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「交流戦」先鋒戦

交流戦は決勝の試合を迎えた。

明和のメンバー順は1回戦と同じだった。

先鋒・・・蒼汰

次鋒・・・丹羽

中堅・・・柴田

副将・・・長田

大将・・・水島


東西大付属のメンバー順は以下の通り

先鋒・・・東野

次鋒・・・西岡

中堅・・・南野

副将・・・北村

大将・・・東


入場前のタイミングは両校の選手が一列に並んで入場するため、否が応でも顔を合わせることになる。


「長田さーん。今年は生きの良い1年生入ったんだねぇ」

東西大付属のキャプテン東は、長田に向かってにこやかに言った。


「てめぇ、ちょっと舐めすぎじゃねーのか?」

明和キャプテンの長田は、東を睨みつけながら言った。


「ええ?何のこと?なんでそんなに怒ってんの?」

東は半笑いで長田に向かって耳を傾けた。


「てめぇ等のメンバー表。名字に東西南北の文字入ってるやつで構成しやがったな。舐めすぎだろ!てめぇ!」

長田はひょろりと背の高い東を下から睨みつけた。


「まぁまぁ、そんなに目くじら立てなくてもいいじゃないですかぁ。それにちょっと面白いでしょ?オーダー表に東西南北って!?ねぇ!」

東はさも可笑しそうに笑った。


「大して面白くないだろ!大体東が2つあるじゃねーか!」

「それはたまたまですぅ!」

東はそう言うと煽るように両手を広げて長田に言った。


「だいたい、明和さんってそもそも5人しかいないんでしょ?どうやって勝つ気なの?決勝だからってあんまり調子に乗らないでくれる?うちらとの差はとてつもないことくらい知っているでしょう」

東は長田に迫るように言った。長田もなにか言い返して不穏な空気が流れている。


「おいハゲ!もう黙れよ!みせてやっから!」

東一郎は長田と言い合ってる、東に向かっていった。

挿絵(By みてみん)

「は!?何だ白帯?お前が先ず黙れ!」

東は東一郎に向かって怒鳴り返した。


「うるせーぞ!見苦しいぞ!ハゲ!」

「このクソガキ、お前泣かしたろうか?」

「あん?誰が誰を泣かすって?おいハゲ!てめぇその言葉しっかり覚えとけよ!」

「は?笑えるな。そもそもお前は俺の前に立つことすら無いわな」

「は!?お前誰だよ?そもそも?有名なの?」

「ガキが!よく覚えとけ!全国大会にも出場している東西大付属の東だ!」

「は?東西の東?てめぇギャグかそれ?どのへんが面白いんだよ?」

「黙れよガキが!お前最初に泣いても許してやらねーからな!」

「そもそも全員ハゲだから、誰とかよくわかんねーな」

「東のハゲ!お前真っ先にぶっ潰してやろうか?」

「礼儀のなってねぇガキだな!」

「おもしれぇ顔しやがって、笑っちゃって試合できるかわかんねーから、礼儀とか関係ないだろ」

「てめぇ、マジころすぞ?」

「お前のつまんねーギャグとおもしれー顔で言われても笑えるのお前の顔の方だから!」


「おい!長田くん!俺ら勝ったらてめぇら分かってんだろうな!」

東は怒り心頭で、低い声で長田に対して睨みを効かせた。


「当たり前だ!今年は俺らだ!」

長田は口ではそう答えたものの、心のなかで不安であった。

試合前から両校の口喧嘩はもはや伝統のようなものであったが、思いの外低レベルかつ長かったことで今年の雰囲気は非常に悪いものになっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「選手整列!」

審判が号令をかけると試合コートには、5人ずつ並んだ。


「正面に礼!お互いに礼!」

両校礼をした上で改めて整列したが、互いに睨み合う状況だった。


第1試合が始まった。

先鋒は蒼汰が務めるが、東西大付属の選手は皆、全国大会の経験のあるいわゆるスポーツエリートだった。


第1試合が始まると、そのポテンシャルは非常に高いことがよく分かった。

明和の中では蒼汰は格闘センスも優れ、身体能力的にもかなり高いのであったが、空手自体の経験と戦略面でやはり遅れを取っていた。

蒼汰は東野よりも少し背が高い以外は二人共にほぼ同じような体格だった。

ジリジリとにじり寄る蒼汰に対し、東野は軽くステップして機会を伺っているようだった。


蒼汰は少し様子を伺う素振りを見せた次の瞬間、素早い刻み突きを打ち込んだ。

ほぼ完璧に見えるタイミングであったが、東野はそれをあっさりと避けると、カウンターの突きを蒼汰に打ち込んだ。


「やめ!青、上段突き有効!」

蒼汰のスピードをあっさりと見切って来る東野のレベルの高さが伺える瞬間であった。


「こりゃ勝ったな…」

東は隣に座る北村に笑いながらそう言うと、腕組みをして余裕の観戦を決め込んだ。


前の試合の疲労が全く無いとは言えないが、時間も結構立って回復しているはずだったが、蒼汰の攻撃はなかなか通じず、相手の攻撃は的確に蒼汰を捉えた。


その為、開始直後からポイントを奪われる苦しい展開のままに試合終了を迎えた。


「は!一年生にしてはよくやったほうじゃない?ははは」

東は長田に向かって余裕の笑みを浮かべて叫んだ。


蒼汰で、1勝、あわよくば2勝を狙っていた明和側の焦りは明確に分かった。

蒼汰が全くいいところなく敗れたことで、明和側に多少残っていた期待はあっさりと消えてしまったと言っていい。

キャプテンの長田の顔色が一気に変わった。


「よしみんな!切り替えていこう!」

長田は残るメンバーに声をかけたが、メンバーも今の試合を見る限りなかなか勝てないことを悟って雰囲気はあまり良くなかった。


そんな中東一郎だけは、最初から態度も雰囲気も変わらずに淡々と試合を見ていた。

試合はその後も流れが変わらず、副将であるキャプテンの長田の前まで東西大付属の先鋒東野の前に、3人あっという間に抜かれてしまったのだった。

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