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2-3 彼女と二人の価値観の違い

うう、小説かく時間がものすごい勢いで奪われている…

 アイはテンションが上がっていた。

 メツはテンションが下がっていた。

 コウは呆れていた。

「まじでやったのかよ……」

 三人の眼前には格子状に詰まれた木々。

 それが派手に燃えていた。

 キャンプファイヤーだ。

 文化祭直前まで、実行できるかどうか生徒会の面々と教師人が対立していたのだ。新たな試みを掲げる生徒会の面々と安全を重視する教師陣との対決は苛烈なものだったらしい。

 コウは出来ないと思っていたし、渡されたパンフレットにもキャンプファイヤーと書かれた文字の下に(未定)と書かれていた。

「すっご~い!燃えているよ!」

「そりゃあ、燃えるだろ。で、なんでメツはあんなに元気ないんだ?」

 コウが少し離れたところで地面にうずくまって何かぶつぶつ言っているメツを顎で示す。

「サキさん帰っちゃったからねぇ。一緒に踊りたかったんじゃない?」

「ああ、そういうこと」

 コウは再度呆れた。

 バカップルもいいところだ。

 あたりをぐるりと見渡すと音楽に合わせて数組の男女が踊っていた。

 こうしてみると結構、数が多い。

「こんなご時勢だからね」

 コウの考えを察したのかアイが疑問に答えてくれた。

「みんな、好きな人と居たいの。特に生徒会の人たちはそんな人たちに少しでも良い思い出になってくれるようにって頑張ってくれたんだよ」

「そうか」

 みんな仲が良くていいことだ。

 生徒会の連中のほとんどは恋人持ちと聞いたこともあるから、そりゃあ頑張るだろう。

「コウが守ったんだよ」

「なんつーか……実感ないな」

 言われた言葉はうれしいものであるはずなのに、コウはピンとこなかった。

 自分はそういったもののために戦っているわけではないのだ。

 あくまで自分の為に戦っただけ。

 それが結果的にこうなっただけだ。

「そっか」

 コウの言葉にアイはそうとだけ返した。

 コウはきっとそう言うと思ったからだ。

 彼は絶対に自分の為以外に命を賭けない。

 下手に感謝されても重荷に感じるだけだろう。

 それでも言ってあげたかった。

 この不器用な彼は、自分のためにといって近しい人間のために命を投げ出してしまう。

 そんな彼がいつか振り返ったとき、胸が温かくなるようなそんな言葉をかけてあげたかったのだ。

(それにしても……)

 確かに随分とカップルが多くなった気がする。

 クラスメートも知らないうちに付き合っていた人が何人かいる。

 恐らく今、踊っている組の全てがカップルというわけではないだろう。

 それでも、ここで踊っている人たちは少なからず気持ちが通じ合っているのだ。

(私は……)

 コウは相変わらずぼうっと火を見つめていた。

 本気で何も考えていないときの顔だ。

 こういったときのコウはお願い事を聞いてくれやすい。

 ……いけるか?

「そ、それはそうと……」

「あん?」

「みんな踊っているね!」

「ああ、そうだな」

「だ、だからね」

 言え!

 言ってしまえ。私!

 私と一緒に踊って、と!

「私と一緒に」

「おい!」

 呼び声がした方に顔を向けると旧友の岡崎、柴田、木村がいた。

 無駄に自信満々な顔をコウに向けている。

「君達は」

「誰かと」

「踊るのか?」

 気持ち悪いぐらいに息がぴったりだ。

「いや、そんな相手いねぇよ」

 苦笑して答えると、三人は満面の笑みを浮かべた。

「「「ならば我等は同士だ!」」」

 そういって三人はコウ達を取り囲む。

「え、あ、ちょ」

 アイがあたふたしていたが、三人はメツも引き起こして誘導を開始した。

「こっちでバーベキューやってんだよ」

「相方がいない連中でね」

「吹き溜まりともいう」

「そいつはいいな」

 コウは乗り気だった。

「肉を焼くのは俺に任せとけ!」

「「「おおおおおおおおお!」」」

 コウの言葉に三人のテンションが上がる。

「お前の料理を食うのは久しぶりだな!」

「期待しているぜ!」

「全部喰ってやるよ!」

 馬鹿騒ぎをしながら歩いていく四人の少し後ろでアイは拳を握り締めていた。

「BBQなんざ誰が焼いても同じでしょうが…………あ、い、つ、ら」

「抑えて!抑えて!アイ!」

 メツが慌てて復活し、アイを宥める。

「どうどう!怒ったっていいことないよ!」

 鼻を鳴らして拳をおろす。

「そうね。コウが楽しんでいるからよしとするわ」

「本人にいえばいいのに……」

 アイが拳を上げるとメツは「なんでもないです!」といって距離をとった。

「けど、アイはそれでいいの?」

「それでいいのかって……」

 コウは恋人がいる。なんでもこなす天才の姉が横にいる。

 2人は固い絆で結ばれていて、入り込む余地はない。

 大体、コウは連日、戦い続けている身だ。

「きっと迷惑だよ」

「そんなことない」

 メツは真っ直ぐにアイを見つめる。

「君の告白を迷惑だなんてコウは絶対に思わないよ」

「姉さんが……いるし……」

 あの姉に立ち向かう自分はまるで想像つかない。

「じゃあ、君の気持ちはどこに行くの?」

 どこに行くのだろうか?

 まるでわからない。

「1人で押さえ込んで、溜め込んで、時が解決してくれるものだと思う?」

「どこかで……諦めるわよ」

「無理だ」

 まるで現実性のないアイの言葉を切って捨てた。

 彼女は幼少の頃からコウが好きだったのだ。

 それをずっと胸の奥にしまい続けて生きてきた彼女がこの先諦めるには、青春の全てを犠牲にしているだろうと感じていた。

「やけに食って掛かるわね」

 ジロリとメツを睨む。

 まるで動じていない。

「コウは何時死ぬかわからないからね。もちろん、僕も」

「…………っ!?」

「死ぬのは嫌だけど……今まで生きてこられたのは運が良い方だったんだよ。きっと、コウもそう考えてる」

「そんなの!」

 言葉は続かなかった。

 実際、コウが身をおく戦場はアイが想像もできない世界なのだ。

「死んでしまえば……話すこともできなくなるよ。ひょっとしたらそんな瞬間は来ないかもしれない。けど、明日かもしれない。いや、ひょっとするとこの瞬間かも」

「………………」

「そうなれば地獄だ。君の気持ちはどこにもいけなくなる」

 メツの言葉は現実的過ぎた。

 世界が変わる前はそんなことフィクションの世界だと思っていた。

 私たちの誰かが突然いなくなるわけがない。

 そんなことを何の根拠もなく考えていた。

 返せる言葉などない。

「ごめんね。急にこんなこと言って」

 うつむいてしまったアイにメツは謝罪の言葉を投げる。

「メツは……どうして戦うの?サキさん。悲しむよ?」

「それでも、僕は彼女のいる世界を、僕の手で守りたいんだ」

 迷いなく言い切るメツはアイにとって遠い存在だった。

 憧れといっても良い感情が芽生えていた。

「メツと話せてよかった」

 アイの言葉に笑顔でメツは答える。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 2人は4人の後を追った。

 後はこの日常を楽しもう。

 明日、何かが起こっても少しでも心残りがないように。


ここまでが書いていてしんどかったところ。

みんなまだ迷っているから書きづらかったです。

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