019 静かな朝に、鐘は鳴る
朝の空気は、まだひんやりしていた。
焚き火のそばに、皆が集まっている。
簡単な朝食だが、湯気の立つ鍋があるだけで、ずいぶん違う。
魚の身をほぐし、昨日の残りの薬草を放り込んだスープ。
皆、黙々と口に運ぶ。
ここ――新天地に来て、そろそろ一ヶ月が経とうとしていた。
季節は、ゆっくりと初夏へ向かっている。
そんな中、ドワーフのドンが、ごそごそと荷物を探り始めた。
「おい、ハルキ」
呼ばれて顔を上げると、ドンはずっしりとした塊を差し出してきた。
「できたぞ」
受け取った瞬間、重みで腕が沈む。
革鎧だった。
腹、胸、背中――
胴体を覆う部分は、プラスチックの板のように硬い革で固められている。
指で叩くと、鈍い音が返ってきた。
内側を覗いて、思わず息を呑む。
「……兎の毛皮?」
「その下にゃ、藁と樹皮も詰めとる」
ドンは、そっけなく言った。
「衝撃も冷えも、まとめて受け止める」
なるほど、と納得する。
「作ったのは……」
「ピリカじゃ」
短い答えだったが、どこか誇らしげだった。
続いてドンは、もう一つ、細長い包みを取り出す。
「ニケ。お前の分じゃ」
ニケが目を瞬かせる。
包みを開くと、そこには長袖の革鎧があった。
柔らかい鹿革を基調に、肩から腕にかけて、硬く加工した革片がウロコ状に縫い付けられている。
手首には、しっかりとした革の籠手。
内側には、同じく兎の毛皮。
ニケは腕を通し、軽く身体を動かしてみせた。
音が、しない。
「……いいですね」
低く、素直な声だった。
「動きやすいし、擦れる音もない」
「狙って作っとる」
ドンは、ちらりとだけニケを見た。
「お前は、そういう役回りじゃろ」
ニケは、ほんの少しだけ口元を緩めた。
ミーラさんが、感心したように言う。
「すごいね……ちゃんと、その人に合ってる」
ピリカさんは、少し離れた場所で、鍋を見ながら黙っている。
こちらを見もしない。
けれど、その背中は、どこか誇らしげに見えた。
穏やかな朝だった。
家は五軒が形になり、
今はベッドなど、内装の作業に取り組んでいる。
このまま、少しずつ進んでいけば――
そう思った、その時だった。
頭の奥で、甲高い音が鳴り響く。
《アラート発生》
一瞬で、血の気が引いた。
《ウェーブ発生まで 20時間》
スープの湯気が、視界の端で揺れている。
だが、もう、さっきまでの朝ではない。
俺の表情を見て、皆が気づいた。
「……来るのか」
笑い声は消え、
焚き火の音だけが、やけに大きく聞こえた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この開拓団、
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たのんます。




