デート回! その6
ほとんどを食べ終え、もう少ししたら出ようと言ったところで、メイドのあの子がやって来た。
「これ、あいつからサービスだって」
そうして机に置かれたのは三つのアイス。
「1個はオレのだから。あとは勝手にして」
そう言ってひとつ持っていくと、彼女は横のテーブルでアイスをすくって食べ始める。
大人しく座っていれば格好も相まって、ものすごく可愛らしい、少女。
思わず見とれてしまうほどで、これに性格まで完璧だったら毎日のように来てしまってたかもな、なんて想像が浮かぶ。
というか一人称、オレなんだ……。
「悠里くん、せっかくだし頂いちゃお」
「うん」
オレンジ色をしたそれを一口すくって口へ運ぶ。
どちらかといえばシャーベットみたいな口当たりで、さっぱりしてる。
お口直しにはもってこいだけど、メニュー表には相変わらずな5万の文字。
5万の口直しってのは、一体どんな気持ちで行われるのだろう。
食べ進めていると、厨房から川村さんが戻ってきた。
「なんだよ。出てくるなら自分で持っていけばよかっただろう」
「悪い、ちょっとあと片付けがあって」
メイドの少女と少し話したあと、こっちに来る。
「あっ、川村さん。ご飯美味しかったです」
「そりゃどうも。っても、無難な家庭料理レベルだけどね」
と、暁音さんとも軽く挨拶をしたあと、少し口を重たげに質問をする。
「そのー暁音ちゃん、この子はどこまで知ってるの」
「ほとんどです。私が知ってることは全部教えました」
「そっか。それでもここにいるってことは相当わけアリなんだ」
話す方向がこちらへと向く。
「悠里くん、君は帰らないのかい」
「帰ります。ただ、方法が……」
僕はこれまでの事情を話した。
チケットを手放したこと、250億貯めてチケットを買い直すこと。
案の定驚かれるも、なぜだか彼に感心された。
「そっかぁー凄いね。そのガッツがあるんなら、そもそもこっちに来なくてもやって行けたんじゃないかなって俺は思っちゃうけど、まあ人には人の事情があるんだもんな」
「大した事情じゃないですけどね……」
「なんだっていいんだよ。俺なんか多分神様のミスでここに来たんだから」
「ミス……? 」
「そう、ミス。俺には特に悩み事も辛い事もなかったんだ。こっち来て他の日本人に聞いたらみんな何か抱えて来てるんだって。それ聞いて驚いたくらいだよ」
神様が、ミス……。そんなことって、あるんだろうか。
「それでもさ、俺はここに来てよかったって思ってるよ。この店、元々は俺のじゃなくて、別の転移者、60すぎの爺さんの物だったんだ。この店のレシピも大体はあの人から教わった。あの人はここで寿命を全うしたんだ。最後、俺があと継ぐって言ったら、柄にもなく泣いて喜んでくれて。その余熱がまだ心ん中にいて、なんだかんだここにとどまっちまってるんだよ」
「寿命、すり減らしてでも」
「ああ。っても、爺さんからお前は生きて帰れって言われてるから、もう少ししたら帰るつもりなんだけどな」
懐かしげに語る姿は、羨ましいくらいに幸せそうで、彼がこの店に、この異世界に救われているというのは嘘じゃないようだ。
「どうだい悠里くん、この店継がないかい? 」
「……えっ!? 」
何を唐突に……!?
「というのも跡継ぎが居なくてね。日本人なら事情も分かってるしちょうどいいと思ったんだけど…………そうだった、君は日本に帰るんだった」
「す、すいません……」
「いいんだ。来た日本人みんなに声掛けてるだけだから気にしないでくれ」
「跡継ぎなら、あのメイドの子はダメなんですか」
「あいつは物覚えが悪いから無理だ。それに、あいつ自身からも断られてる。……そうだな、この店畳むってことなら、そろそろあいつの働き口も探してやらないとなぁ」
「あの子と店主さんはどういう関係なんですか」
「俺も分からないな。あいつは、爺さんの頃からここにいるんだ。店員のフリして金持ちの客を引っ掛けてありったけむしり取る。ホストやキャバ嬢の真似事だな」
「フリって……」
雇ってるわけじゃないんかい。
「俺が居なくなりゃここは店じまいだろ? そうするとあいつの餌場がなくなる。あいつを置いてくれそうな所探してやらないと」
「なんでそこまでするんですか」
「まあ、爺さんの忘れ形見みたいなものだからな」
「忘れ形見……」
「ってもあいつも一端の男だ。そこまでお膳立てしないでも、やるときゃやるだろうさ」
「はぁ………………ん? 男? 」
誰が、男なんだ?
「ん、あぁ。
あんなかっこしてるけどよ。男だよ、今年で72歳の」
「男っ…………72!? 」
あの美少女が、実は男で、72歳……!
ロリババア……じゃなくてロリジジイ。
一体全体どうなってるんだ。
「ハイエーテルって知ってるかな」
「あっ、はい。なんとなくは」
「あいつはそれだ。あいつのエーテル器官は脳と身体の加齢が極端に遅くする性質を抱えてるらしい。だから歳重ねても肉体はあんなままなんだと」
「そんな種類のハイエーテルもいるんだ」
「どれだけ足掻こうと、いつまでも成長がない。もしかしたら爺さんはそんな境遇に同情したのかもな」
「でも、若さ保ってやることが色仕掛けなのか……」
どこに行っても子供扱いってのは、僕も経験したことがあるし、なんなら現在進行形での悩みではある。
あんなツンケンした態度だけれど、もしかしたら話してみれば案外分かり合えるのかな。
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