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2-1

 その後Kは高校ボクシング最後の大会となる三年時のインターハイ県予選の決勝で敗れ、そこで私とKは部を引退した。


 Kは勉強の成績も良く、地方の国立大学の推薦入試を受けて現役合格した。その大学は国立大学としては珍しくボクシング部があるので選んだそうだ。当時そのボクシング部は(確か)大学リーグの六部に所属していたのだが、「俺が三部くらいに昇格させてやりますよ」Kはそう自信ありげに言って大学のある地方都市へ旅立っていった。


 私の方は部活は真面目に取り組んでいたが勉強はからっきしで、大学受験に全落ちして浪人生になった。


 浪人した際、私は「勉強に集中しよう」とそれなりに思うところがあって、携帯電話を解約した。そしてプリペイド携帯を買い、家族とKの連絡先だけをそのプリペイド携帯に移して、他の友人知人との連絡を一切断った。


 大宮の予備校の早慶上智クラスに通うようになった。Kに時々電話をして、「浪人した以上は早慶に受かるから」とうそぶいた。


 一学期は真面目に予備校に通い、成績もまずまず良かったが、夏休みが過ぎて二学期に入ると気持ちがダレてきてあまり予備校に通わなくなった。一学期には65程度あった偏差値もずるずる下降線をたどり、十二月に実施された最後の模試の偏差値は50ちょうどまでに落ちた。


「このD判定とかE判定の学校は、とても無理だから受けるんじゃないぞ」


 最後の模試の結果を見た父が、そう私に説教した。第一志望の早稲田大学が父の言ったE判定で、すべり止めと考えていたMARCHがせいぜいD判定だった。


(なに言ってるんだ、今から勉強して早稲田に受かってやる)


 勉強だけは自分はできるのだとなぜか思い込んでいた私は、そう思って父の言うことを無視した。そうして予備校には行かず、のんきに実家でテレビゲームをしていた。それが一月の初めのことだった。


 テレビゲームをしているところへKからプリペイド携帯に電話があったのは、一月七日のことで、私は今でもこの日付を忘れない。


「久しぶり。今何してるんだ?」


 Kは聞いてきた。私は、FFタクティクス、と悪びれず答えた。Kは私がなんと言ったのか理解できず、再度聞いた。


「FF。ファイナルファンタジータクティクス」


 私がそう言うと、Kは電話口で激怒した。


「ゲームしてるのか!? 君、何やってるんだよ! 早慶に受かるんじゃなかったのか!」


 Kはひとしきり私を罵倒し、それから、


「もう受験終わるまで連絡しないからな。ゲームなんかしないでちゃんと勉強しろよ」


と言って電話を切った。


 通話の途絶えたプリペイド携帯と、ゲーム画面を映し出しているブラウン管テレビを交互に見て、私は体が熱くなるのを感じた。父には心の中で反発したものの、正直早慶など、もう受かるかどうかは自分でも半信半疑だった。しかしKは、今でもまだ私が早慶を目指しているのだと信じてくれているらしかった。


 この、私を信じてくれている友人に、応えたくなった。もう受かるかどうかは別として、せめて今からでもベストを尽くして勉強しなければ、Kに悪いと思った。私はクリア寸前だったファイナルファンタジータクティクスのセーブデータをその場で消した。

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