「初恋」再観
「ちょっとすごい量だったねぇ」
あかりは苦しげな表情で言った。
「本当だね!ちょっと舐めてたよ。苦しい」
ヤマトはそう言うと、お腹をさすった。
「どれどれ?」
あかりはヤマトのお腹を触った
「うわ!!ちょっ!待てって!」
ヤマトはびっくりして飛び跳ねた。
「あははは!やまと君驚きすぎ!」
あかりはそう言うと笑った。
「そりゃ驚くよ!じゃあ、俺も触っていいの?」
ヤマトはムッとした顔で言った。
「だめ!それはセクハラです!」
あかりはいたずらっぽい笑顔で言った。
「何でだよ!」
ヤマトは思わず笑いだした。あかりも笑っていた。
彼らの目的の映画館まであと僅かの距離だった。
「おい、なんかアイツラ楽しそうだぞ」
東一郎はヤマトとあかりを遠目に見ながら言った。
「オー!やるね〜やまと君!」
エマは楽しげに言った。
「ねぇねぇ。多分これ映画館向かってるよね」
ユリは言った。
「ああ、定番だなー。もっと工夫すればいいのに」
東一郎は唸るように言った。
「じゃあ、水島くんならどこ行くの?」
エマは東一郎に聞いた。
「ええ?うーん…うーん…」
東一郎はそう言われて返す言葉がなかった。
「ほら、結局ノープランじゃん。だったら映画もいいんじゃない?」
ユリは携帯を見ながら言った。
「流石に映画までは見ないだろ?」
東一郎はエマとユリに言った。
「いや!見るでしょ!」
「当たり前じゃん!」
エマとユリは同時に言った。
「え?何で!?そもそも何の映画見るの?開始時間はバラバラだぞ」
東一郎は慌てて言った。
「そりゃ、同じ映画見るでしょ」
エマは東一郎に言った。
「えぇ…じゃあ、もしホラー映画でも??」
東一郎は顔をしかめて 聞いた。
「そりゃーしょうがないよ。あの子らの選んだ映画なら見る!」
ユリは即座に回答した。
「いや…今話題でやってるのって、例の恋愛アニメとホラーだけじゃんすか…」
東一郎の声のトーンは低かった。
「ふーん、水島くんは怖いんだねー」
エマはニヤニヤとしながら東一郎に言った。
「俺は見ないぞ!絶対!」
「いやいや、それは流石に男らしくないって!」
「本当そう。ここは諦めようよ。違う映画見るかも知れないじゃん!」
「確率的にかなりの確率でホラー行くだろ!」
「ホラー映画っていってもそんなに怖くないらしいよ」
「そうそう、結構評価高いし…」
東一郎達はヤマトとあかりの事など忘れたかのようにホラー映画を何とか回避しようと話しながらついて行った。
「は!?マジ??」
「え?何で??」
エマとユリは唖然とした顔をした。
遠目からでも判断できたヤマトとあかりが購入したチケットは、「リフレイン」先日東一郎達全員が見た映画だった。
「ほら、チケット買えよ。リフレイン!」
東一郎は勝ち誇った顔で言った。
「もういいよ!見たじゃんつい先日!」
「何で2回もこれみんのよ!」
エマとユリはぶーぶーと文句を言った。
「おいおいおいおい、困るなぁ。さっきはアイツラが選んだ映画を強制的に見るって話だったろ…それを今更ですかぁ?」
東一郎は半笑いで二人に言った。
「いや、だってー!」
「2回目はないって!やまと君何なの??」
エマとユリは尚抵抗した。
「ホラ!早く買えって!もう一回見ようぜ!」
東一郎は2回目の鑑賞を楽しみにしているようだ。
結局東一郎は一人で、恋愛アニメ映画を見ることになり、代わりにエマとユリがポップコーンと飲み物セットを奢るということで決着した。
「お前ら!寛大な俺に感謝だなぁ!ははは」
東一郎はそう言うとポップコーンとコーラ2つを手に持ちに意気揚々と映画館に入っていった。
「どうする?」
「せっかく来たんだから、うちらもなんか見てく?」
「じゃ、ホラーでしょ!」
「それな!」
ということで、ユリとエマはホラー映画を見に行くことにしたのだった。
事の始まりは、この30分ほど前に遡る。
「映画何みたい?俺は何でも良いよ」
ヤマトは山口あかりに聞いた。
「えっとね、やまと君はどう思うかわかんないけど、リフレイン見たいな」
あかりは少し照れくさそうに言った。
「あ、ああ、た、確か恋愛映画ですごい話題の映画だよね!」
ヤマトは先日すでに見たことを言いそびれてしまった。
「この映画すっごい人気なんだよ。知ってるでしょ!?」
山口あかりはヤマトに聞いた。
「も、もちろん!俺も見たかったんだよね。でも男で恋愛アニメってちょっと気が引けて…」
ヤマトはそう言って照れた振りをして話を合わせた。
「そんなの関係ないよ。きっと楽しいよ!私すっごい楽しみにしてた。今日見れてよかったよ」
あかりは楽しそうに話した。
ヤマトは少し複雑だったが、あかりが見たいと言った映画を断る理由など無かった。
「じゃあ、それにしようよ!せっかくだからポップコーンでも買おうよ!」
「いいね!何味がいい?」
「俺は普通のでいいよ。山口さんは?」
「あ、ねえ!あれ見て!カップル用だって!!カップルで行けば安くなるんだって!」
あかりの指さした先には、大きなポップコーンと飲み物が2つのセットがカップル用という表示になっていた。
「あれにしよう!」
あかりは無邪気に注文した。
「あ、でもあれってカップルって…」
ヤマトはそう言うと少しだけ躊躇した。
「やまと君真面目だね。ふふふ」
あかりはヤマトの腕を掴むと店員の前に行き、カップル用のセットを注文した。
ヤマトは赤面しつつも、お金を全部出した。ヤマトとあかりはポップコーンを受け取るそのまま上映エリアに入っていった。
それからすぐのことだった。
「あ、あのう…す、すみませんカップルセットを…」
エマとユリは真っ赤な顔で注文した。
女性二人がカップルセットを注文したのに店員は一瞬ぎょっとした顔をしたが、笑顔で注文に応じた。
後ろで東一郎が勝ち誇った顔で笑っていた。
「あいつ…覚えてろ…」
ユリが怒りを込めていった。




