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異世界転移に終止符を!!!  作者: パラソルらっかさん
三章 私が全部背負うから
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デート回! その3

「ごめんね、もう少しだけっ……」


 そう言うとバタンと店の扉を閉める暁音さん。

 もう少し、一体どのくらいの時間をを指す言葉なのか、もう今の僕には分からなくなっていた。


 僕の両手には大量の紙袋。包装も安くないだろうに、こんなにいっぱい、中身だって数万はくだらない物ばかり。

 ここで5軒目。ハシゴに次ぐハシゴのたび少しずつ荷物は増えていき、気づけばこの有様。

 腕と脚はパンパンで、ここが道端じゃなければ今すぐにでも四肢を投げ出してしまいたいくらいだ。


 何があったか、なんというか聞かないでも想像はつくだろう。

 

 

 暁音さんは、買い物が極端に長い派の人間だったのだ。


 

 あっさり決める僕とは正反対、1軒に1時間くらい平気でかける買い物好き。

 それだけならまだまだまだまだかろうじて許せるんだけど……彼女の場合、金を持ってるからか、2つの品に対して熟考に熟考を重ねた挙句、最終的には両取りを選ぶ。

 待たされる身からすれば凶悪と言っても構わないタイプの人だった。


 果たしてぼくは何を待たされているのだろう。

 意味もわからない自問自答に辟易して、バイト中に香る暇の苦味を今日も味わう。




「ああっ、スッキリしたぁ!ごめん、待たせちゃって」

 

 トイレか。



 しばらくして出てきた暁音さんの手には2つの紙袋。


「えーっと、何をそんなに悩んでたの」

「えっとね、ワンピースなんだけど、赤にしようか青にしようかで」

「で、両方買ったと……」

「そう! さすが悠里くん! 分かってきたね、私の事」


 そりゃ分かるようにもなる。

 五軒中、五軒ともこのパターンなんだ。

 悩んだ末の両取り。それをするなら、初めっから両方買ってしまえばいいってのに!!!

 ああ、そう言えばこんな買い方するのはうちの母さんもだ。

 女の人ってみんなこうなのか!?


「お金は、あるんだよね……? 」

「贅沢してるつもりではあるけど、あの宝石、まだ半分以上残ってるよ」

「なら始めっから欲しいもの全部買っちゃえばいいのに」

「それもそうなんだけどねー。なんて言うかね、あの選んでる時間がちょっぴり楽しいんだよ。しかもなんだか今日は特に、ね」


 何その今日は特にって。

 こちとら退屈で退屈で仕方なかったってのに……!!!


「あとは、向こうのバザーでも見ようかな」

「まだ、なにか見るの……」


 僕の声も届かず、彼女はピューんとそのバザーの方向へ。

 後を追うと、日本の縁日の日のように道沿いに屋台が広がる光景が。


「見てみて悠里くん。これ似合う? 」


 店先の商品を手に取り、首の前で持つ暁音さん。


「えっと……まあ」

「そっかぁ……じゃあこっちは? 」

「それも、まあ……」

「うーむ、悩むねぇ」


 正直僕はセンスないから、聞かないで欲しいんだよな。


 暁音さんは他の出店にも足を運び、同じように僕に尋ねては悩むを繰り返す。

 店の数だけこれをやるのかと思うと、今から恐怖でしかない。


「悠里くんは、見たいものとかないの? 」

「特には……お金もそんなにないし」

「見てるだけでも楽しいんだよ。ほらこれとか」


 そう言って彼女が手に取ったのは、黒一色の短剣。

 持ち手の部分に誰かの名前が掘ってあり、見た目からも使い古されたものである事が分かる。


「おっ、嬢ちゃんお目が高いね。それはね、英雄の短剣だよ」

「英雄の短剣……? 」

「この街に伝わる言い伝え、国に1人立ち向かった英雄が使ったとされる伝説の短剣だ。今なら10万zで売るよ」

「へぇー! 伝説の短剣かぁー」

「暁音さん買うの!? 」

「………………」


 間を置いてから、暁音さんは僕に耳打ちする。

 

「まさか買うわけないじゃない! あれだけ伝説伝説って言ってるのに10万っておかしいでしょ? 伝説に付く値段じゃないじゃない。伝説詐欺よ、コイキングの類いだよ」


 伝説詐欺、ね……。


 あははと、愛想笑いしてから、僕らはその店から去る。

 

「ああいった変わったのを見るのもバザーの醍醐味なんだよ」

「冷やかしじゃん」

「相手だって詐欺まがいなことしてるしおあいこ様よ」


 そういうもんかなぁ……?

 

「さてと、お腹も空いてきたでしょ? 」

「えあ、まあ……」

「いつもカレーと西洋料理ばっかりで、そろそろ舌も飽きてきたでしょ。行きつけあるから行こ! 」


 そう言うと、暁音さんは方向を確かめてからスキップ気味な足取りで進んでいく。

 ぬぬぬ……! まだこっちの不満は溜まったままだって言うのに……!!!



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