□3場 沈黙の果ての夢
席に座ってから、しばらく沈黙が続いていた。
だが、それに耐えきれなくなったジョージが急に身悶えし始める。
「ああぁ!! あかんっ! なんやこの空気! 重くて暗くてドロドロや~っ!」
一頻りドッタンバッタン動いた後、ぱっと起き上がると、鼻息荒くして腕組みする。
「いつまでも沈んどっても、どうしようもないやろ!」
ジョージの言葉に、ユキトは淡い笑顔と溜め息で返すと、アステルの方を向く。
アステルは軽く俯き加減で、必要以上に姿勢を正して座っている。
「アステル。シャオンなら大丈夫」
「……ユキトに言われなくても分かってる。シャオンは強い人だって」
そう言って、一度強く頷くと、アステルはようやく顔を上げた。言葉に出すことで、元気を取り戻したようだった。
ユキトはもう一度溜め息を吐き――今度は安堵の溜め息だ――対面に座るアステルを暖かい眼差しで見て、レインコートを脱いだアステルの頭をそっと撫でる。
「夜通し走って、次の駅に着くのは明日だから。しばらく眠るといいよ」
優しく掛けられた言葉と撫でる手に誘われるように、アステルは眠気を感じてくる。そのままそれに身を任せると、簡単に眠りにつくことが出来た。
それから列車が停車するまでの間ずっと、シャオンの夢を見ることになった――――。