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異世界転移に終止符を!!!  作者: パラソルらっかさん
三章 私が全部背負うから
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夜よ、続け


 毛布を頭から被り、私は窓越しに雨粒をなぞる。

 今日は雨が好きだ。

 でもたぶん、明日も降れば嫌いになる。

 そんな気がしてる。

 

「メアリィ、こんな隅で何してるの。お腹でも痛い? 」


 リナ姉は優しい。

 一緒に仕事に行ってくれるし、ご飯作ってくれるし。

 たった2つしか歳が離れてないとは思えないくらい、リナ姉は立派。

 孤児の子のお世話もするし、見知らぬ人にもよく手を差し伸べる。

 兄貴が居なくなって、身寄りの無くなった私を引き取ってくれたのもリナ姉。

 私にとって唯一の友人で、姉で、母にも思えるそんな存在。


「メアリィ? 」


 だから、つい甘えたくなる。

 

 

「メアって呼んでくれなきゃ返事しないから」


 

 ……私はダーティアの堕天使なんだ。

 アルティミアさまの裏天真層部から授けを受けたんだ。

 メアリィなんて名前は、あくまでこの身に堕天の精神が宿るまでの仮の名に過ぎない。

 コードネーム、ナイトメア。

 女神様を影より護る騎士ナイトとして、そして容赦なく敵を喰らう悪魔メアとして、2つの役割の融合名。

 それが今の私。


 それなのに、リナ姉は分かってくれない。


「私の中じゃメアリィなんだけどなぁ、メアリィ」

「……リナ姉のいじわる」


 リナ姉は、パジャマ姿で私の居るベッドに腰かける。

 リナ姉の身体からは石鹸のいい匂いがする。

 年季の入ったこの家には似合わない、今どきの女の子の香り。


「いい匂い……」


 安心する。落ち着く。

 自然とそんな感想に溢れて、言葉を漏らしていた。


「返事、しなかったんじゃなかったの? 」

「今のは返事じゃないから」

「そっかぁ。メアリィとお喋りできないなんて、寂しいな私」

「ならメアって呼んで」

「だって私はメアリィとお喋りしたいんだよ? メアちゃんともいいけど、寝る前はメアリィとがいい」


 そんなこと言われちゃったら……。

 

「……じゃあ、メアリィでいい」

「ふふっ、可愛い」

「ふにゃっ!?」


 リナ姉は、突然私の頬っぺたを両手でニュッと持ち上げる。


「にゃにすんの、りにゃねぇ……」

「白い肌がスベスベで可愛いなぁって」

「にっこうは、じゃくてんにゃから」

「その割には、昔はよくお外で一緒に遊んだじゃない」

「むふーっ……!!!」


 大体のことは受け入れてくれるリナ姉だけど、頑なにメアリィだってことは譲らないみたい。

 もうすぐ、3ヶ月が経つって言うのに。

 

 

 リナ姉は今年で20歳になった。いつまで私といてくれるのかと不安になる。世間的には、もう結婚しなきゃいけない年頃だ。


「リナ姉は、恋人とか作らないの」

「うーん、今はいいかな。色々忙しいから」

「私のせい……? 」

「ちょっとは、そうかも」


 やっぱりそうだよね。リナ姉におんぶに抱っこ。

 それが今の私だ。沢山迷惑かけてる自負はある。

 

「でも、支え合うのが家族でしょ? 」


 リナ姉は、そうは言ってくれてる。

 けどやっぱり自立しなきゃいけないんだ。

 でも、自立するってことは、……リナ姉と。


「私、リナ姉に何か出来てる? 」

「なあに急に」

「リナ姉に、いつも頑張らせちゃってるから……」


 リナ姉は、突然頭を撫でてくれた。


「支え合いだよ。もし私に何かあったら、その時はお願い」


 そんな時、あるとは思えないけど。


「きっと私の婚期がどうって心配してくれてるんだぁ、メアリィ」

「うっ……! 」


 完全に見透かされてる……。

 

「メアリィが恋人みたいなものだもん。しばらくはいい。だからメアリィ、ゆっくりでいいから、元気になってね」


 リナ姉の温かさに身を委ねて、私は今日も頭を寄せた。

 明日には止んで欲しい雨。それも本心だけれども、今はまだ降り続いて欲しい。ああ、今夜がずっと続けばいい。

 

「……うん」


読んでいただきありがとうございます!!!

よろしければ評価の方よろしくお願いします!

作者のモチベーションに大いに繋がります……なにとぞm(*_ _)m

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