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第六話



「父上、母上が困っているではありませんか。」


でた!監視役2号!息子のアレクシス。

――まさか覗いていたの?いつから?!


慌てて扉の方を見ると、小さな姿がスッと部屋に入ってくる。こちらを見つめるその瞳は、5歳児のそれとは思えないほど落ち着いていて、どこか鋭い。


彼は小さな体をきちんと正したまま、こちらに向き直った。その動作には5歳児らしからぬ落ち着きがあり、微かな重みさえ感じさせる。


淡い陽光が差し込む部屋の中、アレクシスの瞳が静かに私を見上げている。


「母上は…突然倒れるほど、何か抱えているのですか?」


アレクシスの一言に、部屋の温度が急に下がったような気がした。


――え、いやいや!何その言い方。


どういうこと?まさか、この子もエドガーと手を組んで、私の脱走を阻止しようとしているの?


困惑が混じった感情を何とか押し隠し、私は息を整え、背筋を伸ばした。


「ふっ…まさか。」


軽く鼻で笑うような仕草を交えつつ、目元に余裕のある微笑を浮かべた。声はやや低めに抑えて、どこまでも自信に満ちた響きを意識する。


「私はブラックソーン家のソフィアよ?」


そこまで言うと、まるで舞台上の女優のように手元をひらりと動かす。

――そう、あたかも扇子を広げたかのような仕草で。


だが、もちろん現実にはそんなものはない。ただ空中に描いた虚構の道具だ。それでも、自分の心の中でそれが存在するかのように思い込むことで、あたかも本物の悪役令嬢になりきれる気がする。


優雅さ、余裕、そして威厳――それらを身に纏ったつもりで、私は冷たく笑った。


「私が何か抱えているですって?何も抱えるものなんてないわ。私はただ、あなたたちの役に立つ邪魔者でいるだけ――それ以上でも、それ以下でもないわよ。」


言葉を放ちながら、ちらりと彼の表情をうかがう。その瞳にはわずかな揺らぎが見えた。


――よし、これでいい。悪役としての私らしい振る舞いだわ。


きっとこれで、5歳児のように純粋なアレクシスは引き下がるはず…。


と思ったのに、2人はじっと私を見つめたまま、呆然としていた。

あれ、あれれれ?私、何か変だったかな?!?!


その場の空気が妙に重い。窓から差し込む陽光でさえ、どこか冷たく感じられる。


その瞬間、アレクシスの小さな肩がわずかに震え、視線が伏せられた。


「母上…」


彼の声はか細く、震えていた。


――あれ?ちょっと待って。もしかして…これ、逆効果?


え、待って、私の息子どうしちゃったの?

なんか私地雷でも踏んじゃった?


そして、沈黙を破ったのはエドガーだった。


気まずくて目を逸らそうとした瞬間、エドガーの低い声が響いた。


「ソフィア、お前は俺たちにとって邪魔者などではない…!」


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