「初恋」トラブル
「面白かったねー!ねぇねぇどうだった!?」
あかりは興奮気味にヤマトに問いかけた。
「うん!面白かった!主人公と再開する辺り凄い盛り上がるよね」
ヤマトは二度目が二度目のほうがより物語を理解したせいか面白く感じた。
「うん。映像が綺麗だったから思わず見入っちゃった」
「有名な監督だからすごい話題になってるんだよ。知ってた?」
「うん。知ってるよ。今年の映画賞総なめにしそうな勢いらしいね」
「凄い楽しかった!今まで見る機会が無かったから今日は良かったよ」
「ううん。全然!俺も良かったよ」
そういいながら二人はゆっくりと街を歩き出した。
商業地帯だが、少し離れると静かな公園や広い広場が広がる地域もある。
二人は何となくそちらへ歩いていくことになった。
「でも、あの主人公さ、どうして最初断ったんだろうね?」
あかりはヤマトに話しかけた。
「ああ、あれね。俺もはじめわからなかったんだけど、今度は理解したよ。恐らく主人公は無意識の内に拾った鍵をしまって…」
ヤマトはそこまで言うと、あかりが少し驚いた顔をしたことに気がついた。
「ん?どうかした?」
ヤマトはあかりに尋ねた。
「あ、ううん。何でも無いよ…」
あかりは少しだけ間をおいてヤマトに言った。
ヤマトは少ししまったという思いをしながら言った。映画が2回目だということをあかりに伝えていなかったからだ。ひょっとしたら気づかれたか?と思ったが、あかりの様子に変わりはなかった。
公園近くの道を抜ける所に小さな広場があった。
二人はそこに差し掛かると急に声を掛けられた。
「オー!今どきの中学生はマセてんなー」
明らかに暇を持て余した少年3人がヤマトとあかりに声をかけた。
「え?デート?中学生なのにデート?羨ましいなぁ」
そういいながら、一人の男がヤマトとあかりの前に歩み出てきた。
「行こう!」
ヤマトはあかりに声をかけ、目を合わさないように少し速歩きで通り抜けようとした。
「ほら!チビ!ブス!」
そう言って一人の男が、ヤマトとあかりに持っていた空き缶を放り投げた。
空き缶はあかりの背中に当たった。
「お!ビンゴー!」
空き缶を放り投げた男は叫び声を上げた。
「あーあー、可哀想!」
横に居た男はニヤニヤ笑いながら言った。
「てめぇ!何してんだ!」
ヤマトは怒りに満ちた目で空き缶を放り投げた男のもとに向かおうとした。
「ちょっと!いいよ!大丈夫だよ!」
あかりは必死にヤマトを止めようとした。
「あ?何だこのガキやるってのかよ?」
笑いながら立ちはだかった男はヤマトを押した。
ヤマトはその場に尻餅をついた。
「てめぇ!」
ヤマトは男に掴みかかろうとしたが、男はその場をすっと避けてヤマトはころんだ。
「あははは!ダセー!バカなガキだな!」
男は笑いながら地面を蹴り上げ砂をヤマトにかけた。
「お嬢ちゃん、俺らと遊ぶ?」
空き缶を投げた男はあかりに近づいて言った。
あかりは男をビンタするとヤマトに駆け寄った。
「あははは!殴られてやんの!お前ロリコンかよ!?」
空き缶を投げた男たちは笑った。
「おい、ガキが舐め過ぎだ!」
男はあかりの髪を掴もうとしたが、ヤマトが立ち上がった。
「何だてめぇ!」
男はヤマトのお腹を蹴り上げた。ヤマトは腹を抑えてその場にうずくまった。
「やまと君!」
あかりはヤマトの傍に駆け寄った。ヤマトはうずくまったままあかりに言った。
「山口さん、一旦逃げて」
「絶対嫌!大丈夫!」
丁度そのタイミングで、通りがかった親子連れや若者がこちらの様子を見ていた。
「おい、もう行こうぜ」
周りが男たちとヤマト達に視線を向けていたのを感じ、男の一人が言った。
ヤマトはうずくまりながら、男たちを睨みつけていた。
「ガキはガキらしく早くお家に帰りな!」
「まぁ、シャレじゃん!そんなに怒るなよ。なぁ!ははは」
男たちはそう言うと、もう一度ヤマトとあかりにざっと砂を掛けると歩いていった。




