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祖母 3


「おばあちゃん……? 」


 

 そういえばリナさん、さっきからおばあちゃんって。


「……ふふっ」

「何がおかしい」


 不敵に笑う奴に、もう一度切りかかろうとすると


「嫌っ! 」


 僕の腕を、リナさんが掴む。


「リナさん……? 」

「なんで、なんでおばあちゃん虐めるの? 」

「おばあちゃんって……」


 まさか。

 

「ふふふっ……」

「お前っ! こんなことして楽しいのか! 」

「私のせいじゃないもん。その子が私に代入したんだよ。その結果として、私が映るだけ」


 くそっ……。

 じゃあ一体どうしたらいいって言うんだ。


「リナさん、あれは偽物なんです」

「そんなはずないっ!!! 喋って分かったもん…! おばあちゃんだって、おばあちゃんが帰ってきたんだって」


 ……言葉じゃダメか。


「とりあえず下がって、危ないですから」

「嫌だよ、だってユーリ君また虐めるんでしょ? その剣当たったらどうするつもりなの? 」

「リナさん、あれは月の魔物って言って、リナさんのホントのおばあちゃんじゃないんです。騙してるだけなんです」

「その言い方は違うなー。まるで私が悪者みたいじゃない」

「お前は黙ってろ!!! リナさん、とにかく離れて! 」


 言葉でどれだけ言っても、リナさんは僕の腕にしがみついたまま。


「ユーリ、彼女、退かせばいいんだな」


 ルフローヴさんの手によって拘束は解かれるものの、彼女の状態は変わらず。


「やめて!!! 離してって!!! おばあちゃんが!!」

 

 ルフローヴさんが抑えていないと、いつ僕に飛び掛るか分からない程に、彼女は暴れている。

 早いとこケリをつけないと。



 だが、それにしても……!!!



「なんで、攻撃してこないっ!!! 」


 僕の目は鋭さを増して奴を睨む。

 リナさんに抱きつかれている間、僕は完全に隙だらけだったはずだ。

 奴にとっては絶好の攻撃チャンスだった。

 それなのに。


「馬鹿にするのも大概にしろよ」

「馬鹿になんて」

「なら何故!? 」



 


「私は彼女の祖母だから、かな」





「お前っ!!! 」


 挑発しているのだと思い、僕は荒々しく剣を振った。

 だが、それは違った。

 回避しながら奴は語る。



「私は、月の魔物。それである以前に関数なの。だから入力された値に対しては決まった振る舞いを出力しないといけない。例えそれが、どんな値であったとしても」

「だからなんだ!!! 」

「どんな値。それが彼女のいう、おばあちゃん、であったとしても。ここにいる全員から代入された物を同時に満たす存在として、私は振る舞う。だから、私は君を攻撃できないの」

「……!? 」

「もっと、分かりやすく言おうか。




 今の私は、彼女のおばあちゃん。


 


 だから君を攻撃する、理由がない」



 奴の首を前にして、僕の剣は止まった。

 躊躇いはあった。迷いもあった。

 だが、それ以上に。


「理由がない、だって」


 こいつはリナさんのおばあちゃんであろうとしている。





「何をやってるユーリ!!! 殺せ!!! トドメをさせるだろ!!! 」




 ルフローヴさんの怒号が飛ぶ。

 でも、僕の剣はそこから先へは進まない。


「……おい。本当なんだな。今の話は、本当なんだな」

「関数は間違いを犯さないよ。間違えてるとしたら、それは、代入した本人の問題かな」

「たとえ間違いだったとしてもだ」


 振り向いて、僕は言う。


「殺せません。

 奴は、彼女は、……リナさんの、おばあちゃんです」

 

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