祖母
「とりあえず血を辿るしかないな」
手がかりは、死体のみ。
どっちの方角に向かったか、奴が殺して歩いた道筋を辿るしかない。
「にしても、なんて有様なんだ」
惨殺、そう呼ぶにふさわしい殺され方は、進む事に様々な方法に変わっていった。
圧死、焼死、溺死、出血死、絞殺死……。
多種多様な殺め方は、まるで人間狩り自体を楽しむかのようだ。
「月の魔物は、人を食うんじゃなかったんですか」
「正直なところは分からないが、一説によると人間が蓄えてるエーテルを解放出来れば手段はなんでもいいらしい」
「それで殺しを」
許せないのは確かだが、それよりも今は奴を仕留めるのが先決。
今はただ、走るしかない。
北側メインストリートは、酷い惨状だった。
事切れた人の多いこと、皆、奴の餌食になったんだ。
もっと早く来ていればなんて思いが頭をよぎるが、もう助かりはしない、今は生かせる命を救うことに専念しなければ。
「ユーリ、生き残りだ! 」
「って……先輩! 」
壁際に座り込む片腕が無くなってる彼は、バイト先で色々お世話になった同じ転移者のあの先輩。
「よお……新入り。生きてたか、よ」
「それ以上喋らない方が! 」
「大丈夫さ、エーテルが廻ればどうにか、持ちこたえるはずだ」
「なあ、あんた。奴がどっち行ったか知らないか」
「奴ってのは、奴、で、いいんだよな」
なぜ確かめるように繰り返すのか。
事情は分からないが、何か不思議に思うことがあったのだろうか。
「もったいぶるな! あんたの右腕をやった野郎だよ! 」
「……そう、だよな。その子、なら、あっちだ」
指を指した先にあるのは、確か。
「あっちって……」
「どうしたユーリ」
「あっちには、丘があります」
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くそっ、なんだってそんなところに。
人気なんてないじゃないか。
どうして人を狙う魔物がそっちの方向に向かうんだよ!
「……! メアさんっ! 」
呼び声に反応して、彼女は振り向く。
「ユーリ! 」
淡い紫髪から覗かせる目。
とりあえず良かった、彼女は生きてた。
普段とは違うよそ行きの格好に身を包んだ彼女は、息を切らしてあの坂道を見つめていた。
「大丈夫ですか」
「まあ、うん。あのな、今大変なことに」
「事情は分かってます」
とりあえず逃げてと言いたいところだが、奴がどこにいるのかも分からないから、迂闊に指示も出せない。
同行させるにしても、僕らはこれから奴を討伐に向かうわけだ、より危険が高まるだろう。
どうしたものかと悩んでいると、彼女が口を開く。
「……いや、多分わかってない! 」
「え……? 」
「とりあえず来て! 」
手を握られ、僕は彼女に引っ張られる。
「待ってください、一体どこに」
「月寄りの丘! 前行ったでしょ! そこにいるんだよ、バケモノも、リナ姉も! 」
「……! 」
化け物と、リナさんが……!?
「ホントか! ユーリ! 」
「ええ、急ぎましょう! 」
僕らは森のような木々の中を駆け足で登る。
奴もリナさんも何だってこんなところに居るんだ。
「お……ちゃん、なん………………の」
広場を目前にして声がする。
この声はリナさん……!
「急いで! もうすぐっ! 」
「リナさんっ!!! 」
物陰からバッとと飛び出した僕ら。
そこに居たのはリナさんと……。
「化け、物……」




