第7話
「初日でも高学年の先輩たちがほとんどの食堂は満員だな······」
学寮内に複数ある食堂のほとんどが満員になっている。
「どうする······?」
「低学年の俺らは評判の良い食堂やテーブルの多い食堂のような場所は先輩たちが先に取っているから入ることはできそうにないな······」
ライウスは食事処のある階のメインホールにあった地図を見て、席の空いていそうなところを探していると一つだけ名の無い枠を見つける。
「この空間は何もないのかな?」
「······ここに記されているということは料理店登録はされているっぽいけど···」
「端にあるし、試しに行ってみようぜ!」
ライウスたちはメインホールから最も遠い食事処へ向かった。
ライウスたちが向かった食事処には誰一人生徒の姿がない。
「いらっしゃい······」
内装は灯りが暗くてほとんど確認出来ない。ライウスたちは手探りで椅子を見つけ座り、先ほど聞こえた店長らしき人の方向へ話しかける。
「すみません〜。ここは食事処で合ってますか?」
「おう······」
「合ってそうだし、ここで食べる?」
クラウスはライウスとマリアに横に立てかけてあるメニュー表を渡す。
メニュー表が見えなかったライウスはランプを創造してテーブルの下から持っていたかのように取り出して、メニュー表を照らそうとする。
「おい!灯りを灯すな······表に挙げている紙を見てないのか?」
突然怒りだす店主に驚き、ライウスはすぐさまランプの灯りを消した。
「どうする?ここの店主怒ると怖そうだぞ」
ひよるクラウスにマリアは渇を入れた。
「どうせ帰ろうとしても怒るんだから、ここは腹を括っていきましょう!」
ライウスたちはとりあえず手に持ち続けているメニューを凝視して、注文をする。
「······をお願いします」
「おう······」
店主は先ほど見せた怒りの表情を感じさせないほどに静かに料理をする。
「お待ちどう······」その一言だけを口にして、どこかへ行ってしまう。
テーブルに広げられた料理はどれも暗くてうっすらとしか見えない。だが、どれも美味しそうな匂いがする。
「······入るよ~!」
扉の方から誰かが入る音が聞こえる。しかし、店の外が眩しく何も見えない。
入ってきたと思ったら喋り出した。
「おぉ〜!まさか新入生がこの場所に気づくとは!?」
おそらく入ってきた者は僕らの制服を見て、瞬時に新入生だと気づいたのだろう。
ライウスたちは少し目が慣れ始めたため、正体の解らなかった者の姿が徐々に見えてくる。
年は既に三十代を越えていそうな趣がある。
「ここは結界が張られていてまず新入生が見つけることなんて出来ないけど······。凄いね!君たち!」
興味津々な様子で僕たちのいるテーブルへ座り込む男性。
━━━恐る恐る聞いてみよう。
「あなたはどなたですか······?」
強烈な第一印象を与えてきた男性は、改まって誠実に答えた。
「そういや〜、言っていなかったね!···僕の名前はベルトルート・グラスウェルと申します!」
「グラスウェル理事長!?」
クラウスとマリアはとても驚いている。
━━━どういうことだ。この人がこの学園の理事長?
「なぜここに理事長が?」
「ここの常連だからだよ!とっても美味しいから冷めない内に食べな!」
動揺を隠せないクラウスとマリアとは違って、ライウスは冷める前にテーブルに出されているご飯を食べ進める。
「おい、ウェル!新入生が驚いてるじゃねぇか!さっさと別の席に座りやがれ!」
「確かにそのようだね!僕は帰るとするよ!」
「食べに来てないならさっさと出ていけ!」
「はいはい、解ったから僕を急かさないでくれ······」
二人の温度かんにまたもやクラウスとマリアは驚き、身体を膠着させてしまった。
グラスウェル理事長が店から出ていくと、店主が謝りにテーブルまでやってきた。
「すまねぇな、じょうちゃんたち。内のがうるさくしてしまって、あいつはもう来ねぇと思うから、安心して食ってきな!」
話し終えると店主は厨房の方へ行ってしまった。
クラウスとマリアが気を取り戻したのは10分後のことだった。ライウスは二人が気絶している内に料理を完食してしまい、起きるのを待ち続けていた。
「やっと起きたか!クラウス、マリア」
「逆に何でライウスはそんなに冷静を保ててるんだよ!!」
「······知らなかったから···?」
クラウスとマリアもすぐに完食して店主にお金を払い、店を出たのであった。