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男姫様は魚がお嫌い  作者: 川咲弐号
■ 終幕 ■
24/25

□1場 とある侍者の献身

 がらんとした部屋に、一つだけある窓からは、煌々とした月光が注ぎ込んでいる。灯りのつけられていない室内で、これが唯一の光源だった。

 ふと、今日は満月だっただろうか? と考えたが、窓は鉄格子がされているし、ただでさえ高い位置にあるので、ここからでは判断が出来なかった。


 この部屋に入って、もう随分経ったように思う。

 エルキン領主の屋敷にある、普段使われていない一室。壁紙も無い、この灰色の寂しい空間の中央に一つ置かれた椅子に、シャオンは姿勢良く座っている。


 初めここに入ったのは、ダレッシモの指示だった。だが、今は自らここにいる。

 灯りをつけていないのは、わざとだった。戒めのつもりなのか、理由は自分にも分からないが、ただそうしたかった。ここにいるのも、そんな形のあやふやな理由の為だ。

 はっきりしているのは、こんな虚無の空間にいても、考えることは一つということだ。


 出入り口を背に座っていたシャオンの耳に、扉が開く小さな音が届いた。

 シャオンは誰が来たのか確認しようとせず、そのまま背筋を伸ばして動かなかった。それでも訪問者は気にせず、その背中に声を掛ける。


「……アステル嬢は行ったぞ」


 聞き覚えのある男の声が告げた言葉に、シャオンは静かに目を閉じる。


「そう」


 そう言ったシャオンの顔は、満足げな笑みをたたえていた。

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