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「勧誘」スピード

「へー、ちゃんと来たんだ」

 学生服を来た生徒が東一郎を見て笑った。


 柔道場に入ると5名の学生服の生徒がおり、

「なかなかデカいね」

「へぇ、これが期待の1年生?」

「なかなかやりそうじゃん」

 口々に東一郎を見てから感想を言った。


 柔道場には昨日同様に人はいるが、誰も道着を着ているものはなかった。

 道場の傍らには蒼汰が倒れ込んで荒い息をしていた。

 顔には殴られたようで口が切れており、目の上には切り傷があり左の頬は腫れ上がっていた。


「おい、お前、大丈夫か?」

 東一郎はそう言うと、蒼汰の前に行き座り込んだ。

挿絵(By みてみん)

「おいおい、俺らを無視か?」

「お前、いい度胸してるな?ははは」

「てか、お前関係ないぞ」


 学生服の集団は口々に東一郎に言ったが、口元が緩んでいるように見える。


「水島君、これは僕たちの問題だ…僕は大丈夫だから帰ってくれ!」

 蒼汰は息も絶え絶えに東一郎にそう言った。

 東一郎は蒼汰の肩に手を置くと、すっと立ち上がり学生服の集団を睨みう付けた。


「おい、俺が大嫌いなものは、年齢が上ってだけで何の能力もないやつが調子くれてることだよ!」

 東一郎はそういうと、学生服の集団の前に立ちはだかった。


「何か彼やる気なんだけど…」

「うわー、まじかよ。この人数相手に?」

「まぁ、軽くやるか?」

 学生服の男たちは言った。そう言い終わる前にブレザーのジャケットを脱ぐと、5人はYシャツ姿になった。


「お前ら全員掛かってきても良いんだぜ」

 東一郎はそう言うと東一郎もジャケットを脱いだ。

挿絵(By みてみん)

「で、何なの?空手部じゃないんだろ。関係ない奴があんまり調子に乗るなよ」

 学生服の背の高い男が言った。


「理由?理由なんざどうでも良い。俺が気に食わねーからだ」

「おい!ここは一応空手部だ。組手ってことで良いな!」

「ああ、良いぜ。上等だ!」

 東一郎は、そう言うと構えを深く取った。


「俺らは3年だからよ。顔面はなしな!」

 背の高い男が言った。


「はぁ!?バカじゃねーの?随分ふざけたルールだな。まぁ、それでも余裕でお前らぶちのめしてやるよ!」

 東一郎は、冷静さを失いつつあった。やけに軽いノリの3年。1,2年に暴行しておいて、お遊びのような空気感が許せなかった。


「5人まとめて相手だ!」

 そう言うと東一郎はものすごい速さで一人目の生徒の前に躍り出た。

 パッと相手の懐に潜り込むとドンと素手で相手のみぞおちを突いた。

 一人目の生徒は、ウッとうなりながら膝をついた。

 そのままくるりと回転しながら二人目の生徒に左の足でフルスイングした中段を蹴り込んだ。

 まるで浮き上がるかのように生徒の身体は持ち上がり、そのまま崩れ落ちた。


 東一郎は左足をそのまま置き右にいた生徒のお腹に膝を突き立てた。

 3人目の生徒が倒れそうなタイミングで反対方向に回転した足で、左足の前蹴りを4人目に突き刺し、4人目の生徒は3人目の生徒より先に両膝をついた。

 5人目の生徒の前につかつかと歩くと、5人目の生徒は狼狽えながら後ずさった。

 後ずさった生徒に対し、すっと足を横に滑らせるとその生徒はまるで大縄跳びの縄に引っかかったように転んだ。

 一人に対し1回の攻撃、まさに一撃必殺の攻撃だった。


 時間にして10秒も経たないあっという間の出来事だった。


「うう…おまえ…何なんだ…」

「…うぅ…」

 倒れた5人の三年生はうめき声を上げた。


「おい!!お前なんだろ!ボスは」

 東一郎は転がっている5人には目を向けず、奥に座っていたジャージ・パーカー姿の生徒に目を向けた。

 その生徒はそのまますっと立ち上がると、つかつかと東一郎の前にやってきた。

 ブカブカのジャージに、パーカーのフードを深くかぶり、相手の様子はよくわからない。よく言うストリート系の格好をしていた。

 但し東一郎が相手のただならぬ気配を感じていた。

 相手の身長は恐らく165cmくらい。体重は来ている服がダボダボでよく分からかない。


「は、高みの見物っての?この場合。随分余裕じゃねーか!チビ」

 東一郎は敢えて挑発するような態度で言った。


「や、やめろ…やめてくれ…これは僕達の…」

 蒼汰は青白い顔をしながら腹部を抑えながら必死の声を上げた。


「別に敵討ちじゃねーよ。俺はコイツラのやり方が気に入らねーだ…」

 東一郎が言い終わる前に、パーカーがふっと揺れたかたと思うと、一瞬で間を詰めてきた。

 そして詰まった間合いから、2,3発のパンチを東一郎に浴びせた。


「っち!コイツはええ!」

 東一郎は一旦後方にステップして距離を取りガードを固めた。

 パーカーは足を着くやいなや今度は音もなく東一郎に向かってジャンプした。

 身構える東一郎に対し、真っ直ぐと直線的な蹴りが下から上へ飛んできた。

 東一郎は20センチほど小さくバックステップして避けたが、パーカーの攻撃はまるで避けられるのを見越したような、カカト落としを打ってきた。

 東一郎はカカトを落としきる前に何とか上段受けで避けたのだが、それもどうやら餌だったようだ。


 パーカーの生徒は受けられる瞬間にバック転するかのように後ろに舞い上がり、次の瞬間には東一郎の目の前ギリギリを今まで地面にあったはずの左足が物凄いスピードで通過していった。

 流石の東一郎もそのスピードに付いていくのがやっとと言うほどの高速の連撃だった。

 身体能力の高さと柔軟性は目を見張る物があった。


「てめぇ…」

 東一郎が神崎東一郎として、何故最強と言われたのか、それは彼の天才的な防御技術の高さにあったのだが、その防御スキルを持ってしてもギリギリだった。

 東一郎は冷や汗をかいた気分であった。

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