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第2話 割と大丈夫なようです

 事故の後、気づけば病室にいた。どうやって来たかは憶えていない。


 病室にはベッドに寝かされた僕の身体と妹だけが残されていた。


 妹は泣き疲れたのかベッドにうつ伏せになり眠っていた。目元が赤く腫れている。眠ったまま泣いているようで涙が次から次へと頬を伝って流れ落ちていった。


 病室の中はとても寒いらしく妹の身体が微かに震えていることに気づいた。ベッド脇の机に畳んである僕のであろう学生服の上着に手を伸ばす。


「…っ」


 触れなかった。と言うよりもすり抜けたと言ったほうが正しいか。

 

 当然だ。僕は既に死んでいる。触れあうとことは出来ないし話すことも出来ない。見てるだけしか出来ない。どうしようもない。


 妹に何もしてやれなくなった自分が情けなくて、とても悔しかった。


 呆然としていると病室の扉が開き誰かが入ってきた。見覚えがある少女だ。確か妹の友達。偶に家に遊びに来ることもあり良く知っている。


 とても気さくな子で彼女が遊びに来た時はいつもより家の中が明るく感じるほどだった。


 そんな彼女も今はとても暗い顔をしていた。妹が心配なのだろう。それとももしかしたら、僕が死んだことを悲しんでくれているのかもしれない。そういう子だ。


 彼女は妹が震えていることに気づいたようで僕の学生服を妹の肩にかけてくれた。


 妹の震えが止まり、涙ももう流れていない。落ち着いたのだろうか。先程よりは安らかな顔になる。


 そんな妹をみて僕の胸もすこし軽くなった気がした。


 ☆ ☆ ☆


 それから数日、慌しく葬儀や親戚への対応などで慌しく流れていった。まだ落ち込んではいるが妹も全て終わった頃には大分、気力を取り戻した様であった。


 妹はこれから1人で生きていかなければならない。


 だが、僕と違い、妹には友人がいる。あの気さくな子とか。


 他にも仲の良い近所の人たちだっている。左隣のオバちゃんはよく料理の御裾分けをしてくれるし、右隣の夫婦とは偶に一緒に買い物にも行ったりしていた。


 良い人たちばかりで、葬儀の間も手伝いなどをしてくれているようだった。


 皆がいれば僕がいなくても何とかやっていけるだろう。


 僕も安心して逝ける。




 なんてこともなく、まだ妹のそばにいたりする。


 死んだばかりの頃はあまり自由には動けなかったが、身体が火葬されたあたりから自由に動きまわれるようになった。やはり、身体と魂には繋がりがあるのだろうか。


 動き回れるといっても妹が心配だったため、ずっと着いて回っていたが何分やることがない。


 葬儀の間などは特に暇で参列者とともに椅子に座り呆けてみたり、坊さんの前で踊ってみたりしたが次第に飽きてしまった。


 ちなみに坊さんは一切反応しなかったのだが、それで良いのだろうか。修行してたりとかないのだろうか。お経も一切効果なし。昇天するどころか苦痛すら感じない。


 まあ、死んだからか音は一切聞こえないのだが。


 死んだら天国か地獄に連れて行かれるのではなかったのか。



 閻魔様は何処だ。



 現在、妹はアパートの部屋の掃除をしている。僕が死んでからは忙しくて散らかりっぱなしだ。学校とバイト先からは休みをもらったらしく、僕の遺品の整理もかねてゆっくりとやるようだ。


 時折、アルバムや思い出の品などを見つけては涙を流したり微笑んだりしていた。


 妹の気さくな友人も手伝ってくれている。彼女は学校をサボっているようだ。そんな感じのやり取りを妹としていた。


 彼女がいるなら大丈夫だろう。


 気になることもあったので出かけることにする。


 聞こえないのは判っていたが「…行ってきます」といつもの癖で口に出してしまう。


 部屋を出る寸前、声を掛けられたような気がして振り向くが、やはり二人は掃除を続けている。


 今度こそ、部屋を出る。

まだ異世界には行きませんでした。

あと1、2話はかかるかも。

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