021 ここから後ろはない
「伏せろ!」
俺は叫んだ。
次の瞬間――
ドンッ!!
爆音。
中央のトゲ罠が、文字通り吹き飛んだ。
木材は四散し、破片が宙を舞う。
落ちた先々で、炎が上がった。
「なんちゅう威力じゃ……!」
ドンの声が、煙越しに響く。
「タマ、大丈夫か!?」
「……う、うんにゃ……!」
猫夫婦の声が続く。
幸い、致命傷はない。
だが、精神的な揺さぶりは大きかった。
さらに――
森の奥から、もう一体。
火爆実を掲げたゴブリンが、走ってくる。
「……くそ」
俺は、息を吸い込み、叫んだ。
「撤退!」
「第二防衛線まで下がれ!!」
「おう!!」
ドンが即座に応じる。
エルフ夫妻も、口元を手で覆い、
煙を避けるように高台から降りてくる。
その間に。
俺は、地面の石を掴んでいた。
火爆実を持ったゴブリンが、こちらへ向かってくる。
距離は、もう遠くない。
「どりゃあ!!」
渾身の力で、石を投げる。
野球経験なんて、ない。
ただ、小学生の頃、町内会でソフトボールをやった――
それだけだ。
石は、ゴブリンの顔面に直撃した。
倒れはしない。
だが、火爆実を取り落とす。
落ちた火爆実は、横道へ転がり――
ドンッ!
爆発。
破片の一部が、弓矢の高台を直撃する。
木材がはぜ、炎が立ち上った。
「……っ」
俺の視界に、【鑑定】が割り込む。
新しい進軍ルート。
森の奥から、
中央へ――真っ直ぐに伸びる一本の線。
「……また、中央突破だ」
俺は叫ぶ。
「中央に来る!」
「備え撃て!!」
俺たちは後退した。
前回の最前線。
今回では――第二防衛線。
腰ほどの高さの塀。
その背後には、新しく作った、かまど。
そして、住居。
ここから後ろは――ない。
その時。
大型ゴブリンが動き出した。
全身を硬い革鎧で固めた、大型ゴブリン。
大盾を構え、
ドスン、ドスンと地面を踏み鳴らして走ってくる。
その数、二体。
さらにその横には、
杖を持ったゴブリン。
旗を掲げた、兵隊ゴブリン。
「……来たな」
ここが、最後だ。
冷たい風が、吹き抜ける。
夜明け前。
一番、寒い時間帯。
そして――
再び、ゴブリンが来る。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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たのんます。




