまいました。
う~~ん、なにがいけなかったんでしょうかね~。
薫「今回の冒頭に出てきた〝洋ゲーの『Warhammer 40,000』シリーズ〟ってわかる読者はどれくらいいるのだろうか?」
レガ子「分からない人はYoutubeで『Warhammer 40,000』でググればいいと思うのっ」
薫「あ~でもそれだと最近のARPG風やFPS風のゲームが上位に来ちゃって、おそらく〝施設が地面から生えてくる〟の感覚が見れる一昔前のゲーム(リアルタイムストラテジー風)はヒットしないんじゃないかなぁ・・・」
リーゼ「それならば複合検索にして~、〝Dark Crusade〟とか〝Dawn of War〟を加えれば、たぶん昔のゲームのプレイ動画とかがヒットするんじゃないでしょうか~」
作者「お前らの話を聞いていたら、昔の『Warhammer 40,000』シリーズで遊びたくなってしまったぞ」
リーゼ「ちなみに作者さまはどの勢力が好きなんですか?」
作者「インペリアルガードだが」
リーゼ「薫さんは?」
薫「スペースマリーンだな。そういうリーゼはどこなんだよ?」
リーゼ「もちろんケイオスにきまっているじゃないですかぁ~」
作者・薫「なぜ女神が悪魔信仰勢力のユニットを‥‥(汗)」




