第15話
「どうしたんだ、そんなにも騒がしくして?」
「エルノルド先輩!この平民がズカズカと道の真ん中を歩いていたので、指摘していたところですわ!」
目の前にいる女子生徒との対応とは全く違い、良い行動をしているかのように話し始めた。
「ここは学園の敷地だ。学園の生徒であればどこにいようとどこを歩いていようと問題はないと思うが···」
「それは···そうですが······うぅ~ん!私が悪かったですわ!」
貴族令嬢であろう女子学生は手下を連れ、校舎へ逃げていった。
「大丈夫ですか?新年度から散々な目に遭いましたね!気をつけて下さいね!」
エルノルドという名を持つ者は倒れこむ女子学生に手を振りながら校舎へ戻っていったのだった。
「大丈夫か?」
視界の横から3人組の生徒が声をかけてきた。
「······」
女子学生はクラウスに返事を返すどころか目線も合わせなかった。
「おーい!聞こえているか~?」
耳から直接聞こえてくるクラウスの声にようやく気づいたのか爆発によって吹き飛ばされたかのように背後に飛んでいった。
「あなたたち誰ですか!?」
「俺はクラウス!こいつはライウスだ。もう1人はマリアだ」
「何かようですか?」
「たまたま上級生に絡まれているところを見かけてな!心配だったんだが、優しい先輩に助けられて良かったな!」
「はい~!」
女子学生はあの王子様のように助けてくれた男子学生を思い返し、顔を綻ばせる。
「お~い、戻って来~い!」
「はっ!?」
「戻って来たか。とりあえず君の名前を教えてくれないか?」
「名前を言うのを忘れていましたね。私の名前はメルリー!平民出身の特待生です」
3人とも一瞬言葉を失う。
「特・待・生!?!?!?」
「特待生ってあの1年に1人出るか出ないかくらい厳しい審査を通り抜けた者しかなれない学生のことよね」
「そうですね···」
「あの王族でさえなれない人がたくさんいる特待生だよな?」
「そうですね···」
ライウス以外の3人がじっくりとライウスを見つめる。
「あっえっ!?う〜ん···(特待生ってことは)···あっ!!新入生の中で一番ってこと!!」
「そうです!!」
何だこの茶番劇は···。
メルリーはいつの間にかクラウスたちと馴染み、仲良くなっていた。
こうして、ライウスたちは自分たちの教室に戻っていったのだった。
今日もいつも通り、リクセルム教授による魔法関係の授業と技師になるための授業を受け、いつも通りクラウスと男子寮へ帰っていた。
「ライウス!今日は少し時間をくれないか?」
「何でだい?」
「ちょっと、分からない内容があったから勉強に付き合って欲しくて、お願い!!」
「良いよ!別に今日はこの後、予定があるわけでもないし···」
「ありがとな!!」
今日は珍しくクラウスに部屋の中へ招待された。
クラウスの部屋の中へ靴を脱いで入ると、そこには多種多様なお菓子と赤く澄みきった紅茶が4つ置かれていた。
「クラウス、今日はマリアも来るのか?」
「そうだぜ!ついでにメルリーも呼んでるから、お菓子と紅茶を置いてるってわけだ」
別にそこまで用意してなくても良かったんだが、このことは黙っておこう。
━━━コンコン!!
「来たようだな!上がって良いぞ~!」
マリアとメルリーの2人がクラウスの部屋へ入った。
「ライウスも来ているようね!」
「初めてです。男の子の部屋に入るのは···。確か男の子の部屋にはいかがわしいピンクの本が隠されているとか···」
「あぁ、こいつの部屋を普通の男の子の部屋だと思わない方が良いわよ。ライウスはともかくこいつ女の子よりも綺麗な部屋だもの···」
「そうですか···。少し興味があったのですが···」
「あなた、そういう趣味あったのね···」
「いや、そういう意味じゃないです!男の子が本当に隠しているのか調査するためです!!」
「それって結局は見たいということじゃないの?」
「だから違いますって!!」
「そんなに気になるなら後でライウスの部屋に突入しましょう!!」
「それは良い提案ですね~!」
「待て待て、なぜそうなる!?絶対に部屋には入れさせないからな!」
「どうしてよ。いかがわしい物があるか確かめるだけじゃない。もしかして、あるの······?」
「そんな物は無いけど人に見せれない物の1つや2つ誰にでもあるだろ!」
「おいおい、その話はまた今度な!今日は授業の復習のために呼んだんだ。初めて良いか?」
「ごめんごめん始めましょう!」
こうして、ライウスたち4人はクラウスの部屋で紅茶とお菓子をつまみながら勉強会を開くのであった。