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魔力戦

魔法を使うために必要な魔力。

その魔力には他にも使い道がある。




―――――――――――――――――――――――――




「課長、僕と戦ってください」



氷課に戻ってさっそく課長に闘ってもらうようお願いをする。



「あら、もうやるの!?」


「え?」



椅子に座りながら、コーヒーを飲んでいた氷課の課長、リリアさんは驚いていた。

驚いたのに、コーヒーを吹かなかったな。

まあ、吹いていたら俺に当たってたし、それに周りの書類が汚れるからな。

相当我慢してたと思うけど。

それにしても『もうやるの』という言葉から、もう少し時間が空くものだと思っていたのだろうか。

しかし、所長室に行くときにああいう言葉を残していたから、これは新人が入る度に行われてきたことだと思うのだが。

今までの新人にすぐに戦いを挑むものは少なかったってことだろうか。

それとも、リリアさんは課長になりたてで、こういうことに慣れていないのか―――。



「あ、毎年ギリギリとか、早くても一日は空いてたから、ちょっと驚いちゃっただけよ」



前者だったか。



「まあ、いいわ。別に忙しいわけでもないし、早いに越したことはないわ。では行きましょう」


「はい、よろしくお願いします!」



そう言われてリリアさんは立ち上がり、氷課を出ていく。

俺もリリアさんについていく。




―――――――――――――――――――――――――




「あの、ここは…」


「戦闘訓練室よ」



連れてこられたのは人一人入れそうなカプセルが数個ある場所だ。

リリアさん曰く『戦闘訓練室』らしいが―――



「このカプセルに入ると、仮想空間に連れていってくれるの。そこで戦闘をします」



言い忘れていたが、この世界は魔法の世界だが、別に科学技術が発達してないなんてことはない。

このようなもの作れらている。

と言っても、こんなのあるなんて俺は知らなかったが―――。



「現実世界で戦闘なんかしたら怪我するので、こういうのが作られたの」


「でも、これってちゃんと身体能力とか、反映されるんですか?」


「当然よ。じゃないとこんなことする意味がないもの。私は機械に詳しくないからどういう原理か知らないけど、現実世界のように動けるし、持ち物も持ち込めるわ」


「なるほど、ちゃんとした戦闘ができるわけですね」


「そういうこと。…まだ使ってる組もないみたいだし、ちょうどいいわ。そこのカプセルに入って」



と、リリアさんが指差したカプセルに入ろうとする。

近づくと、勝手に開き、入るようコンピュータの声が促してくる。



「このカプセルには番号が振られていて、同じ番号同士が繋がっているわ」



リリアさんの言う通り、カプセルには大きく『1』とか『2』とか書いてある。

俺が入ったのは『1』と書かれていたカプセルだった。



「よし、入ったわね。あとの操作は外の人がやってくれるわ」


「外?」


「そう、戦闘訓練室にはもう一つ、制御室があって、そこにいる人が操作してくれるの」



ああ、そういえば部屋に入る前のところに制御室って札を見たような―――



(そこにいる人って、ここ使われない時って何してるんだろうか)



なんて思っていると、目の前が真っ暗になり、意識が無くなるような感覚に襲われる。

正確に言うと意識が無くなったと思う。

初めての経験だから思うとしか言えないのだが―――




―――――――――――――――――――――――――




意識が戻り、目を開けるとそこは草原だった。



「起きたわね。まずは、自分の身の周りのものを確かめて、無いものがないか確かめて頂戴」



目の前にリリアさんがいた。

ああ、ここが仮想空間か。

確かに感覚とか現実世界と変わらないな。

と、身の周りのものか。

とりあえず身の周りのものを確かめてみる。



(水もあるし、葉っぱもある。鎖もあるな。アクセサリーは…。よし)


「問題ないです」


「ならよかったわ。それと、所長から聞いてるかもしれないけど、今回の戦闘について注意点が一つあるわ」


「注意点?」


(そんな話、聞いてないんだけど)


「聞いてなかったのね、まあ、いいわ。注意点と言うのは、今回の戦いでは、低級以下の魔法以外は使用禁止ということよ」


「あ、そうなんですか」


「あら、あまり驚かないのね…」



俺にとってはその方が好都合だ。

低級以下の魔法ははっきり言って戦闘向きじゃない。

それこそ、生活で必要なものを賄う程度のものなのだ。

では、どうやって戦闘をするのか。



「僕はどちらかと言うと、魔力で戦うタイプですから」


「そうなの。それはよかったわ。そうじゃないと面白くないものね」



魔法を使うのに必要な魔力。

それを使って戦闘するのだ。

主にどうやるかと言うと―――

腰に巻き付けているベルト、それの右側に差している水筒を取り出す。

キャップを開けて、水筒を逆さまにする。

水が出てきたところを、氷の魔力を注ぐことで凍らせる。

こうして簡易的だが、氷で出来た剣を作ることができる。

注ぐ魔力の属性によって効果が違うのだが、氷の魔力はものを冷やす効果がある。

それにより液体を凍らせることが可能なのだ。



「やっぱり、そうやるわよね。氷系ならそうやるしか戦闘方法がないものね」



魔力で戦うことは珍しいことではない。

むしろ、魔法はランクが上がるごとに詠唱が必要だったり、集中していないといけなかったりするので、こっちの戦闘を主流にしている人も多い。

それに魔力をものに注ぐことは、もう一つメリットがある。



「私も行くわよ」



そういってリリアさんも水筒を取り出す。

そうして俺同様、氷の剣を作り向かってくる。



(速い!!)



