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第2章 第41.5話  ~番外編・(ぽんこつ)女神リーゼさんのビルダー体験記 その2~

今回は前回の番外編の続きになります。


ポンコツ女神様のリーゼさん視点でのお話となっています。

時系列的には、第2章・第26話と第2章・第27話の間になります。



ちなみに結構長いお話しになってしまったので、複数回に分けてのお話となっていまして、次回にまだ続きます・・・(汗。


「まぁ、1階に必要な設備(へや)はこんなものじゃろ」


 クリスちゃんが遺跡の研究所として必要な施設(設備)の中から、建物の入り口となる1階に在った方がいいモノをリストアップしてくれました。

 それに、薫さんの要望やアリシアちゃん、ミャウちゃんの意見も加えて1階の間取り図を描いて行きます。


挿絵(By みてみん)


 まぁ、描くといっても実際に紙に描いているのではなく、薫さんがネットからダウンロードしてきた住宅間取り作成用のフリーソフトを使っているんですがね。

 その薫さんは、もとの世界では高嶺の花だった大型のビルトインガレージが実現すると知って、レガ子ちゃんと一緒に目に薄っすらと涙を浮かべて喜んでいます。


「薫さんは、ビルトインガレージの他には、なにか欲しい設備は無いんですか?」


「レガシィが3台は入る広さのガレージに、専用の暖房器具や物置部屋、さらには独立したトイレや水周りまで完備されているのだから、感動して何も言うことがないよ」


「そうですか?」


「強いて言えば・・・ガレージドアの外にカーポートみたいなものを付けたりできるか?」


「材質や形状とかをお任せいただけるなら可能ですよ~」


「じゃあお願いするよ。ガレージ内洗車って、室内に湿気がこもるからクルマに良くないって言われてるからな。

 レガ子よ、これで雨の日も洗車ができるぞ!」


「それは取っても嬉しいのっ!」


 う~~ん・・・あのクルマは洗車しなくても午前0時になればわたしが付与した状態復元の加護で汚れひとつない状態に戻るのですが、それなのになぜ重労働の洗車したがるのか理解できませんね~。


