第4話
桜舞う心地よい風の吹いた校門。新入生の顔には初めての学園に高ぶっている様子と初々しさが残っている。
「国立ハーデスト剣魔学園の入学者はこちらの入り口からおは入り下さいー!」
学園中に響くこの声は、魔道具によって拡声されているようだ。
校門で立ち尽くしていた新入生やライウスは呼ばれた通りに競技用スタジアムの入り口へと向かった。
「保護者の方はこちらの入り口からおは入り下さいー!」
後から呼ばれた母は学園の校内に入っていった。それを見ながらライウスは競技用スタジアムへと入場するのであった。
中では担当ブロックに分かれて担当の教師が新入生を迎えている。
ライウスは両肩に背負っていたリュックを目の前の地面に置き、ボタンを外して中身を物色する。中には先ほど届いていた昇級状の手紙とライウスの学生番号の書かれた紙が入っていた。ライウスは学生番号の書かれた紙を取り出し、自分のブロックの下へ足を進める。
「Dブロックはこちらで~す!」
Dブロック担当の教師は眼鏡を掛けた青髪の教師でとても堂々としているような先生では無さそうだ。
「······ニジュウキュウ、サンジュウっと!これで全員だね。これから皆さんに実力検査を行ってもらいまーす!先生が呼んだ人からこちらで検査を行うので、呼ばれた人からこちらに来て検査を受けてください」
先生の手元には水晶玉のような器具と鳥の羽の付いた筆ペンと上質な紙が置かれている。
「次は…0427番の方~!」
━━━俺の番だ。
ライウスは持っている紙を持ちながら教師のいる下へ向かった。
「あなたがレベッカ・ライウスさんでお間違え無いですか?」
「はい!私です」
「それではこれからこの水晶玉で主に能力検査を行いますので、この水晶玉に手を翳してください」
ライウスは教師の言う通り、水晶玉に手を翳す。翳された水晶玉は白く輝き、その後徐々に紫色に変色していく。
「これは鍛冶職系の属性だね。これなら工業科の方が良さそうだ。ライウスくんは何か希望はあるかい?」
「特にはありませんけど、ゆったりと生きたいので工業科を希望します」
「丁度良かった!工業科にしますね…。それじゃ、ライウスくんはこの後このカードを持って、学園の二階の1のDへ向かって下さい!」
ライウスは渡されたカードをリュックに仕舞い、学園の二階にある1のDの教室へと向かう。
「やっぱり広いな〜!この学園……どこまでも果てしない……………」
ライウスは学園の広大さに圧倒されてしまう。先程簡単に学園の二階にある1のDと言っていたが、そこまでには200mほど距離がある。長い道をただ一人、同じような道のりを歩き続ける。
道の途中で保護者会たるものの会が行われている教室を見つける。
「今日からお子さまには寮に入ってもらいます。無理な場合はこの学園に入学することは辞退していただきますので、そこはご了承してください」
━━━ほう…。俺は今日からこの学園の寮に入るのか……。
「お子さまは基本的にはこの学園から出れないように……」
━━━出れない………。マジかよ!!おい、商業ギルドにも行けなくなるのか!?それは非常にマズイ…。これから行う指名依頼もあるのに……。どうにかならないのか。
「すいません!うちの息子は冒険者ギルドに登録しているんですが、出れなくなるとそこのところはどうすれば良いのですか?」
「その際は事前に契約書に書いて下されば、本人が外出願いを提出すれば外出出来ますので安心してください」
━━━なんだよー。外出願い、提出すれば外出できるのか。母が契約書に商業ギルドに登録していると書いてくれれば………?あれ、俺、母さんに商業ギルドに登録していること言ったっけ………。ヤバーい!これまで一度も言ってないよな、父さんも来てないし……。終わりだー。
ライウスはこれまで積み上げた成果が全て水の泡になることを受け入れることができなく、心が落ち込んでいく。
ライウスは落ち込んだまま、教室を通りすぎるのであった……。