速攻間を詰められて、リリアさんの腕が振り上げられる。

そして俺の頭目がけてくる剣をこっちも作った氷の剣で防ぐ。

ガキンと言う音が草原に鳴り響く。

魔力をものに注ぐもう一つのメリット。

それは注がれたものを固くできることだ。

いわば硬化だ。

魔力を注ぐことで、このように氷で出来た剣でも、折れることなく相手の攻撃を防ぐことが可能なのだ。

かなり固くなるので、相手の頭にでも当てたらかなりのダメージを負わせることができる。

と言っても、硬化は魔力を注いでる間だけなので、戦闘中はほぼ常に魔力を消費している。

まあ、初級魔法を使うよりは減る量が少ないのだが。



「まあ、この程度は防いでくれないとねぇ」


「さすがは、戦闘に特化してるといわれている課長なだけはありますね。でも!!」



剣をはじき、距離をとる。



「魔力戦なら、こっちの得意分野ですから、負けるわけにはいきませんね」


「あら、『こっちの』なんて、ずいぶん的外れなこと言うのね」


「え?」


「課長と課長補佐はむしろ魔力戦に特化してるのよ?」



戦闘に特化してるっていうから、魔力戦も得意なものだとは思っていたけど、まさか魔力戦を専門にしていたとは思わなかった。



「だから、残念だけど、あなたは私には勝てないわよ」


「いや、それは理由にはならないです!!」



今度はこっちから仕掛ける。

魔力戦、と言うか魔法で攻撃する戦い以外なら俺は得意だ。

正面向かっても駄目だろうし、奇襲で攻めるしかない。

でも、奇襲を成功させるにはまず、正面から行くべきだ。



(とりあえず、攻撃あるのみ)



氷の剣で連撃を繰り出す。

だが、当然防がれる。

防がれても、そのまま攻撃を続ける。



「筋はいいけど、まだ届かないわよ」


「その油断が命取りになるんですよ」



攻撃を続けている右手に対し、左手は腰の後ろ側につけていたポーチに入れる。

そこから葉っぱを取り出す。

それをリリアさんに向かって振りまく。



「ファイア!」



指先から火をだし、それを葉っぱに点ける。

俺は火をつけると同時に、後ろに下がる。

小さい葉っぱだから燃えてる時間は短いが、それでも炎が広がり視界をふさぐことは可能だ。



「くっ、前が…」


(もらった!!)



俺は腰の左側にグルグル巻きにしてある、鎖を取り出す。

そしてリリアさんの水筒に向かってそれを飛ばす。

そして、見事に水筒に巻き付いた鎖を引っ張る。



「あ!!」



引っ張られた水筒は何の抵抗も受けずに、リリアさんの手から離れる。

奇襲成功だ。

そのまま、鎖が巻き付いてある水筒を自分の近くに寄せる。



「とりあえず、武器は無くなりましたね」


(まあ、俺みたいに何個もある可能性があるけど)



でも、見たところあってもあと1個が相場だろう。



「これはやられたわ…。いつもなら、それで十分だったのに、あなたは優秀ね」



それでってことは、やっぱりまだあるのか。



「まあ、それの本領もまだ出し切れていなかったのだけど、しょうがないわね。これを使うとしましょう」



そういってリリアさんはまた一つ水筒を取り出した。



(俺の持っている水筒より大きい?)



水筒にしては大きめで、1リットルのペットボトル並みの大きさがある。



(大きいほうが、攻撃力も自然に上がるし、一撃必殺に切り替えたとか、か?)



さっき、魔力を注ぐことで固くなり、頭に当てればかなりのダメージを負わせることができると言ったが、言い方を間違えた。

むしろ、頭とかに当てないと、相手を戦闘不能にはできない。

なぜなら、固くしているとはいえ、あくまで氷なのだから。

他のものだったら別だけど、氷を思いっきり腕とかに当てたところで、痛い程度で済むのだ。

だから、氷属性が得意な奴と戦うときは急所に気を付ければいいのだ。

まあ、何回も同じところに攻撃とかすれば結構なダメージにはなるけれど。

だが問題は、あの大きさだと、果たして一回の攻撃が痛い程度で済むのかどうか。

俺も一応飲み口の大きい水筒があるが、あくまで氷の剣が太くなるだけで、重さはあまり変わるわけじゃない。

前の方に重心が行くことで少し重くはなっているが―――



「考えすぎのところ悪いけど、これは剣を作るためのものじゃないわよ」


(剣を作るためのものじゃない?じゃあ、なにを…)


「それと、正面にいると危ないわよ」



そう言ってリリアさんはキャップを付けたままの水筒をこちらに向けた。



(何をする気だ…?)


「終わりにしましょう」



何かがカチッとなる音がした。

その瞬間、俺の腹に衝撃が走る。



「ぐっ!!」



予期せぬ痛みに動揺していると、今度は頭に強い衝撃が来た。



「残念だけど、あなたは私には勝てないわよ」



頭に衝撃を受けたことで、失っていく意識の中、最後に聞いたリリアさんの言葉。



「少なくとも、安全圏があると思っている間はね」



その言葉を最後に俺は意識を失った。

ファイア…炎属性の低級魔法。指先から火が出せる。ライターの火みたいに小さい火だが、小さくても火なので扱いに気を付けるよう、学校などで教えられる。指先だったらどこからでも出せる。魔力の量にもよるが、基本的に出せるのは1個ずつまで。


いつか、魔法の一覧表みたいの作りたいと思います。一応すでに魔法全種類は考えています。詠唱だけは考えていませんが。

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