□1場 とある侍者の献身
がらんとした部屋に、一つだけある窓からは、煌々とした月光が注ぎ込んでいる。灯りのつけられていない室内で、これが唯一の光源だった。
ふと、今日は満月だっただろうか? と考えたが、窓は鉄格子がされているし、ただでさえ高い位置にあるので、ここからでは判断が出来なかった。
この部屋に入って、もう随分経ったように思う。
エルキン領主の屋敷にある、普段使われていない一室。壁紙も無い、この灰色の寂しい空間の中央に一つ置かれた椅子に、シャオンは姿勢良く座っている。
初めここに入ったのは、ダレッシモの指示だった。だが、今は自らここにいる。
灯りをつけていないのは、わざとだった。戒めのつもりなのか、理由は自分にも分からないが、ただそうしたかった。ここにいるのも、そんな形のあやふやな理由の為だ。
はっきりしているのは、こんな虚無の空間にいても、考えることは一つということだ。
出入り口を背に座っていたシャオンの耳に、扉が開く小さな音が届いた。
シャオンは誰が来たのか確認しようとせず、そのまま背筋を伸ばして動かなかった。それでも訪問者は気にせず、その背中に声を掛ける。
「……アステル嬢は行ったぞ」
聞き覚えのある男の声が告げた言葉に、シャオンは静かに目を閉じる。
「そう」
そう言ったシャオンの顔は、満足げな笑みをたたえていた。




