第14話
「ライウス、遅かったな。何かあったのか?」
男子寮に戻ると、ライウスの部屋の扉の目の前でクラウスが立ち止まっていた。
「いや、あの後商業ギルドに呼ばれて、スカウトに近いことをされただけだよ···」
クラウスはライウスの話を聞いて、神妙な面持ちになった。
「どうしたんだ?」
「いや、なぜ俺には商業ギルドからの勧誘がなかったのか不思議に思って···」
神妙な面持ちで何言い出すかと思ったら、しょうもなさ過ぎるだろ!
「まぁ、今は学園生活で一杯だから結局断ったけどな!」
「そんな、勿体ないことを!!」
悲しそうなクラウスは理由を聞き終えると自室へ颯爽と消え去っていった。
ライウスは自室へ入り、商業ギルドの男から渡された詳細用紙を見る。
「こんな無茶な注文無理に決まってるだろ···」
悩みこんだライウスは少しの希望を信じ、試しに能力を使って要望に当てはまるものを創造してみた。
魔法が使えない兵士でも簡単に使える魔道具。魔法の基本は詠唱の綺麗さと正しく言うこと、つまり魔力を持った者が綺麗かつ正しく詠唱出来れば良い。ならば、綺麗に正しく詠唱出来る人の声を録音して、魔力の籠った魔紙に付与出来れば可能性はある。
ライウスは頭の中で今考えた理論を能力で生み出す。
「な···んだ···これ?」
ライウスの目の前に生み出されたものは少し不格好な形をした禍々しい物体が現れた。
「失敗したのだろうか?」
ライウスが生み出した物体をテーブルに置き、ベッドに入り込む。
「切り替えて、寝ますかー」
ライウスは瞬時にスリープを使い、寝るのであった。
━━━翌朝。
ライウスは身支度を整え、学校へ向かおうとしていると扉の奥からノック音が聞こえてきた。
「おーい!起きてるかーライウス〜!早く学校行こうぜ~」
「待って待って、今から行くから」
ライウスは急ぎ、クラウスの呼ぶ声に答える。
ライウスがクラウスと共に学校へ向かっていると女子寮の方向からマリアが歩いてきた。
「おはよう〜。クラウスとライウス!」
「おはよう~マリア!」
「おはよう~、マリアさん!」
ライウスたちはゆっくりと歩みながら学校へ向かっていると学園の裏庭で何か騒がしそうに争っている人たちを見かけた。
「あなた、平民のくせに何調子のっているのよ!!平民は平民らしくへこへこしていなさいよね!」
「エリアス嬢様!もっと言ってください!!」
「私は何もしていないわ!ただ、歩いていただけじゃない」
「だから、平民が神聖なこの学園の道の真ん中を歩くなど許されないと言っているわけ!頭おかしいんじゃないの!」
「この学園にそんな規則など無いわ!」
「規則が無くてもマナーと言うものがあることを知らないの!」
真ん中でしゃがんでいる人は複数の学生に囲まれて、困っているようだ。
少女に気付いたのか、ある男の男子生徒が突然その女子生徒に近付いたのだった。