結果
実技の試験は、上出来だったと思う。
試験監督の指示通りに魔導具から魔法が出せた。
それ以上でも以下でもないでもないけど、でも、出た。
魔法が出せた。
それが何点になるのかは分からないけど、でも、出た。
魔法が出せた。
語れるのはそれだけだ。
さてと、それから数日後。
いよいよ試験の結果が届く。
図書館の受付で貰った紙を裏返しのまま手に持って、僕は暁音さんの待つ席まで歩く。
合否の発表というのは、多分いくつになってもなれないんだろう。
この瞬間だけにしかないドキドキが全身を覆ってくる。
「暁音さん、見るよ……」
「うん。準備はばっちり……」
2人で生唾を飲み込んで、いよいよ結果を目の当たりにする。
「「せーのっ……!!! 」」
自然とつぶった目をゆっくりと開いていく。
「……っ」
緊張から打って変わって、自然とにやりと上がる口角。
そしてそれは、暁音さんも同じのよう。
「悠里くん! 」
「暁音さん! 」
2人して掲げた手を、互いにぶつけて音を鳴らす。
紛れもない、合格祝いのハイタッチだ。
「何とか第一関門突破だね。悠里くん、おめでとう」
「うん。とりあえず合格だよ。安心したぁ……」
「ええと点数はと、oh......めちゃくちゃギリギリだ」
「自分でもあんま自信なかったから、まさか受かってるなんて……」
「まさか受かってるなんて、って……。落ちてたら悠里くん、間に合わずに死んじゃうんだからね」
「分かってるって」
なんて、こんな冗談言い合えるのも、僕が合格したからだ。そう思うと、あぁ頑張ってよかったな、と達成感がどっと湧く。
「ともかく、おめでとう。せっかくだし、晩御飯は盛大にいく? 」
「そんないいよ。まだ通過点なんだし」
「えっふーん、倹約家だねぇ。美味しい物とか興味無いの? 」
「いやまあ、興味は大ありだけど……なんだかお祝いとかしちゃうと、一気に浮かれちゃいそうで」
「へぇ……ってまあ、あと数日したら王様からとんでもなく盛大に祝われるんだし、私のショボイ宴会なんてどうでもいいよなぁ……あーあ、残念だなぁ……」
「そんなんじゃないって。なんでそんな意地悪な言い方するかなぁ!? 」
「てへっ! 」
それから僕らは、ささやかなカレーパーティを2人で開いた。
お決まりの一丸の玉ねぎが入ったカレー。
いつもは何気なく食べているけど、今日はまるでショートケーキのてっぺんのいちごみたいに感じられた。




