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4-7 完敗

次回の投稿は再来週になります。

 グレイズと対峙していたメツは一足飛びに距離をとった。

 上空から飛来してきた何かをとっさに回避し、次いで目を凝らして確認しようとする。落下の衝撃で土煙が舞い、中々、判別が効かない。照準は効かないが、銃を構え、射撃。この状況で介入してくるものが味方だとは思えない。甲高い金属音で着弾と弾かれたことを確認。相手の獲物は金属製だ。

(そしてこの大口径『アローヘッド』の銃撃に耐えうる代物)

 ほんの先ほど、グレイズが来る直前に名づけた自分の愛銃の感触を確かめる。

続けざまに銃撃を放とうとすると、土煙から鞭のように何かが伸びてきた。事前に用心していた為、後ろに交わす。まるで殺意の感じられない攻撃はうっとうしいものを振り払うようでもあった。そして、その動作で土煙が晴れる。

 姿を現したのは鎖を手にしたロウアーだった。傍らにはクゥが突っ伏している。そして、アイが拘束されていた。アイも気を失っている。

「グレイズ様。契約は果たしました」

 ロウアーの言葉に後ろでグレイズがニコニコしながら頷く。

「ロウアー。やっぱり強いじゃない」

 この親子は本当に戦闘狂だ。

 グレイズにいたっては普段冷めた表情をしているので、戦闘中とのギャップが強く、なおさらその印象が強い。

 銃撃が再度、ロウアーを襲うが、鎖が舞い、弾丸を叩き落した。

「アイを返せ」

 銃撃の主が冷静にそう告げる。

 面白い男だ。

 素直にロウアーはそう思った。

 自分たちが話している間に手早くリロードを終えている。抜け目がない。あれが自分のファクターで身を削った成れの果てだとすれば、彼は決して幸せに離れない。それなのに未だに幸せになれると信じて戦っている。

『こっけい』だ。

 口元が嘲笑を作った。

「駄目だ」

「目的は!?」

 そう叫んだサキの顔が青い。もはやファクターの使いすぎだ。少し前なら何の問題もなかったのだが、彼女に関してはファクターの劣化が激しい。それでも声を張ったのはメツが今にも戦闘を開始しようとしているからだろう。この男は人間らしさというものが希薄になっている気がする。コウとは違った意味で何をしでかすかわからない。

「彼女を捕らえることが、誰も殺さずに、この場を退くという取引だからだ。バーンズ様の指示でね。僕も何故、彼女を捕らえるのかわからないけど、僕も今、君らに消えてもらうと困るんだよ」

 メツがタイミングをうかがっているのが良くわかるため、機先を奪う。

「やめておいたほうがいい。暁コウは今頃、負けている」

「何故、わかる」

「わかるだろ?相手は七月席だよ?ここで攻撃を続行するというのなら、僕も人質をとらなくてはいけないな」

 鎖で縛られたアイを引き寄せ、ポケットから取り出したナイフを首元に沿わせる。

「こういう時、『俺たちを逃がせ。じゃなきゃあ、こいつを殺す』、と言ったほうがいいのかな?わかりやすいかませ犬のように、ね」

 メツの表情は変わらないが、葛藤は見て取れる。正直なところ、さっさと離脱してしまえばいい。二月席の限界が近い今、こちらを追跡する手段はない。

 メツを挑発しているのはただの嫌がらせだ。

 どうやってもお前たちは自分たちに勝てないということを印象つけるためだけだ。

「どうした?二月席様はすでに限界だぞ。思考する時間はないぜ」

 メツは振り向かない。サキがすでに限界であることぐらい知っている。

 振り向けば隙が生じる。

 ロウアーはメツの命などあってもなくてもどちらでもいいと思っている。

 でなければあんな毒々しい悪意を隠そうともせずに現れるわけがない。

 隙を見せれば殺される。

 サキは限界に近い。

 アイが人質になっている。

 そして戦力差がありすぎる。

 すでに勝負は決している。

 どうやったかはわからないが、ロウアーはクゥを負かしたのだ。

 メツは銃を手放した。

 それでも攻撃に対しての構えは解いていない。

「そうだ。それでいい」

 ロウアーが満足したように頷く。

 そのとき、川の方角から、一筋の炎が天に上がっていくのが見えた。

「ロウアー。お父さんが帰ってこいってさ」

 グレイズはそう言うと、父と同じように炎をまとい、爆発的な加速と共に天へと上っていった。さながらロケットのようだ。

「では僕も帰るよ。この臆病者は置いていってやる。まだ生きているし、起きたら凹んでいるだろうから適当にフォローしてやってくれ。ああ、それと……高坂メツとかいったな」

 ロウアーが自分の名前を知っていることに少しばかり驚く。

「お前は所詮、二番目だ。この戦いにそんな誰も彼も不幸にするようなファクターを身につけて介入するもんじゃあない。お前はただのコウの付属品だ。そういう風に立ち振る舞ったほうがいい。はっきりと目障りなんだよ」

 言いたいことを言い終わると、ロウアーは短く言葉をつむぎ、アイをつれたままグレイズの後を追った。

 メツは無言で空を見上げた。歯を思いっきり食いしばっているせいで、異音が当たりに響く。拳を強く握り締めている為、出血が起こっている。

 神と天使が去った後に、サキのファクターが解除される気配。それと同時にサキの体から力が抜けた。

 地面に倒れる寸前で、メツは彼女の身体を抱きしめる。

 完全に気を失っていた。

 完全に弄ばれた。

 力の差を見せ付けられた。

 完敗だった。


それではまた再来週に!

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