異世界行っても穴を掘れ! 1
僕は今、全裸だ。
そして、目隠しをされて両腕両足を縛られていた。
暗闇、身動きの取れぬ中馬車は、ガタガタと揺れながら先へと向かう。
「うぉっ……!? 」
身体は縦に大きく揺れる。
音的に、大きめな石ころでも超えたのか。
不安定になる荷台に、僕は思わず隣りにに寄りかかる体勢に。
反射的に小声で謝って、何とか僕は元の姿勢に戻ろうと試みる。
が、元に戻るのも一苦労。
勢いをつけ過ぎれば逆隣りに当たりかねない。
慎重に、繊細に。ジリジリとどうにか体勢を立て直す。
無事元に戻るけど、今度はおしりの痛みが深刻に。
かれこれ体感時間は2時間半くらいか。
硬い木製の長椅子は、全くもって思いやりってもんがない。
座る人間のこと計算に入れてないんだろう、ただ角材を切り出して接合しただけのやっつけ仕事。
座布団の1枚もなく、僕らは目的地に着く前から疲労を蓄積させられる。
行先は、未だ不明のまま。
「……おい、お前新入りだろ」
「えっ」
突然、真横から囁くように声がかかる。
「なぁに、俺は別にお前をからかおうって気じゃねぇ。訳ありなんだろ」
「訳あり……って」
訳ありとはまあ便利な言葉で、そりゃあ何かあるからこの馬車に乗ってるわけで。
「まあこの歳でこんなとこ、珍しいとは思いますけど」
「違うな。歳だけなら俺は声掛けねぇ。目隠しする前に見たぜ。お前も、なんだろ」
「も……? 」
「驚くなよ。俺も、日本人だ……!!! 」
「……」
「あれ、驚かないのかよ」
「いやまあ、はい」
「次は驚くぜ。俺たちな、3年で死んじまうんだ!!!」
「……」
「これも驚かないのか」
「あいやぁ、はい」
タイミングさえ違えば衝撃の告白になったんだけど、いかんせん、数日前にその衝撃は味わってまして……。
「そうか。それ知っててここにいるってことは、相当な訳ありなんだなぁ」
「……まあはい」
2年弱で250億、これを訳ありと言わずなんという。
「ま、何を隠そう俺も訳ありなんだよなぁ。なんてったって、貰ったお金全部ギャンブルで…………」
「そこ、喋るなっ!!!」
「ごめんなさい……! 」
馬車の中にいる見張り役に僕らは注意される。
私語目視動作厳禁。
馬車が目的地に着くまで、僕らはこれらを守らねばならない。それが出来なきゃ僕らに次は無い。
何故そこまで徹底するのか、理由までは所詮下っ端の僕らには教えられない。
黙って指示に従う駒、それだけが今の僕らに求められている事だ。
こんなことになってるのは、遡ること一日前……。