「リーゼお姉ちゃん、ここにある大きなお風呂って、わたしたちが使ってもいいのかな?」


「施設の運用に付いてはわたしは判断できる立場にいないのでなんとも言えませんが、別にかまわないんですよね?」


 アリシアちゃんの質問を、そのまま薫さんやクリスちゃんへと丸投げする。


「1階の風呂や食堂は研究所で働く職員らのための施設じゃが、まぁ空き時間に我らが使うのもアリではないかの」


「そういや、この風呂や食堂、トイレとかの設備ってどういう仕組みにするつもりなんだ?」


「どういうことでしょうかぁ~?」


「いや、ボイラーとかコンロとか冷蔵庫とか排水とか・・・」


「もちろん全部、魔力動作式の最先端設備を設置しますよ~。

 冷蔵庫は氷の魔石駆動にしますし、ボイラーやコンロは炎の魔石駆動です。

 水道関係には水の魔石を使って、トイレはなんと水洗洋式(温水便座付き)ですよっ。

 このへんの道具は薫さんが作った魔導器ということにしときますね~」


「お前・・・全く自重する気ないだろ・・・。

 あとで説明が面倒なことにならなきゃいいんだが・・・」


「それと汚水などの排水は、配水管そのものが内容物をマナへと変換させて大気中に放出しちゃう仕組みにしますので、環境汚染の心配はいりませんよ~。

 あと~~、お風呂のお湯は・・・ここの地下に温泉が眠っていると嬉しいのですが・・・先ほど地下水脈を探知した感じだと鉱泉しかないみたいなんですよね~~

 仕方が無いので、くみ上げた鉱泉を沸かし直すしかありませんね~」


「リーゼは地質調査もできるのかよ!」


「これでも女神ですからっ!」


 驚いている薫さんに向かって胸を張って偉そうにしてみますが、胸にボリュームがない体型なのでまったく格好がつきません。

 なので自分でも少しばかり悲しくなってしまいます。


「1階はボクには用がない部屋が多いニャ」


「玄関横の応接室は、来客対応用だったよな?」


「そうじゃな。よほどのことがない限り、外部の人間を研究所の奥にまで上げることはないようにしたいからの。

 物見遊山でやってきた貴族や他国の使者などはこの部屋で対応して追い返すのが理想じゃな」


「追い返すって・・・」


「ちなみに来客が宿泊するための部屋が1階の奥にあって、その部屋のドア向かいに警備兵の宿直室があるのは、宿泊客が不振な行動をした時に監視しやすいからじゃ」


「そこまでしないと駄目なのか?」


「残念ながら、今のわが国は中央の貴族すらも信用できぬ状態だからの・・・。

 来客があまりにも多いようであれば、玄関脇の物置を受付兵の詰め所に改造するかも知れんな」


「来客に煩わされるのは勘弁して欲しい」


「まぁ町ができてくれば役場を設置せねばなるまいから、いずれ来客への初期対応はそっちに投げることも考えたほうがいいじゃろうな」


「町造りが始まったら、真っ先に役場を作ってもらうようにお願いしよう」


「あはははは・・・お兄ちゃん本当にお役所仕事をするのが面倒なんだね・・・」





「さて、次は我らが住むことになる2階じゃな・・・」


 1階部分の図面が完成したので、今度は2階に作る居住区部分に話し合いが移りました。

 ここはわたしも積極的に参加して、理想の食っちゃ寝生活ができる間取りを考えなければなりません。

 理想的なのは、わたしの個室のすぐそばにトイレや洗面所、キッチン(の冷蔵庫)があり、生活上の移動が最小限ですむ部屋の位置取りです。

 なので、話し合いを上手く誘導して、さり気なくこれらの条件をクリアさせていかなければなりません。


「とはいったものの、1階部分の床面積が大きくなりすぎたから、2階全部を俺らの居住空間にすると広すぎるぞ」


「そういえば、みなさん個別の個室を作るんですよね?」


「そうした方が皆が落ち着いて生活できるじゃろ?」


「まぁそうですけど~

 クリスちゃんはこの国のお姫さまですら、かなり広いお部屋に住んでいたのではないのですかぁ~?」


「むぅ、たしかに広い・・・というかわれ一人には広すぎる部屋だったのじゃが・・・。

 カオル殿の世界では個人の部屋というのはどれくらいが標準だったのじゃ?」


「えっ? 俺の国か?

 う~ん・・・俺の国は国土が狭い関係で、住宅のサイズがコンパクトだからなぁ・・・。

 一般的な庶民の例えになってしまうが、個室だと6帖というサイズが多かったと思う」


「それはどれくらいのサイズなのじゃ?」


 薫さんの言った6帖というサイズがイメージできなかったクリスちゃんが首をかしげています。

 すると薫さんはクルマのイベントリから巻尺を取り出すと、スマホを見ながら地面に線を引き始めました。


「大体だが、これくらいのサイズだな」


 薫さんが描いた線の内側にクリスちゃんだけでなく、アリシアちゃんやミャウちゃんまでもが移動して、その広さを確かめています。


「むぅ、たしかに我の部屋に比べるとかなり狭いが・・・」


 クリスちゃんはそうつぶやきながら隣にいるアリシアちゃんやミャウちゃんの方を見ます。


「わたしは家族全員でこれよりもちょっと広いくらいのお部屋で暮らしていたから、ひとりでこれくらいのスペースを貰えるだけでも十分すぎるほどだよ」


「ボクも一族全員で大部屋生活だったのニャ」


「では、我も結婚後は王族では無くなるわけだしの、皆と一緒でこのサイズの部屋でかまわんぞ」


「えっ、いいのか?

 クリスはお姫さまだから、特別に広い部屋を作ってもいいと思っていたんだが」


「我を特別扱いするのは禁止じゃ!

