前作のあらすじとリュミスさんのチュートリアル
【前作『俺と糞ゲー』のあらすじ】
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ゲーマーの神様に攫われて、少年時代にやりこんだレトロ糞ゲー【ナプール】の世界を模したゲーム風異世界に召喚された東雲圭。
性格がアレな女神様にストレスを抱えながらも、人形と呼ばれる戦闘機械シルクと奴隷屋で買った獣人エルナの助けを借りながら、元の世界に戻るために奮闘する。
原作ゲームの知識を生かし、着実に大迷宮を攻略しつつ、ロリコンからケモナーへと精神的にも大きな成長を遂げる東雲圭。
そして、1年後。
ついにアルマリル大迷宮においてラスボスを討伐することに成功。現実の世界に帰還する。
しかし、ゲームをクリアーし元の世界に帰還を果たした東雲圭を待っていたのは退屈で刺激のない日常だった。無気力に日々を送る東雲圭。
帰還から半年後、そんな東雲圭に再度の召喚のお誘いがとどいたのだった。
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めまいのような感覚がする。
ゆっくりと目をあけた俺、東雲圭の視界に飛び込んでくるやたらとファンシーな部屋。
ピンクの壁紙が貼られた20畳ほどの大きな部屋のいたるところに、かわいらしい動物やなんかのぬいぐるみが並べられていた。
壁際には妙にうすっぺらい本が大量に本棚に並んでいる。
壁には女性漫画に出てくるような男が2人ほど描かれた絵が豪華な額縁で飾られているのが見える。
見えるんだけど……描かれた男2人が向かいあい、至近距離で見つめ合っているのがなんとも言えず不気味だ。
(メガネの奴、趣味が変わったのか? あいつは渋めの趣味だと思っていたんだが?)
そんなことを思いながらキョロキョロと部屋を見回す俺。なんだか凄く女の子然とした部屋なので物珍しかったのだ。
「東雲様。東雲圭様ですね?」
興味深々で部屋をみていた俺は背後からそう声をかけられた。
妙に色っぽい声だ。
あわてて声の方向に向き直る。
そこに優雅に立っていたのは、絹の糸のような綺麗な金髪をなびかせた、これぞ女神様といった感じの美しい容姿の女性。
何の繊維で作った服なのかは知らないけどキラキラと光る繊維で出来たヒラヒラとした服装だ。
年のころは30前後といったところだろうか? 西欧系の顔立ちなのではっきりとは分からないのだが。
いや、重要なのはそんなことではない!
(でか!)
思わず胸のうちで呟く。別に女性の身長が高かったわけではない。
背後に立っていた女性が素晴らしい山を2つ持っていたからだ。
スイカほどの大きさにもかかわらず、重力に負けないで悠然とそびえ立つ霊峰。
ゆったりとした服装なのにその部分だけピチピチになっている。男であるなら一度は登りたい! そう思わせる山である。
いや、俺は別に巨乳が好きというわけではないのだが……。
というか、むしろバランスのいいプリン形のほうが好みですらあるのだが、それでも、それでも、これだけのモノだとある種の感動を覚える。男としての本能だろう。
なんというか小学生の時の修学旅行でみた東大寺の大きさに圧倒された感覚を思い出すな。
「どうもはじめまして東雲様。このたびはナプールオンラインⅡにご参加いただきましてまことにありがとうございます。このたびの進行役を勤めることになりましたリュミスと申します」
そう言って優雅に頭を下げる金髪おっぱいさん。
下げた拍子にブルルンといった感じでゆれるおっぱい。すばらしいね。
というか……おおっ!
今回はメガネが進行役じゃないんだ。コレは凄く嬉しい出来事だ。
あのドSに振り回されることもないだろうし、そもそも前回、ラスボスとして出てきたメガネをメッタ刺しのひき肉に変えているので再会しにくいと思っていたのだ。
神殺しのスキル説明によると、絶対に許さないらしいしなあ。
もっとも、今回はまともにゲームをクリアーするつもりもないのだが。
もう一度エルナとシルクに会いたい。それが俺がもう一度この異世界に来た一番大きな理由なのだ。
端的に言うとエルナにあってもう一発したい。
「さて、東雲様は前回、最低最悪の性悪女を討伐し見事にゲームをクリアーされましたが、今回挑戦していただくのは、そのナプールの世界観に多少のアレンジを加えたものでございます」
「アレンジ……ですか。ナプールをどういじったんですかね?」
正直、凄く不安だ。
この女神の性格も不安なんだけど、それ以上にアレンジとやらが不安だ。
ナプールはいわずと知れた糞ゲー。商業的必然として続編なんぞというものは存在しないのだ。
ということは、あのランとか言う偉い神様オリジナルになるのだろう。
……おいおい大丈夫なのか? あのパクリマニアがオリジナルのゲームなんて作れるのだろうか?
「はい、変更点をここで説明すると長くなりますし手間ですので、こちらの方でマニュアルをご用意させていただきました」
「マニュアル? ですか」
「はい。こちらがそのマニュアルになります」
そういってヒラヒラした服の袖口から何かを取り出し、俺にぽいっと投げてよこした。
(うおぃ! 投げるんじゃない)
何とかキャッチする俺。なんだか人肌みたいなぬくもりがある。
女神様の体温だろうか? なんか得した気分だ。
そんな変態じみたことを思いながら、キャッチした手の中のものをみた俺は絶句した。
ちっちゃな羽根のある小人さんがなぜか猿轡をされたうえに手足を縛られていたからだ。
よほどきつく縛られているのか「ムームー」という小人さんのくぐもったうめき声がかすかに聞こえた。
「あの……この人? は……どうして縛られているんですか?」
「はい。それがマニュアルになりますね。一通りの知識は教え込んであるとミューが申しておりましたので御安心ください。ただ、少しうるさかったものですからお仕置きをしておりました。ミューの眷属ですので品がないのは彼女に似ているんですねきっと」
ウフフと上品に笑いながら説明するリュミスさん。
今の話のどこに安心できる要素があるというのだろうか?
この女神も大概いい性格をしているらしいな。女神というのは性格が悪くないとなれないとかそんな決まりがあるのだろうか?
(ふむ)
興味がわいたので鑑定を試みる俺。
おそらくこいつもメガネ同様、邪神かなんかの類だろうと思ったのだ。
だが、鑑定と心のうちで念じた瞬間、信じられないような痛みが両目に走った。
倒れこみ、両目を押さえて転げまわる俺。手にぬるっとした感触があるから両目から血が流れているらしい。
「あらあらいけない人ですね。こっそりと女性を鑑定しようとするなんて死んでも知りませんよ?」
声すら上げられないほどの激痛にのた打ち回る俺に、のんびりとした口調でそんな声をかける金髪おっぱい。
文句の一つも言いたいのだが、痛みのあまりゴロゴロと床を転げまわる。
「それでは東雲様。今回もラン様が大変期待しておりますので頑張ってくださいましね」
(おいちょっと待て!)
まさかこのままの状態で転移させるつもりなのか?
……こいつメガネよりもひどいんじゃないだろうか?
そんなことを思いながら、俺の意識は暗転したのだった。