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第二話


私が転生したこのソフィアという人物は、父ブラックソーン伯爵のもとで生を受けた瞬間から、自由を奪われた運命に生きていた。


冷酷無比な伯爵は、権力のためなら手段を選ばない悪名高き人物だった。そんな父の策路により、ソフィアは名門リヴィエール公爵家の嫡男エドガーとの結婚を強いられる。


だがその結婚は、愛でも平和の象徴でもなかった。父は、ソフィアを使ってエドガーを陥れ、公爵家を掌握しようとしていた。


「お前の使命は一つだ。奴を殺せ」

伯爵の命令に従わなければ、家族も命も奪われる。ソフィアは歯を食いしばり、冷酷な仮面をかぶった。しかしエドガーは想像とは異なる人物だった。無骨で不器用ながらも誠実で、何よりも家族を愛する心を持っていた。


ソフィアは気づけば、彼の純粋さに心を奪われていた。だが、父の命令を無視すれば、ただでは済まない。スパイであると告げられれば、エドガーも彼女を拒絶するに違いない。ソフィアは悩み抜いた末、表向きは冷酷な悪役を演じながら、影で彼を守ることを選んだ。


ある夜、暗殺の計画が決行された。父からの指示でエドガーに毒を盛るよう命じられたが、ソフィアはそれを密かに少量の毒にすり替えた。その結果、エドガーは命を取り留めたが、彼女の行動は父の目に留まった。


「お前の裏切りは許さない」

ソフィアの行動が露見したのは、彼女がエドガーの子を宿して間もない頃だった。彼女は命乞いもせず、最後まで父と対時した。その結果、ソフィアは無残にも処刑された。


死を迎える瞬間、ソフィアが願ったのはただ一つ、夫と息子だけは幸せに生きてほしいということだった。


エドガーは彼女の死後、初めて彼女の真実を知った。冷酷で無慈悲な花嫁と思っていた女性が、自分と家族を守るためにすべてを犠牲にしていたことを。そして、彼女の存在が彼の人生に何をもたらしたのかを。


息子は母の死後も彼女を憎み続けたが、成人したある日、一冊の日記に出会う。

それはソフィアが残したもので、彼女の苦悩と愛が一字一句に刻まれていた。


「母上......」


彼女を憎むことでしか生きられなかった息子の瞳に、初めて涙が流れた。


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