 それにこの狭さならば、部屋の中に四六時中メイドが要ることもなくなるじゃろ。

 あれはずっと監視されているようで疲れるのじゃ・・・」


「げっ、メイドさんってずっと部屋にいるのか?」


「部屋付きメイドというのがおっての、常に部屋の隅に立っておって、我の所作をサポートするのが役目じゃな。

 正直なところ着替えなど自分でやった方が気楽だし、乳母のように口うるさいのでベッドの上でだらけながら書物を読むこともできん。

 おかげで城を抜け出すときは、部屋付きメイドを撒くのが一番の難関じゃったわい」


「あはははは・・・それは貴族さまじゃないと分からない悩みだね」


 クリスちゃんのゲンナリした表情を見て、アリシアちゃんが苦笑いを浮かべています。

 たしかに四六時中見張られているのは精神的に辛いですね~。

 もしわたしの部屋にあの子(シスターズ)たちがずっといたら・・・と考えると、恐ろしくなってしまいます。


「まぁ~部屋が広いと、お片付けとかたいへんですしね~~」


「そういうリーゼは、世界樹の中では全く片付けをしていなかった・・・とコリーゼから聞いているけどな」


「うぅ・・・あの子(シスターズ)たちは余計な事を・・・」


「あとコリーゼから聞いた惨状を考えると、リーゼの部屋は和室・・・というかコタツは禁止の方向でいくからな」


「ええ~~っ、そんあぁ~~~。

 空調の聞いた部屋でコタツに入りながらひたすらゴロゴロするのが最高なんじゃないですかぁ~~」


 薫さんがとてつもなく恐ろしい事を言い始めました。

 これはわたしの女神人生で最大のピンチといっても過言ではないでしょう。


「ダメだっ。

 リーゼにコタツの組み合わせは、ダメ人間・・・じゃないな、駄女神製造機にしかならいのは目に見えている」


「ぶ~ぶ~~」


「それに・・・だ、嫁候補がボトラーにまで落ちてしまうのは、さすがに俺も容認しがたいものがある・・・」


「ちょっ、薫さんはデリカシーが無いですっ!

 さすがにわたしだってボトラーなんて真似は、まだ1~2本くらいしかした覚えはないですっ!」


「えっ? 本当に経験があるのか?」


「はうっ、しまったぁぁ!」


 無言になってしまったわたしと薫さんとの間に、気まずい雰囲気の空気が漂ってしまいました。

 はうっ、勢いで余計な事まで自白してしまいました。


 そんな私たちをオロオロと交互に見ながら、アリシアちゃんが遠慮がちに手を上げました。


「あの~ボトラーって何かな・・・」


 ぐっ、これは実に説明がしにくい・・・。

 というか女神としての私の威厳が粉々に砕け散ってしまうので、説明したくないです。


 助けを求めるように薫さんの方を見ると、彼も困り果てた表情をして指で頬を掻いています。

 まぁ、男性から女性に説明できる内容じゃないですよね~。

 

 なかなか返事が返ってこないことに焦りはじめたアリシアちゃんの肩をクリスちゃんが後ろから叩き、振り向いたアリシアちゃんに首を振っています。


「アリシア殿、世の中には知らない方が幸せなこともあるものじゃ。

 我も意味は分からんが・・・おそらく人としてすごくダメな行為であるニュアンスは、なんとなく伝わってきた」


「はうっ」

 

 クリスちゃんの容赦のない言葉が、鋭利な刃物のようにわたしの胸に突き刺さりました。

 そして、そんな私たちを眺めながら薫さんは面白そうに笑っています。


「しかし、だ・・・俺も日本人だからコタツは大好きだ。

 なので共用スペースに和室を作って、そこに置くのならコタツを許可したいと思う」


「むぅ・・・それで妥協します~~。

 それならコタツはわたしが世界樹の中で愛用していたヤツを持ってきますね♪」


 あのコタツに使っている暖房装置は、癒し効果があるマナを発生させる事ができる特別製です。

 わたしの1000年分の研究の集大成ですから、なんとしてでも持ってこなければなりません。



 やがて部屋割りの間取り図を作り、各自の部屋の位置を決め、残ったスペースを職員らの宿泊スペースにして2階部分の間取りが完成しました。


挿絵(By みてみん)


