拝啓、全ての働きマンへ
ほんっとーに!!! やめておけばよかった!!!
「なんでお前今日もいるの。嫌なら辞めればって散々言ってるよね」
傍からそんなことを言われるくらいに、僕の態度から滲んでくる悔いの感情。
「分かってるんです、分かってるんですよ! 」
目から後悔を流しながら僕は答える。
後に悔いると書いて後悔。
先に行動の結果を予測出来ずに、後々になって悔いる。
要するに、アホなんだ。
「なぁメアちゃん、こいつはな、漢になろうとしてるんだよ。女との約束を守るために、自分を曲げてでもこの仕事をやり遂げようとしてる。な、かっけえだろ」
「は? 訳分からないんだけど……。要するに気が狂ったんでしょ」
「違う、新入りは今も戦ってるんだ。葛藤の中に真の己を見いだし、苦難も辛さも乗り越え――」
「いや知らんがな……。こっちは毎日帰り際に泣かれて迷惑なの。さっさと馬車の中で着替えてもらってもいい? 残ってるの、アンタらだけだから」
「ちっ、さすがいばら姫。非情な女だ」
「冷血でも冷徹でも冷酷でもいくらでも言えばいいよ。ダーティアの加護の前には全て零に帰すから」
「……」
先輩に連れられ、僕は今日も馬車の中で全裸にさせられ縛られる。
この労働生活も、もう時期一週間が経つ。
慣れなんかがくることはなく、いつもいつも辛い日々だ。
元の日本でも軽くアルバイトはしていたけれど、一日を労働に捧ぐというのはこっちに来てからのことで、なんというか辛さが段違い。
今の心の拠り所は、日に日に入る約1万のお給金と、暁音さんの待つ家の心地良さだけ。
家族のために働いていた父も、きっと今の僕と同じ気持ちだったのかな。
…………………………。いいや、そんな訳がない。
うちの父親は全裸で通勤なんてした事ないよ!
この寒さと惨めさは、今僕だけが抱えてるものだ。
一緒にして悪かったよ、父さん。
果たして僕は、この日々に慣れがくるんだろうか。
初日に言ったやりがいとか気にせず、目の前のことをこなし続けられるような日々を送れるんだろうか。
せめて、講義会代を稼ぎ切るまでの約ひと月の間、精神を保ったまま人間の形して生きて帰ってこれるんだろうか。
「冷静に考えて、これに慣れるってなんだよ……っ」
異世界生活、19日目。
最近、働く事の辛さがわかりました。
帰りたいです。帰してください。
でも帰ってもしばらくは働きたくないです。
労働アレルギーです。重症です。
お父さんはすごいと思いました、同じくらい化け物だと思いました。
今から就活が怖いです。アルバイトの面接も怖いです。
社会が怖いです。
ps.異世界は夢の国とか思ってるやつにドロップキックいれたいです。
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