勇者パーティーを追放された吟遊詩人ここにレイジング
歌声を熱いビートに乗せて
「吟遊詩人リィド! お前をこのパーティーから追放する!」
勇者ホランドの宣告に、リィドは驚愕し膝から崩れ落ちた。しかし、すぐさまホランドの足元にすがりつく。
「ちょっと待ってくださいよ! 勇者様! 何で俺が首になるんですかッ! 勇者様言ったじゃないですか! リィド、お前の歌が必要なんだって! あの時、そう言ってくれたじゃないですか!」
ホランドとリィドの出会いは一週間前。酒場で偶然に出会い意気投合したのだ。ちなみに、ホランドはその時かなり酔っていた。
「それが間違いだったんだ。だいたいお前、吟遊詩人のくせに楽器の演奏もできないし、歌も下手じゃねーか! 役立たずなんだよ」
「俺には心を打つビートがあります! 魂を揺り動かす熱いパッションがあります!」
食い下がるリィドをホランドは冷たく突き放す。
「ビートやパッションはいらん! 勇者パーティーに必要な吟遊詩人は、美しい演奏と歌声だ!」
「そんなあああーッ!」
こうして、吟遊詩人リィドは勇者パーティーを追放されたのだった。
2時間後―――
リィドは街の酒場にいた。まだ昼間なので、リィドの他には常連客が数人いるだけだ。
「ちくしょう! ホランドの野郎! 俺を捨て猫みたいに放り出しやがって……」
リィドは、やけ酒をあおっていた。酒に酔った勢いがリィドの怒りを加速させた。
「愚民どもーッ! 俺の歌を聴けーいッ!」
リィドは立ち上がって大声でわめき散らした。そして、熱いビートを刻み始める。
「ヘイヘイ! 偉人? 変人? 俺は詩人! 吟遊詩人! いざ出陣!」
リィドの熱い魂のラップが酒場に響く。しかし、周りの客の反応は冷たかった。
「おい! 兄ちゃん! 静かに飲みな! 下手な歌を聴かせるんじゃねえ!」
ひげもじゃで強面のドワーフが、リィドを鋭い目つきでにらみつける。
「何だとオッサン! 誰の歌が下手だって? ああん?」
リィドはドワーフをにらみ返す。一触即発の空気が辺りを漂う。今にも乱闘が始まりそうだった。
10分後―――
「ヘイッ! ヘイッ! ヘイッ! 俺は、ぬるま湯生まれの温室育ち! ダメそうなやつはだいたい友達!」
「YO! YO! YO! 勇者パーティー! 結局ダーティー! 俺たち無敵の吟遊詩人! ここにレイジング!」
リィドとドワーフは、肩を組んで共に熱いビートを刻んでいた。
歌い終わった後、ドワーフは笑顔でリィドに言った。
「面白い兄ちゃんだ! 気に入ったぜ! わしのパーティーに入らないか?」
「OK! ブラザー! 俺は吟遊詩人リィド! 情熱は熱い温度! 入るぜ、あんたのパーティー! 今夜はレッツパーティー! チェケラッ!」
こうして、リィドの新たな冒険が始まる。聴かせてくれ! 熱いビートとパッションを!
リィドの熱いビートを感じていただけたでしょうか?
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