「2階は床面積の半分くらいが俺たちのプライベートエリアか」


「和室を二部屋ほど追加したり、プライベート空間に専用のユニットバスも加えましたからね~」


「共用スペースには職員宿泊用の洋室が4つと、和室とやらが2つか・・・。

 手前のツインの部屋は、我に付いてくるメイドらに貰ってしまってもよいか?」


「ツイン一部屋で足りるのか?」


「王位継承権を返上して嫁ぐのだからのう、連れてくるメイドは二人までにしようと思っている。

 もちろん部屋付きメイド以外じゃ」


「なるほど・・・。

 残りの部屋は職員が宿泊した時や来客時に活用する感じかな?」


「そうじゃな、あと使う可能性があるとすれば、食堂の調理担当者がここに寝泊まりする場合じゃろうな」


(あん)ちゃん、真ん中にある娯楽室ってにゃんだ?」


「職員らが休憩時に使うコミュニケーションスペースだな」


 みなさんが共用スペースの確認をしています。

 共用スペースには、職員の方々が使用するおトイレや洗面所なども複数配置してあります。

 そして私たちのプライベートエリアは、メイン廊下にあるドアでしか繋がっていませんので、プライベートエリアに入り限りは職員の方々と顔を合わすこともありません。


「ところで、リーゼお姉ちゃんのお部屋はあそこでよかったの?」


「はいっ、もうあそこ以外考えられません」


 部屋の隣がおトイレ、そしてドアに向かい側が洗面所、さらに逆隣りがお酒や食料の保管されているリビング・ダイニングです。

 最小限の移動距離で、快適な引きこもりを実現するためには、ココ以外には考えられません。


「あ~なんとなくリーゼが考えていることが読めたんだが・・・お前の名誉のために言わないでおいてやるよ・・・」


「うぐぅ・・・」


 うぅぅ・・・なんで薫さんにわたしの崇高な作戦が見破られてしまったのか・・・。

 まぁたぶん、コリーゼ辺りがよけいな入れ知恵をしていたんだと思いますが。


「だ、ダイニングには1階の食堂よりも豪華な設備を設置しますので、期待してくださいね~~」


「まぁ・・・このメンバーだと料理するのは俺かアリシアしかいないんだけどな。

 で? キッチンをゴージャスにする本当の目的は?」


「お、おいしい酒のつまみをよろしくお願いします~~」


「はぁ、そんな事だと思ったよ・・・」


「あはははは・・・」





「最後は職員らの仕事場となる3階じゃが、これくらい部屋を作っておけば十分じゃろ」


挿絵(By みてみん)


「なぁ、俺が詰める所長室ってこんな広さがいるか?」


「商談用の応接設備や、専属秘書用の机などを置いたらこれくらいないと足りんじゃろう。

 あ、ちなみに秘書のうち一人は我がやるからの。

 それにリーゼ殿もポジション的にはカオル殿の秘書にしておいたほうがいいじゃろ?」


「うぅぅ・・・はたらきたくないでござる・・・」


「お、お姉ちゃん・・・」


 つい本音をぶっちゃけてしまった私を見て、アリシアちゃんが苦笑いを浮かべています。


「このパーティールームってにゃんだ?」


「ここが研究施設である以上、ある程度の期間で研究成果を発表せねばならんからな。

 その時に使うイベントフロアみたいなものじゃ」


「一応この二部屋は仕切り壁を畳めば大きな一部屋として使えるようにするつもりで~す。

 あと、大きなバルコニーが付くので、屋外も使ったイベントが企画できるはずだよ~」


「ほぅ・・・・では、今日の夕飯はこのバルコニーを使って、バーベキューパーティでもやるか」


「薫さん、薫さん、バーベキューなら当然ビールは・・・お酒はいっぱい出してもらえるんですよね?」


「お、おう」


「わたし、全力でこの建物のクリエイトを頑張りますっ!」


 こうしてわたしは、今晩のビールのためにこの仕事(クリエイト)を頑張ることを心に誓ったのでした。


(つづく)


リーゼ「わぁぁぁぁ、なんでボトラーの設定なんかを直前でわたしに加えたんですかぁぁぁ~~」


作者「リーゼならやっていても不思議じゃなさそうだったから・・・かな?」


りーぜ「うぇぇぇぇん。ヒドイですぅ~~~。もうお嫁に行けませ~~ん~~~」


作者「いやいやいや、薫くんがもらってくれるから(たぶん)」


薫「えっ? えぇぇぇ!?」


コリーゼ「私たちが片付けたペットボトルに、そんな恐ろしいもの場混ざっていただなんて・・・。あの部屋から撤去した飲料水は全部処分しないといけませんね」


リーゼ「わぁぁ、まってぇ~~。あの中には貴重な年代物お酒も混ざっているの~~。捨てるのはペットボトルのモノだけにして~~」


レガ子「う~~ん、ソレって『女神様の聖水』とか名前を付けて、缶入り飲料にしたら売れそうな気がするのっ」


薫「やめなさいっ!」

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