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異世界転移に終止符を!!!  作者: パラソルらっかさん
三章 私が全部背負うから
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モンタギュー家

 翌日、衣装を買ったその足で、僕はとあるお屋敷の前にいる。

 街の中でも1、2を争うほど立派な建物。

 横も縦もありえないくらい大きい。

 門の大きさですら僕の身長の倍はある。

 その門の奥には薔薇っぽい花や剪定された木々の数々。

 一目見てわかる美しさは、きっとお付きの庭師がいるんだろう。


「これが、モンタギュー家……凄いな」



 

 とりあえず、近くにいたメイド服の使用人の方に声をかけて、「ルフローヴさんに用事があって」と伝える。

 すると、彼女は直ぐに取り持ってくれて、確認が取れると僕を屋敷の中へ入れてくれた。

 やっぱり、本物のメイドさんは気品が違うな……。


 

 屋敷内の壺や絵画など厳かな美術品の並ぶ廊下を通り、案内された部屋へと入る。


「やあ、ユーリ! 久しぶり! 」

「お久しぶりです、ユーリさん」


 入って早々2人から暖かな歓迎を受ける。

 

「ルフローヴさん、ユイナちゃん! こんにちは」


 席に座って待っていた2人は、わざわざ立ち上がり、僕の元まで歩いてきてくれる。


「ごめんなさい急な訪問で」

「なーに、いつだって大歓迎さ。な、ユイナ」

「はい! 」

 

 ルフローヴさんの言葉に元気よく頷くユイナちゃん。

 見たところあの足の傷はもう完全に癒えているようだ。


「さあ、座ってくれ」

「お茶菓子もありますから、どうぞお食べになってください」


 手厚いまでのおもてなしに、思わず口元が緩む。

 屋敷に入ってからあった少し緊張は、2人のおかげでほとんどなくなり、僕は心地のよいままに席につけた。


「どうだい、最近の調子は」

「まあ、ぼちぼちです」

「何かなさった事とかは」

「なさった……ああ、魔導試験の3級に受かって、あと少ししたら2級を受けるところです」

「そうか、魔験か……。あれは少し手厳しいところがあるからな」

「ルフローヴさんも受けたとこあるんですか」

「ああ。昔な」

「お義兄様は昔、王都直属護衛隊に属していたんです」

「ああ、それで試験を……! 」


 王都直属護衛隊。それを聞いて、ルフローヴさんの強さの理由に納得がいった。

 ただの貴族じゃないとは思っていたけど、まさか実力派のエリートだったとは……。


「凄いですね……」

「もう、昔の話だよ。今じゃ多分2級を超えるのですら精一杯さ」

「お義兄様、またご謙遜を」

「ホントだってユイナ。あんまり兄を過大評価するもんじゃないぞ」





 

 楽しい会話にひと段落着いたところで、本題を切り出す。


「そのっ、ルフローヴさん」

「ん? どうした」

「えっと、これを見てほしいんですけど」


 そうして取りだしたのは、国王主催のパーティーの招待状。


「はぁ、パーティーね。これ、ユーリ宛じゃないか。そうか、国王直々にか。確かに、ラストリゾートの討伐だ。街丸ごと救ったと言っても過言じゃない。良かったな、国王直々に讃えられることなんて、そうあるものじゃない」

「それはまあ、はい……。で、なんですけど、そのパーティーに同席者が1名までついていけるそうで。なので、ルフローヴさんに、一緒に着いてきて欲しくて」


 少し目を大きく開いたルフローヴさんは、少し考え込むように顎に手を当てる。

 

「…………俺か。あの子は」

「暁音さんには、もっとふさわしい人がいるって、断られてしまって」

「それが俺だと……? 」

「はい。確かに暁音さんの言う通りなんです。僕が賞賛を受けるなら、同じくらいルフローヴさんも受けなきゃおかしいから。あの時、ルフローヴさんがいなければ、僕は負けてました」

「いや、それは違うなユーリ。恐らくだけど、俺が居なくても、ユーリはあいつを倒せていた。それだけの底力はまだ君の中にはあったはず。しかし、それまで使えば君は死んでいた。俺は、勝負に加担したんじゃない。あくまで君の命を救ったまでだ」

「そうだとしても、僕だけの勝ちじゃないから。ルフローヴさんには、感謝してもしきれないんです。恩人としてでもいいんです。一緒に出てくれませんか……? 」


 僕の言葉に考え込む彼。

 しばらくに渡るそれを終わらせたのは、他でもないユイナちゃんだった。

 

「お義兄様、悩む理由もないのでは? 」

「というと」

「ただ、ユーリさんの友人としてパーティーにご出席するだけでいいのです。立場なんて気にせず、1人のご友人として」

「…………そうだな。よし、そうしよう! 」

「じゃあ! 」

「ああ、ユーリ。俺も行くよ」


 よっしゃぁ!


「ありがとうございます。ルフローヴさん」

「礼を言うのはこっちの方だ。素敵な誘いに、俺を選んでくれてありがとう」

「いえいえそんなっ……! 」

「お義兄様、すごく楽しそうですね」

「そりゃあそうだろう! なんせ、家柄の関係ない久しぶりの用事だ。思いっきり羽が伸ばせるってもんだ」


 王様のいるパーティーでもそう言えるって、貴族の暮らしも楽なもんじゃないんだな。

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