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異世界転移に終止符を!!!  作者: パラソルらっかさん
三章 私が全部背負うから
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講義前にて

 あれから何事もなく無事に着いた僕は、受付のお姉さんにお金を払い、無事十回分の講義資格を得た。


「ご欠席の場合でも払い戻しはできませんので、ご注意くださいね」

「わ、わかりました……」


 講義一回、7650G。だいたい1日分の稼ぎと同じだけ。

 こりゃうっかり熱も出せないなと、今から怯える始末。


「中級講義は、奥から二番目なのでお間違いないようにお願いします。それでは、頑張ってくださいね! 」


 彼女から社交辞令の声援を受けた僕は、時間まで椅子に座って時間を潰す。

 少し浮き足立つ気持ちを抑え込む。

 じっとしていられない、とまではいかないが、いよいよ本格的な魔法のイロハが学べるとなると、やはり興奮せずにはいられない。

 だって魔法、現実には起こらない全ての事柄の総称。

 今まで夢見た憧れは、今日より現実に……!!!

 無表情というのはさすがに無理で、どうしても頬が緩む。

 

 合格までに地道な努力が必須なのは重々承知だ。

 元々、学校の成績は中の中。突出したのも無く、凹みらしい凹みもそんなに無い。

 受験においていちばん厄介なタイプだと、中学の頃の先生には言われるような成績だ。

 どう伸ばしていいか分からないと言われるほどの凡人。

 そんな言い方はないだろうと思ったけど、あれから一年近くたって、その言葉は本当だったなと高校入試で思い知らされた。

 

 いっそ、全て才能で決まってしまえば。

 努力無しに、生まれつきで全てが決まる。

 身体に刻まれた印が異界との接続を果たし、魔術師固有の異能力が…………的なのも、自分だけのオリジナルって言うロマンがあるし、何よりこんな自分を引き継がなくて済む。


 けど、もしこの世界がそういうタイプの異世界だったら、僕は間違いなく落ちぶれただろうな。

 魔法を使うために頑張るとしても、先が決まってるとなるとどうしても僕はサボるしやる気が出ない。

 決まりきったことが多分苦手なんだと思う。

 レベルさえ上げれば、理論上はなんでも使える。

 そんな風に思えば、何となく魔法の勉強にも希望が見えてくる。

 だから多分キツイだろうけど、こっちの方が合ってるはず。


 さっきから広げてる魔術論理の本も、今はさっぱり分からない。

 けど授業を受ければもしかしたら変わるかもしれない。

 変われば、魔法が使えるようになる……。


「講義開始10分前です、参加希望の方はこちらへ! 」


 いよいよだ。

 席を立って、借りた本をしまってから、僕は講義室へ入る。

 講義室は大きな黒板を前に、中央で別れた横長の机が数列分。机ごとに4席分、椅子が規則正しく配置されている。

 やる気の表れか、それとも目の悪さが理由か、僕は自然と1番前の席をとって開始を待った。


 続々と入ってくる参加者たち。

 年齢も性別もバラバラ。

 けど、なんとなくの法則性は有って、なんと言うか、若い子ほど気品があった。

 平民とは違う丁寧な作りの服装。彼らは横に従者らしき人を侍らせたり、紙とペンを自前で用意していたり。

 その中には、僕よりきっと幼い子もいた。

 彼らが恐らく、暁音さんの言ってたスタートラインがずっと前の子。


 辺りを眺めていたら、僕の隣におば様がきた。

 

「お隣いい? どうも最近目が良くなくてね」


 否定する理由もなく、僕は、どうぞと返す。

 一体、おいくつなんだろうか。この歳になっても勉強をしようとする姿勢には、とても見習うべき物がある。


「お兄さん、初めて? 」

「あっ、はい」

「そう! 実は私もなの……! わからないことあったら、聞いてもいいかしら? 」

「えっあっ、はい! 大丈夫、です……! 」


 そう、おば様に咄嗟に答えたけど、自分が分からない可能性がある、よな…………。

「良かったぁ」と、ルンルン気分のおば様。

 その横で少し不安になる自分。

 果たしてどのレベルの内容なのか。

 頼むなるべく簡単であってくれ。

 そしておば様、だいたい全部わかってくれぇ……!!!



 

 ゴーン、ゴーン。

 

 

 チャイム替わりだろう鐘の音が、講義室中に響く。


 すると、この教室にまた一人。

 青色のしっかりとした装いの少女が入ってくる。


「あっ」


 と思わず声が漏れたのは、その子が数日前の試験の日に見かけたあの子だったからだ。

 紺の短髪を靡かせ、近づいてくる彼女。

 この子も講義を受けるのかと関心してると、彼女の足は僕の席を通り越した。


「今回、魔道講義中級を担当することになった、ゼラ・トートニウムだ。約三月、皆の担当として教鞭を振るう。未熟者たる私に指導される事、不満を持つ者もいるだろう。今日の講義を受け、なおそう思うのならば、私の自費で返金を申し受ける。まずは、私の力量を皆の目で測って欲しい。どうか、よろしく頼む」


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